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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

株は堅調、ドル/円は上値が重い。弱まる
日本株とドル/円の相関、原因は日銀にあり

2016年08月12日(金)16:32公開 (2016年08月12日(金)16:32更新)
西原宏一

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 先週は夏季休暇をいただいておりました。
 今週からまたよろしくお願いします。

■7月日銀会合以降の日本株は底堅い。でも、米ドル/円は…

 7月28日(木)~29日(金)に開催された日銀の金融政策決定会合では、ETF買入れ増額を決定。

 ETF保有残高が現行の約3.3兆円からほぼ倍増するペースで買い入れすることとなります。つまり、年間約6兆円に相当するペース。

【参考記事】
日銀追加緩和決定も主な政策はETF買入れ増額のみ。米ドル/円は発表前から乱高下
日銀会合後から米ドル安の流れが鮮明に。利下げ見込む、豪・英中銀の発表に注目!(8月1日、西原宏一&大橋ひろこ)

 日本株は、この大規模なETFの買い入れ額増額により、底堅い展開。

日経平均 日足
日経平均 日足

(出所:CQG)

 ただ、それ以外はウワサされていたような「サプライズ緩和」はなし。

 最近の黒田日銀は、なぜか「戦力の逐次投入」が目立っています。

 そのため、米ドル/円は日本株に追随せず、相変わらず上値の重い展開が続いており、本稿執筆時点でも102.00円レベルで推移。

 これまでの日本株と米ドル/円の相関関係が弱まっている展開です。

日経平均&米ドル/円 日足
日経平均&米ドル/円 日足

(出所:CQG)

■いろいろあった2016年だが、結局、円高の流れは変わらず

 ヘリマネ論議まで飛び出し、米ドル/円の1週間物のボラティリティが24%まで急騰するなど、英国の国民投票なみに注目を集めた7月の日銀金融政策決定会合ですが、前述のようにサプライズはなし。

【参考記事】
ドル/円のボラティリティがリーマン以来の高水準! 日銀会合後の乱高下に要注意(7月28日、西原宏一)

 結果、米ドル/円の上値も引き続き限定的な展開。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 2016年に入って、英国の国民投票や、何度かの日銀金融政策決定会合といった多くのイベントはありましたが、円高の流れは変わらず。

世界の通貨VS円 週足
世界の通貨VS円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 週足

 現時点の米ドル/円は102.00円レベル。つまり、今年(2016年)の最安値圏内での推移となっています。

 今のところ、アベノミクス相場の50%(=100.60円)でサポートされていますが、105円台が極めて重くなってきています。

【参考記事】
ドル/円は105円決壊で100.60円へ下落中! 英ポンド/円は1カ月以内に30%乱高下!?(6月16日、西原宏一)
ドル/円のボラティリティがリーマン以来の高水準! 日銀会合後の乱高下に要注意(7月28日、西原宏一)

■本邦輸出企業が想定社内レートを再び引き下げ

 これに加えて、米ドル/円の上値を重くしている要因のひとつが、本邦製造業が米ドル/円の社内レートを102円台に引き下げたという報道です。

トヨタが早くも下方修正、「4割減益」の意味

トヨタ自動車は8月4日、2017年3月期の営業利益が1兆6000億円(前年比43.9%減)になりそうだと発表した。期初予想に比べても1000億円の下方修正となる。

主因は今期の想定為替レートを従来よりも円高に見直したことによる。年間ベースでは、1ドル=105円から102円へ、1ユーロ=120円から113円とし、これだけで1850億円の減額要因となる。前年実績との比較では、為替変動だけで実に1兆1200億円分の利益を押し下げることになる。

ただ、今回の下方修正を過度に悲観する必要はない。その理由の第1は、為替で1850億円の減額になるにもかかわらず、営業利益の下方修正幅は1000億円にとどまっていることだ。

出所:東洋経済オンライン

過去のコラムで、本邦企業の米ドル/円の想定社内レートが105~110円に下方修正されていることをご紹介させていただきましたが、今回、トヨタはいきなり102円に社内レートを修正。ユーロ/円は113円。

【参考記事】
鉄鉱石急落で豪ドル下落! 市場はいつリスクオフに変貌しても不思議ではない!(5月26日、西原宏一)

 これは、我が国を代表する輸出企業の財務部門が、米ドル/円の戻りは極めて限定的であると判断していると言えます。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足

 北米比率の高いスバルも米ドル/円が1円違うと、100億円の収益変動となりますが、こちらはいまのところ変更なし。

 アベノミクス以前の円高相場は、前述のように本邦輸出企業が想定社内レートを円高方向に修正することが、米ドル/円の上値を限定的にし、さらなる円高相場を引き起こすという展開だったのですが、今回もトヨタが想定社内レートを引き下げたことで、米ドル/円の上値は徐々に限定的に。

■ドル/円はアベノミクス相場の61.8%戻し、95円が次のメド

 米ドル/円のサポートは、前述のようにアベノミクス相場の50%戻しである100.60円。ここを日足ベースで割り込んでくると、次の米ドル/円のメドは95円(アベノミクス相場の61.8%戻しは94.64円)。

【参考記事】
英国人はEU離脱決定を後悔(=Bregret)。英中銀が公式サイトで英ポンド安を容認!?(6月30日、西原宏一)

米ドル/円 月足
米ドル/円 月足

(出所:CQG)

 注目された7月の日銀金融政策決定会合は米ドル/円のゲームチェンジャーとはなりえず。加えて、米ドル/円の想定社内レートを102円台に下方修正する輸出企業も登場。

 戻しが徐々に限定的となってきた米ドル/円の行方に注目です。


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