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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

雇用統計の結果が悪い方がいいワケは?
中銀不信により上昇中の究極の通貨って?

2016年08月05日(金)17:19公開 (2016年08月05日(金)17:19更新)
陳満咲杜

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■7年ぶり利下げ、英ポンドの金利がたった0.25%に!

 昨日(2016年8月4日)、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は2009年以来、7年ぶりの利下げを実施した。

英国の政策金利の推移
英国の政策金利の推移

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移

 0.25%の切り下げで英国金利も過去最低の水準を更新した。あの英ポンドに、たった0.25%しか金利がつかないと思うと、なんとなく円のマイナス金利を容認してしまう気がする…。

■英国のマイナス金利を懸念して、英ポンド下落!

 ところで、今回の英利下げは予想どおりであり、また、国債買い入れ規模の拡大はやや市場コンセンサスと違ったものの、基本的には許容範囲内で、別にサプライズではなかった

 なのに、英ポンドは大幅に下落してきた。発表直前まで英ポンドの上昇が見られたように、マーケットは利下げに反応したのではなく、カーニーBOE総裁の話やMPC(英金融政策委員会)議事録の基調に反応したと思われる。

英ポンド/米ドル 15分足
英ポンド/米ドル 15分足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 15分足

 カーニー氏は「必要とされるあらゆる行動をとる」と強調、公開されたMPC議事要旨では「過半数のメンバーは2016年年末までに0%付近まで金利を引き下げると予想」と書かれていた。それにより、これから英国がEU(欧州連合)、日本のあとを追う形でマイナス金利の世界に入ってもおかしくない、といった連想が生まれ、英ポンドの売りが膨らんだ

 実際、現段階では英国のマイナス金利予想自体はかなり飛躍したシナリオとなるが、EU離脱に伴うリスクが増大した結果、英中銀が景気後退を阻止するために全力で何でもやるといった姿勢が明確化されていたから、英ポンド売りの方が優勢になるのも自然な成り行きだった。

 MPCメンバー全員(9名)が利下げと量的緩和拡大を支持していたのは、英中銀の危機感の表れだと思われる。

■EU離脱で金融政策大転換を強いられた英国

 以前は、米利上げ周期入りに続いて利上げを開始する国としてもっとも注目されていたのは英国だった。ところがEU離脱で利上げどころか、一転して利下げ、それにゼロ金利になりかねない情勢となると、英国経済の苦境が浮かび上がってくる。

 IMF(国際通貨基金)の予測では、今後3年間、英国のGDPは累計1.4%の減速となり、極端な場合、5.6%の減速もあり得る。経済見通しの急変が、英金融政策の大転換をもたらしたわけだ。

 英中銀の決定や示唆は米国の金融政策にも影響を及ぼす。世界的規模での量的緩和の流れが広がっていく中、米国のみ利上げを加速していくのもなかなかハードルが高い

米国が今年(2016年)、1~2回利上げするといった観測は一段と不確実になり、それは今晩(8月5日)の米雇用統計などの経済指標をもって検証されるものの、基本的には不透明さが増していくだろう。

■米ドルが今いち、強くなりきれない

 とはいえ、米国が仮に今年(2016年)、まったく利上げできなくても、世界主要国においては唯一利上げ周期に入っているから、米ドルは基本的に強くなるはずだ。しかし、現状を見る限り、米ドルの強さには、今いち、モメンタムが足りない。

 マイナス金利や量的緩和の最右翼、あのユーロでさえ、中段保ち合いを維持し、昨日(8月4日)、英ポンドが大きく下げたとはいえ、英ポンド/米ドルはそれでもまだ1.31ドル台をキープ、対円では再度102円の節目を割り込み、7月安値を再打診する勢いだ。

 豪ドルに至っては、今週(8月2日)、利下げしたものの、対米ドルではむしろ上昇しており、その結果、ドルインデックスは今週(8月1日~)かろうじて95の節目を維持しただけで、どちらかというと、弱さが目立つほどだった。

ドルインデックス 1時間足
ドルインデックス 1時間足

(出所:CQG)

