■米ドル/円は112円台まで下落後は反発
みなさん、こんにちは。
先週のコラムでご紹介したとおり、今週(1月16日~)は20日(金)に予定されている米大統領就任式に向けての調整に終始する展開。
【参考記事】
●トランプ氏の記者会見は期待はずれだが、国境税に注目! 中期ドル買いの好機到来(1月12日、西原宏一)
英国のメイ首相による「EU単一市場からの離脱表明」の演説へ向けて、リスクオフの流れとなり、米ドル/円は一時、112.55円まで下落しました。
しかし、下記のとおり、日本時間本日(1月19日)未明に行われた、FRB(米連邦準備制度理事会)のイエレン議長の講演がきわめてタカ派だったことから、米ドル/円は一気に115円近くまで反発しました。
昨年12月の利上げについては、景気の回復が継続するとの確信を反映していたと指摘
自身を含めたFRB当局者は、主要短期金利をFRBが2019年にかけて「毎年数回」引き上げていくと予想しているとし、金利水準は長期的に持続可能な金利である3%に近づくとの見通しを示した。
出所:ロイター

(出所:Bloomberg)
■米ドルは立派な高金利通貨に?
実際に米国の政策金利が3.00%に向かうとすれば、米ドルは金利面からも極めて魅力的な通貨となります。
一時、高金利通貨と称された豪ドルも現在の政策金利はわずか1.50%。NZドルですら現在1.75%しかありません。

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移)

(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移)
このように主要国が低金利に張り付いていることと比較すると、米ドルは立派な(?)高金利通貨に変わりつつあります。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
とくに日本の金利は日銀によりピン止めされていますので、日米金利差は急速に拡大。
金利面からも米ドル/円は上昇という流れは変わらず。
■今月の米ドル/円の調整はほぼ完了
米ドル/円の調整メドは38.2%である112.00円(38.2%の意味については前回のコラム参照)。
【参考記事】
●トランプ氏の記者会見は期待はずれだが、国境税に注目! 中期ドル買いの好機到来(1月12日、西原宏一)
1月18日(水)に112.55円まで下落し、その後、反発していることから、今月(1月)の米ドル/円の調整は、ほぼ38.2%まで到達し、完了しつつあると言えます。
このあとは、今月(1月)最大のイベントである20日(金)の米大統領就任式を待つのみとなります。
■アデア・ターナー氏の来日が話題に
直近のマーケットの話題はトランプ政権の動向に集中していますが、もうひとつ、マーケット参加者の注目を集めたのがアデア・ターナー氏の来日とシムズ理論。
今年(2017年)に入り、アデア・ターナーという人物がジョージ・ソロス氏とともに来日。安倍首相と麻生財務相、そして、黒田日銀総裁と会談しました。
アデア・ターナー氏は、英国FSA(Financial Services Authority=英金融サービス機構)の元長官。彼はヘリマネ(※)論を主張していることで有名です。
(※「ヘリコプターマネー」とは、中央銀行や政府が大量の貨幣を供給する政策のこと)

今年に入り来日した、英国FSA元長官のアデア・ターナー氏。ターナー氏はヘリマネ論を主張していることでも有名というが、安倍首相、黒田総裁とは何を話したのだろうか?
(C)Mint/Hindustan Times
そのため、彼はこの会合において、「日本の内需を盛り上げるためには、ヘリコプターマネー(以下、ヘリマネ)政策が欠かせない」と主張したのではないか?との報道が話題になっています。
昨年(2016年)も安倍政権では、ヘリマネ論が話題になりましたが、マネーの量を拡大してもなかなかデフレから脱却できない安倍政権は財政拡大に政策をシフトしつつあるとの憶測も。
■浜田内閣官房参与も同調? シムズ理論とは?
エール大学名誉教授で内閣官房参与の浜田宏一氏も、最近はシムズ理論に傾いているとの報道もあります。
シムズ理論とは、2011年にノーベル経済学賞を受賞したクリストファー・シムズ教授(以下、シムズ教授)が発表したもので、デフレ脱却には財政拡大政策が有効であるとされています。
米プリンストン大のC・シムズ教授は、日本の消費税増税後のデフレ圧力を念頭に、金融緩和を生かすためには財政支出拡大が必要と論じている。日銀はマイナス金利政策を続けているが、マイナス金利は政府の金利負担を減らす代わりに、家計など民間の金利所得を減らす。収益の減少を恐れる銀行は融資を渋るので、デフレ不況になる。それを回避するためには、政府が財政赤字にこだわらず財政支出を拡大すべきで、消費税率引き上げは脱デフレを達成した後に繰り延べるべきだという理論である。
シムズ教授は伝統的なケインズ理論ではなく、市場原理を重視する「新古典派」と呼ばれる学派に属し、データ分析に基づく実証を重んじている。新古典派が多数を占める米国学界への影響力は大きく、内閣官房参与の浜田宏一米エール大学名誉教授によると多くの経済学者が同調しつつある。
出所:産経新聞

2011年にノーベル経済学賞を受賞したクリストファー・シムズ教授。浜田内閣官房参与も最近はシムズ理論に傾いているとの報道もあるそうだ (C)AP/アフロ
そして、浜田内閣官房参与は来月(2月)初め、シムズ教授を日本に招く予定との報道も。
こうした政策は日本のデフレ脱却を後押しして、円安を誘引します。
結果、中期の米ドル高、円安の流れは変わらず。

(出所:Bloomberg)
直近はトランプ氏の米大統領就任式に話題が集中していますが、浜田内閣官房参与も注目しているシムズ理論にも注目。
マネーの量を拡大してもなかなかデフレから脱却できない安倍政権は財政拡大に政策をシフトしつつあるとの憶測も出ており、中期の米ドル高トレンド継続の米ドル/円動向に注目です。
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