■ユーロに割高感、“マカロン”の賞味期限切れも近い?
したがって、目先高騰しているユーロ/米ドルの上昇がこのまま継続するということには、やはり疑問がある。ユーロ高は「行きすぎ」であり、近々修正されるだろう。
拡大しきれていないとはいえ、欧米金利差は米ドル優勢だから、ユーロ/米ドルの上昇は欧米金利差からみれば、「割高」感が否めない。
(出所:Bloomberg)
そもそもユーロ高の背景に、フランス大統領選の結果に安堵したことや最近のEU圏経済指標の良さが挙げられるが、EU圏経済指標の好調は周期的な要素が強く、今はピークに近いから「信用できない」とドイツ銀行が指摘しているように、ここから正念場を迎えるだろう。
イタリアの選挙などEUの政治リスクが完全に消えたわけでもないから、「マカロンの賞味期限」切れも近いか(マクロン氏当選がもたらしたユーロ高基調が終焉することのたとえ。オヤジギャグですまない)。
今晩の米雇用統計次第では、ユーロ/米ドルの一段の高値トライといった可能性を否定できないが、2016年11月9日(トランプ氏当選時)の高値1.3ドルの大台を継続的に上回っていくのは難しいと思う。
米ドル全体の底打ちが近い、という判断が正しければ、短期トレードはともかく、中期スパンにおける戦略としては、やはり、ユーロの高値を追えない。
■英ポンド/米ドルはすでにトレンド転換完了か
そのほかの主要通貨ペアも、米ドルの底打ちを示唆するサインを点灯しつつある。英ポンド/米ドルの場合、与党支持率に関する憶測もあって先週末に(5月26日)急落、トレンドを転換させた可能性が大きい。
(出所:Bloomberg)
5月18日(木)、英ポンド/米ドルは高値更新してから陰線引けし、高値反乱を暗示していた。そのあと、5月25日(木)まで「インサイド」(はらみ)のサインを点灯、先週末の5月26日(金)の下放れをもって5月18日(木)のチャートの意味合い(頭打ち)を証左した。
今週(5月29日~)は安値圏での保ち合いにとどまり、また、4月21日(金)から引かれた元サポートラインに戻りの頭を押さえてられており、反落の構造が明らかだ。今晩(6月2日)の米雇用統計次第で一段と反落し、構造上の指示サインがより明確化されるのではないだろうか。
ちなみに、英ポンド/米ドルでは、最近プライスアクションのサインが多く、また示唆されることが多い。これは教科書的な値動きになり得るから、今度また詳細を書きたい。
■豪ドルの弱気は変わらず、ユーロ/円はスピード調整先行か
たびたび指摘してきたように、「出遅れた」豪ドルは引き続き弱気変動にある。豪ドル/米ドルにしても、豪ドル/円にしても、今週(5月29日~)に入ってベア(下落)トレンドへ復帰している兆しがみられ、4~5月の安値割れは必至とみる。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
米ドル/円は切り返しが想定されるものの、豪ドル/円の底打ちは後ずれになる公算が大きい。
この意味では、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)におけるユーロ/円>英ポンド/円>豪ドル/円といったパフォーマンスの順位はしばらく維持され、また、場合によっては一段と格差が拡大することもあり得る。
言い換えれば、米ドル全体はどうであれ、しばらくユーロ/英ポンド、ユーロ/豪ドルのブルトレンドが維持される公算が高いということだ。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
だから、基本的にユーロ/円に対する強気予測が維持される。が、ここから一気に高値更新できるかどうかはやや疑問だ。ターゲットの130円の節目打診を有力視するが、スピード調整が先行するのではないだろうか。
(出所:Bloomberg)
前回と同様、最後に強調しておきたいのは、ユーロ/円の強気予想を維持できる前提条件は、米ドル/円の上昇であり、ユーロ/米ドルのさらなる上昇ではないということだ。
この意味では、2017年内における米ドル/円の押し目買い好機は今である、ということになるかもしれない。市況はいかに。
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