■単独介入は投機筋の攻撃にあいやすい
前述のように、ドルインデックスと米ドル/円の連動性からみると、米ドル/円の切り返しも当然の成り行きとなるが、巷では麻生財務相の相場介入発言が効いた、といった解釈が多い。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
短期スパンに限って、こういった見方が間違っているとは言い切れないが、中長期スパンでは麻生さんの発言はむしろ逆効果かと思う。
この前の日銀の「有言不実行」が記憶に新しい。
結果として、財務相が相場介入に踏み切れなければ、相場の報復にあうことが容易に想定され、かえって円高の進行を招くだろう。では、実際介入した場合はどうなるだろうか。答えは明白、より強い円高を招くだけだ。
何しろ、日本のみならず、基本的には為替相場における行動は、単独では効かないのが相場の常識だ。単独介入があればあるほど、投機筋に攻撃されるリスクが高い。1992年の「ポンド危機」はもはや教科書的な存在だ。
【ポンド危機の参考記事】
●92年ポンド危機でポンド暴落。トルコ中銀の対応はそれと同じ! 危機本格化はこれから(陳満咲杜)
そのうえ、財務相が意識しているかどうかは定かではないが、伊勢志摩サミットを目前に控え、議長国の日本が単独介入できる余地は少なく、また欧米から「お墨付き」をもらうのもほぼ不可能だ。結局、言うだけ言って、行動できないか、行動しても失敗のみ、という結果にしかならないので、デメリットが多い。
■麻生財務相が焦って介入を明言した理由とは?
では、なぜ麻生さんは焦って介入を明言したのだろうか。それは、サミットが近ければ近いほど発言しにくくなるから、早めに牽制しておきたいといったところに加え、米早期追加利上げができなくなると読んでいたからではないかと推測される。
いずれにせよ、財務相が本コラムを読んでくだされば、そんなに焦らなくてすむのでは…笑。
あっ、そういえば、この前も麻生さんに読んでもらいたい文書を書いたので、開示しておこう。5月9日(月)に執筆したものだ。
本日麻生財務相がはっきりと相場介入を示唆した。では、相場介入に関して、どう考えればよいでしょうか、また円高トレンドが介入によって阻止できるでしょうか。
こういった疑問を答えるべく、5月1日配信したメルマガの文章を公開したいと思う。
但し、あくまで中期スパンにおける視点であることにご注意ください。
二回目の「黒田ショック」が先週にて発生、マーケットを震撼させた。
しかし、材料がトレンドの後についてくるという相場の真実を悟れば、こういう結果や市況に驚かなくてもすむでしょう。何しろ、円高のトレンドが続く以上、材料がどうであれば、円高の方向に作用するからだ。
1月末日銀がマイナス金利を導入した後円高方向に大幅進行した。そして今回は政策据え置きで再び大幅な円高をもたらした。要するに何をやっても円高だから、もう日銀政策云々が決定要素でないことが一目瞭然であろう。仮に今回マイナス金利が拡大されたとしても、一時の円安に留まり、また円高にの向に戻ってくることも容易に推測されよう。
では、なぜファンダメンタルズがトレンドを左右できなくなったか。詰まるところ、それはほかならぬ、「円高時代」に位置しているからだ。過去のドル安・円高トレンドを検証していくと、理屈がお分かりいただけるかと思う。
過去では、もっとも短い円高トレンドは1年3ヶ月(1998年8月~1999年11月)だった。
そして、もっとも長い円高トレンドは4年4ヶ月ほど(2007年6月~2011年10月)続いた。値幅から見ると、最短は25%(2002年1月~2005年1月)ほどの円高、最大は50%(1990年4月~1995年4月)も円高が進んだ。
となると、昨年6月高値125.85から足許まで(4月29終値106.31)、まだ15%程度の円高に過ぎず、また10ヶ月しか経過していないから、円高トレンド自体がここで終焉するよりも、これからも続く公算が大きいと言える。故に、材料はどうであれ、円高が当面続くと思われる。
因みに、昨日麻生財務相が市場介入の可能性を示唆していたが。仮にそのような行動があった場合、絶好な円買い場を提供してくれるでしょう。米国に為替操作監視国に指名された以上、共同介入があり得ないので、日本単独の介入、國際投機筋にチャンスを与えるだけなので、やめていただきたい。この意味では、この原稿、誰かが漫画風にして麻生さんに読ませていただきたい、とも祈っているところ。市況は如何に。
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