■7年ぶり利下げ、英ポンドの金利がたった0.25%に!
昨日(2016年8月4日)、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])は2009年以来、7年ぶりの利下げを実施した。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移)
0.25%の切り下げで英国金利も過去最低の水準を更新した。あの英ポンドに、たった0.25%しか金利がつかないと思うと、なんとなく円のマイナス金利を容認してしまう気がする…。
■英国のマイナス金利を懸念して、英ポンド下落!
ところで、今回の英利下げは予想どおりであり、また、国債買い入れ規模の拡大はやや市場コンセンサスと違ったものの、基本的には許容範囲内で、別にサプライズではなかった。
なのに、英ポンドは大幅に下落してきた。発表直前まで英ポンドの上昇が見られたように、マーケットは利下げに反応したのではなく、カーニーBOE総裁の話やMPC(英金融政策委員会)議事録の基調に反応したと思われる。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 15分足)
カーニー氏は「必要とされるあらゆる行動をとる」と強調、公開されたMPC議事要旨では「過半数のメンバーは2016年年末までに0%付近まで金利を引き下げると予想」と書かれていた。それにより、これから英国がEU(欧州連合)、日本のあとを追う形でマイナス金利の世界に入ってもおかしくない、といった連想が生まれ、英ポンドの売りが膨らんだ。
実際、現段階では英国のマイナス金利予想自体はかなり飛躍したシナリオとなるが、EU離脱に伴うリスクが増大した結果、英中銀が景気後退を阻止するために全力で何でもやるといった姿勢が明確化されていたから、英ポンド売りの方が優勢になるのも自然な成り行きだった。
MPCメンバー全員(9名)が利下げと量的緩和拡大を支持していたのは、英中銀の危機感の表れだと思われる。
■EU離脱で金融政策大転換を強いられた英国
以前は、米利上げ周期入りに続いて利上げを開始する国としてもっとも注目されていたのは英国だった。ところがEU離脱で利上げどころか、一転して利下げ、それにゼロ金利になりかねない情勢となると、英国経済の苦境が浮かび上がってくる。
IMF(国際通貨基金)の予測では、今後3年間、英国のGDPは累計1.4%の減速となり、極端な場合、5.6%の減速もあり得る。経済見通しの急変が、英金融政策の大転換をもたらしたわけだ。
英中銀の決定や示唆は米国の金融政策にも影響を及ぼす。世界的規模での量的緩和の流れが広がっていく中、米国のみ利上げを加速していくのもなかなかハードルが高い。
米国が今年(2016年)、1~2回利上げするといった観測は一段と不確実になり、それは今晩(8月5日)の米雇用統計などの経済指標をもって検証されるものの、基本的には不透明さが増していくだろう。
■米ドルが今いち、強くなりきれない
とはいえ、米国が仮に今年(2016年)、まったく利上げできなくても、世界主要国においては唯一利上げ周期に入っているから、米ドルは基本的に強くなるはずだ。しかし、現状を見る限り、米ドルの強さには、今いち、モメンタムが足りない。
マイナス金利や量的緩和の最右翼、あのユーロでさえ、中段保ち合いを維持し、昨日(8月4日)、英ポンドが大きく下げたとはいえ、英ポンド/米ドルはそれでもまだ1.31ドル台をキープ、対円では再度102円の節目を割り込み、7月安値を再打診する勢いだ。
豪ドルに至っては、今週(8月2日)、利下げしたものの、対米ドルではむしろ上昇しており、その結果、ドルインデックスは今週(8月1日~)かろうじて95の節目を維持しただけで、どちらかというと、弱さが目立つほどだった。
(出所:CQG)
こういった市況を証左するように…
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