■日銀のETF購入で日本株下げ止まるも円高は収まらず
みなさん、こんにちは。
7月の日銀金融政策決定会合での、年間6兆円のETF購入という発表で日本株は下げ止まり。
【参考記事】
●日銀追加緩和決定も主な政策はETF買入れ増額のみ。米ドル/円は発表前から乱高下

(出所:株マップ.com)
ただ、円高が収まらず、日本株上昇の足かせとなっていました。
【参考記事】
●株は堅調、ドル/円は上値が重い。弱まる日本株とドル/円の相関、原因は日銀にあり(8月12日、西原宏一)

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■米ドル安・円高が止まらなかったのは上海合意の影響か?
8月まで「米ドル安・円高」の流れが止まらなかったのは、マーケットの一部でウワサされている上海合意の影響が挙げられます(過去のコラム参照)。
【参考記事】
●安倍首相が米国に「介入しない」と宣言!? 上海合意で、米ドル/円は100円も視野に!(4月7日、西原宏一)
●上海合意で「株高・資源高・米ドル安」が進行中だが今後の狙いはユーロ/円の上昇(4月21日、西原宏一)
昨年(2015年)、米国の利上げがウワサされた局面では、以前と相違し、多くの新興国は米国の利上げを受け入れる体制ができていました。
ただ、中国だけは別。米国の利上げ予測が台頭したことにより、昨年(2015年)夏のチャイナショックを誘引します。
【参考記事】
●人民元ショックの対抗策で浜田節が炸裂!? 日本株高でドル/円は128円へ上昇濃厚!(2015年8月13日、西原宏一)
●上海株暴落、商品市況悪化でも豪ドル下落が緩慢だった理由判明! 豪ドル下落再開か(8月20日、西原宏一)
これを受けて、今年(2016年)2月に、米国と中国の間で上海合意が結ばれたのだろう、という展開でした。この合意により、米国の利上げは延期され、米ドルも軟調となりました。米ドル高と中国人民元高は修正、そして、米ドル安・円高に。
■米ドル/円は20%調整、125円から100円台まで急落
この上海合意の真偽はわかりませんが、対円での米ドルは20%ほど調整があるのではないかとマーケットではウワサされていました。
そして事実として、今年(2016年)の米ドル/円は、昨年(2015年)につけた125円という高値から20%も下落し、100円台までの急落を演じました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足)
■イエレン議長の講演は予想どおりも、伏兵登場!
米国の利上げ観測の後退により、米国株も堅調に推移。

(出所:CQG)
先週(8月22日~)、ジャクソンホールの時点では米国株も最高値を更新、原油も持ち直していました。
【参考記事】
●FRB副議長の発言により米金利急騰でドル上昇! 9月利上げは経済指標次第!(8月30日、西原宏一&大橋ひろこ)
そして、8月26日(金)にジャクソンホールにおいて、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長の講演を迎えます。
イエレン議長の講演は、マーケットのコンセンサスどおり、米国の利上げに言及するも、時期は明示せず。
このイエレン議長の講演に呼応して米ドル/円は一時、100.00円を割り込むまで下落。そこに伏兵が現れたのです。
■アベノミクスに米国の年内利上げという朗報
それはFRBのフィッシャー副議長。
フィッシャー副議長が米CNBCテレビの生インタビューで「9月、そして、年2回の利上げ」は「イエレン議長の講演と整合的」と回答したのです。
先ほどから紹介しているように、2月の上海合意以降、米国株高、そして、米ドル/円は高値125円から20%もの調整、さらに原油は持ち直していました。
でも、フィッシャー副議長がこの発言をした時点で、上海合意は破棄され、FRBは利上げに対してフリーハンドを得たとマーケットは認識したわけです。
結果、このフィッシャー副議長のコメントを受けて、年内における米国の利上げ観測が急速に高まります。
100.00円割れ寸前まで急落していた米ドル/円も即座に反発。この流れを受けて、今週(8月29日~)の米ドル/円は一時、103円台ミドルまで上昇しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
今週末、9月2日(金)の米8月雇用統計を無事乗り越えれば、米国の利上げ観測はさらに高まることになります。

米雇用統計は9月2日(金)21時30分の発表
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 米国主要経済指標の推移)
米国の年内利上げ観測の高まりから、アベノミクスの課題であった円高がようやく沈静化の兆しを見せ、「株高・円安」へ回帰する可能性が出てきました。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
■日銀会合で想定以上の緩和策が発表されるとの見方も…
このコラムでも何度かご紹介してきましたが、ポイントはアベノミクス相場の高値と安値の50%戻しである100.60円。
【参考記事】
●ドル/円は105円決壊で100.60円へ下落中! 英ポンド/円は1カ月以内に30%乱高下!?(6月16日、西原宏一)
●ドル/円のボラティリティがリーマン以来の高水準! 日銀会合後の乱高下に要注意(7月28日、西原宏一)

(出所:CQG)
過去3カ月、ザラ場では、何度もこのレベルを割り込みましたが、クローズレベルでは100.60円でサポートされた展開です。
アベノミクスの課題であった為替が安定の兆しをみせたことから、日銀の追加緩和が効力を得る環境が整ってきました。
そして、9月20日(火)~21日(水)にかけて開催される日銀金融政策決定会合に向けても、期待が高まっています。
どのような形になるかはわかりませんが、今月(9月)の日銀金融政策決定会合では、さらなる追加緩和が決定されるという観測が高まってきました。
今週(8月29日~)、某欧州系銀行から、「今月(9月)の日銀会合では、マーケットが想定している以上の緩和策が打ち出される」というレポートが出ていることも話題に。
■浜田宏一氏は「日銀が外債を買う手段もある」とコメント
また、浜田内閣官房参与は、日銀が外債を買うという手段もあるとコメント。
日銀の外債購入も選択肢=浜田内閣官房参与
安倍晋三首相の経済ブレーンで内閣官房参与を務める浜田宏一・米イエール大名誉教授は30日、日銀による金融緩和強化にもかかわらず、外為市場で円高が進行しているのは、アベノミクス失敗に賭ける投機的な動きとし、政府の市場介入が難しければ、日銀による外債購入も選択肢との見解を示した。
ロイターとのインタビューで述べた。
日銀が1月にマイナス金利政策、7月に上場投資信託(ETF)の買い入れ倍増など追加緩和に踏み切ったものの、為替市場で円高圧力が継続している背景について「投機によって為替市場がゆがめられている」との認識を示した。
本来であればマイナス金利によって、低金利通貨を借りて高金利通貨に投資するキャリートレードで「ドル買いが起こるはずだが、起きなかった」と指摘。
さらに「ヘッジファンドと推察されるが、アベノミクスに正面から戦いを挑んでいると受け止める必要がある」と警告した。そのうえで「政府はどうすれば為替市場を正常化できるか考えるべき」と強調した。
具体的には「為替の過度な変動には、市場介入すべき」としたが、米国からの理解は得がたいとし「もう少し穏やかなかたちとして、日銀が外債を買うことも選択肢」と言及。市場で大規模な国債買い入れの限界も意識される中で「外債はいくらでもある。日銀も楽になる」との見方も示した。
(出所:ロイター)
アベノミクスの課題であった為替問題に、米国の利上げという朗報。そして、今月(9月)の日銀金融決定会合に向けての期待の高まり。
懸念は、米国の利上げ観測の高まりに呼応して、売り圧力がかかる米国株が安定推移できるかどうか?
アベノミクスの課題であった為替問題に加えて、米国の利上げという朗報、反発の兆しをみせてきた米ドル/円の行方に注目です。
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