■通貨不信、中銀不信を背景に究極の通貨・ゴールドが上昇

 こういった市況を証左するように、金(ゴールド)の上昇が目立つ。金は昨日(8月5日)も大きく切り返し、7月高値1375ドルに近づいている。

世界的な量的緩和の流れが「究極の通貨」、金を押し上げている。その背景には本質的な世界的規模の「通貨不信」、「中銀不信」があると思う。

金価格 日足
金価格 日足

(出所:CQG)

 言ってみれば、リーマンショック以降、世界経済は思ったほど回復せず、米国の株高も「偽りの株高」、すなわち経済情勢を反映したものではなく、量的緩和の結果であったと思われる。

 EUや日本は同じく前人未踏の領域に入ったマイナス金利や大規模な量的緩和を実施したものの、株高効果が長く続かなかったのは、米国市場と比べ、構造的な欠点があるからだとされているが、基本的にはこれは量的緩和策の限界を象徴する出来事だとみる。

 したがって、唯一利上げ周期に入った米ドルが強くならず、金のみが連騰するのも一理あり、これから金は1400ドル以上の高値トライがあってもおかしくなかろう。米国も含め、しばらく世界金融政策の視界不良で金は買われやすく、また、唯一リスクヘッジをできる資産として重視されるだろう。

 こう言うとおわかりいただけるように、従来より安全資産、リスク回避資産とされていた米ドルと円は、やはり金に比べ、その地位が低下する傾向にあるかと思う。

 その上、米ドル高基調は保たれるものの、諸外貨に対する優位性は2015年前半までのような勢いは期待できないとみる。

■米雇用統計の結果は悪い方がいい。そのワケは?

 米ドル/円に限定した話では、102円の節目を再度割り込んでいるものの、99~100円といったメインサポートを割らない限り、筆者はなお円高の進行に懐疑的だ。

 テクニカル的にやはり、いったん6月23日(木)高値をブレイクしたことを重視すれば、あの2月以来の円高の勢いは再来しにくいのではないだろうか。詳細な視点は、8月1日(月)のレポートをもって検討したので、下記ご参照。 

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:CQG)

アナリシス:先週大幅反落、大陰線をもって先々週までの切り返しを中止させ、大型レンジ変動に戻ったことを示唆。もっとも、6月24日一時99円割れまでの急落、5月最終週の週足が示した「リバーサル」のサインの指示通り、ベアトレンドが加速された結果であったわけで、取りあえず下値ターゲットを達成した公算が大きかったから、先々週までのリバウンド自体が当然の成り行きだとしても限度があった。我々が強調してきたように、100大台割れまで進行したドル安・円高の流れ、基本的には1月29日(日銀マイナス金利導入を決定)高値121.69を起点とした下落波の一環とみなし、また同高値を起点とした下落波を大型ジグザグ変動と見做した場合、5月30日高値111.45を起点とした下落が最終子波に当たるから、99割れをもって同子波が十分延長されたから、下げ一服、またはリバウンドしてくるのがシナリオ通り。反面、英国民投票日の6月24日だけではなく、その前日の6月23日高値のブレイクも確認され、リバウンドにしては「スピード違反」の疑いが濃厚だったことも先週にて指摘済、この意味では、日銀政策決定通過後の大幅反落、前記「スピード違反」がもたらした反動と見られ、我々のシナリオが証左されたといえる。より大きい視点では、6月24日大陰線自体が「ピンバー」であり、同安値の割り込みが容易ではないが、同高値の早期ブレイクも容易ではないはずだった。従って、6月23日高値のブレイク自体、ひとつのサインと見做した場合、ドル安・円高の一服のみではなく、そもそもトレンド自体の終焉、といったシナリオも浮上、106.81のブレイクをもってこれからドル高・円安トレンドへ復帰するサインが灯された、といった感触も。6月23日罫線自体が「アウトサイド」だったことに鑑み、同日高値のブレイクを看過できない。100~102円台はメインサポート。
割り込めなければ、再度リバウンドしてくるでしょう。中段保ち合いの継続を有力視。

 今晩(8月5日)は米雇用統計。筆者としては、むしろ指標が芳しくないことを望む。なぜなら、これで100円の節目前後におけるメインサポートの有無が検証できるからだ。市況はいかに。

(PM2:30 執筆)

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