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陳満咲杜の「マーケットをズバリ裏読み」

英ポンドの底はまだまだ下だが、もはや
「早期」でない米利上げでドル高はムリ!?

2016年10月14日(金)16:23公開 (2016年10月14日(金)16:23更新)
陳満咲杜

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■FOMC議事録を受け、米ドル高が一段と進む

 9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事録が公開された後、米ドル高が一段と進み、米ドル/円も昨日(10月13日)高値104.64円まで切り返した

米ドル/円 4時間足
米ドル/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足

 要するに、「早期利上げが適切」といったFOMCの議事要旨にマーケットが反応したわけだ。

 一方、ここまで来ると「早期利上げ」自体の意味が薄くなっているというか、やや滑稽に聞こえる。何しろ、昨年(2015年)年末の時点では、2016年にはFOMCが4回利上げすると予想されていたし、その後「最低2回」と修正された経緯がある。

 が、いつの間にか「2016年年内利上げの有無」の論争となり、いくら早期と言っても結局12月にあるかないかの問題で、はたして早期と言えるかどうかと違和感を覚える方も多いかと思う。

 このせいか、「FRB(米連邦準備制度理事会)が利上げ詐欺」をしていると激しく批判する者も出たほど、イエレンFRB議長をはじめ、FRBに対する厳しい意見が散見される。

■FRBが利上げに踏み切れないこと自体が示すものは?

 こういったリスクを承知した上で、FRBが利上げに踏み切れないこと自体、「経済成長や雇用環境の改善にFRBが確信をもって判断できずにいる」というほかない。だから、いくら「早期利上げ」と主張しても、利上げ自体がなお流動的で、たとえ今年(2016年)12月の利上げ可能性が大きくなっているとしても、現時点では確実視すべきではないかと思う。

 最大の障害は、景気や雇用よりも米大統領選の結果であろう。確かにトランプ氏は現在苦戦している模様だが、クリントン女史がそれでも圧倒的な支持率を獲得していないので、結果がどうなるかは油断できない情勢だ。

 10年前とはいえ、トランプ氏の猥褻話は下品すぎて、普通ならとっくに退選に追い込まれてもおかしくないが、それでも彼が一定の支持率をキープしていること自体、クリントン氏への逆風と読むべきかと思われる。

 いずにせよ、米大統領選自体が流動的で、6月の英EU離脱投票と同様、市場のコンセンサスが「裏切られる」リスクが大きいから、現時点では慎重なスタンスを保つべきだと思う。

■米大統領選決着まで断定的な見方は避けるべき

 もっとも、政治的な要素を配慮しないことはFRBがずっと表明してきたスタンスであり、米大統領選自体よりも、金融市場の動向が障害としてあり得る。

 言うまでもないが、「問題児」のトランプ氏が米大統領に選出される場合、一時的にせよ、世界金融市場の動揺が避けられず、状況次第ではFRBが利上げできなくなるといった可能性も十分想定される。

 トランプ氏が苦戦と伝われば伝われるほど、このような「サプライズ」が発生しやすく、また影響力(破壊力とも言うべきか)も強くなるから、米大統領選の結果が出るまで、米「早期利上げ」に関する断定的な見方を取らないほうが無難だ。

■米ドル/円が直ちに円安方向に進むという確信は持てない

 米ドル/円に関しては、要するに円高方向に動くモメンタムが大分低下しているものの、直ちに円安方向に進むかと聞かれると、確信を持てない。 

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

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 目先、市場は「米早期利上げ」云々で米ドル買い・円売りを仕掛けているが、前述のように、もはや「早期」などと、とても言えない現時点では、単に材料の蒸し返しにすぎない、といった感じが強いから、継続力には疑問がある。

■ドル/円相場はすでに日米金利差を目一杯織り込んできた

 もっとも、2012年末から昨年(2015年)夏場までの大幅な米ドル高・円安自体が、日銀政策のみならず、米大幅利上げの見通しを先に織り込んできた経緯がある。 

米ドル/円 月足
米ドル/円 月足

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 2014年からの米ドル高は特に、予想された日米金利差の開きを目一杯織り込んできたと思われる。これについて、FRB幹部のブレイナ―ド氏が今年(2016年)6月講演の中で、「2014年6月から2016年1月までの米ドル上昇は、概ねFF(フェデラル・ファンド)金利にして200ベーシスポイントの利上げに相当する」と指摘したとおりであり、極めて正論だと思う。

 1回の利上げを25ベーシスポイントと想定するのが普通なので、200ベーシスポイントなら、8回の利上げ回数に相当する。が、昨年(2015年)年末米利上げが再開されて以来、まだ1回も利上げしていないので、はたして米ドル高の根拠は、どこまで「ホンモノ」であろうか。

 この意味合いにおいて、前述のように、米「早期」利上げだから米ドル買い、いったロジック自体、説得力に欠けるというか、やや滑稽にさえ聞こえるわけだ。

■サマーズ氏の「日銀政策『実質ヘリマネ』論」には疑問

 日本サイドでは、日銀政策が「わかりにくく」なってくるにつれ、いろんな見方が出てきた。元米財務長官のサマーズ氏による「実質ヘリマネ」論が出た後、それに追随する国内のエコノミストが同じ見方を示すようになったのも不思議な光景だ。

 そもそもサマーズ氏自身が、あのリーマンショックの遠因を作った張本人とされる人物だから、彼の見方を鵜呑みするのも危険だと思う。どんな立場でどんな思惑で発言したのかわからないまま追随するのも、リスキーな行為だと思う。

 一般論として、日銀が先月(2016年9月)の会合において総括を行い、政策の枠組みを資金供給量から長短金利操作へ変更したから、むしろ金利重視の視点で言うと、従来の量的緩和からより質を重視する路線になった思惑が大きいと言われている。

 したがって、「ヘリマネ」どころか、量的緩和の縮小で為替効果に限界ありと日銀が認識し、軌道修正が行われたという見方のほうが正しいと思う。

 黒田さんが日銀総裁になってから、日本の通貨供給量がどんどん膨らんで、マネタリーベースではGDP(国内総生産)と同額の400兆円規模になっている模様。これでも円安にもっていけないから、さすがの日銀でもこれ以上量的緩和を続けるのは無理がある。

 なので、サマーズ氏のご指摘はまったく合っていないと思うし、それに踊らされた円売りの投機筋も、長く続かないのではないだろうか。量的緩和の終焉は、事実上円買いの材料と化すから、次第に為替相場もファンダメンタルズに沿った形で日銀政策の展開を織り込んでいくだろう。

■英ポンドの底は、まだまだ下にある

 最後に、米ドル高全体に距離を置きたいが、唯一、対英ポンドの相場は、米ドル高がこれから続く余地が大きいと思う。

 換言すれば、すでに「底割れ」して見える英ポンドの底は、まだまだ下にあるから、安易な底打ちを想定しないほうがよさそうだ。 

英ポンド/米ドル 月足
英ポンド/米ドル 月足

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 余談だが、実質レートで言うと、英ポンドはすでに168年ぶりの安値を付けている(フィナンシャルタイムズ紙の報道)と言われ、今年(2016年)イギリス旅行に行かないと、歴史的なチャンスを逃すことになるかもしれない。市況はいかに。

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