■これから米ドル全体が反騰しやすい時期に
トランプ氏のロシアゲート疑惑が続いていることも、米ドルの頭を押さえている要素として解釈されるが、米国株の堅調ぶりから考えると、少なくとも米ドルの頭の重さとリスクオフ云々との関連性は薄いのではないだろうか。
もっとも、昨日(6月8日)、前FBI長官のコミー氏の議会証言を受け、トランプ氏弾劾シナリオの確率は、上昇ではなく下落してきているので、目先は無風通過の様子だ。
ECB(欧州中央銀行)理事会では、利下げの停止が明言されたものの、金融政策の正常化については討論せず、ドラギ総裁の記者会見も終始曖昧な発言に終始した。タカ派発言を期待していた一部市場関係者らは肩を落した模様。
残るは英国総選挙の結果だ。
執筆中の現時点では、まだ最終結果が出ていないものの、与党・保守党が全議席の過半数を確保できない可能性が高まり、英ポンドは急落、次期首相もブックメーカーのオッズで一時、ボリス・ジョンソン氏のほうがメイ首相を上回ったと伝わってきている。
【参考記事】
●圧勝するつもりの選挙で過半数割れ!? 英総選挙で保守党敗北、英ポンドは急落!
最悪の場合、メイ首相の辞任もあり得るから、これから情勢が逆転しない限り、英ポンドの続落は避けられないだろう。主要通貨の対米ドルでの上昇は、すでに頭打ちになった公算が高いから、これから米ドル全体は反騰しやすい時期に入るとみる。
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■ドル/円は4月末にできたギャップを埋めたので反騰しやすい
米ドル/円に関しては、英ポンド/円の下落で多少影響を受けていると思われるものの、総じて安値からの切り返しが続き、英選挙の行方によってリスクオフの傾向にあるとは思えない。
前回のコラムでも指摘したように、5月18日(木)安値を割り込めば、4月末に形成された「ギャップ」を埋める値動きになるが、同「ギャップ」自体がトレンド(米ドル安)を修正させた重要なサインとして位置づけられ、今週(6月5日~)はすでに同下値の打診を達成しているから、これから反騰しやすいとみる。
【参考記事】
●今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の雇用統計が悪くてもさほど売られないかも(2017年6月2日、陳満咲杜)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
この場合、先週末(5月米雇用統計発表日)の高値111.70円は重要な「転換点」として重視されるだろう。同高値のブレイクがあれば、米ドル/円のブル(上昇)基調復帰が確認できる。
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■3月高値115.50円のブレイクが中期スパンのターゲット
引き続き、米ドル/円の上昇を有力視、3月高値115.50円のブレイクが中期スパンのターゲットとなる。
ちなみに、3月利上げ直前の高値は115.50円だったので、時間がかかると思うが、仮に同高値のブレイクを確認できた場合、2017年年初来高値の再トライに道筋がつけられるだろう。
米ドル/円相場は「トランプ・ラリー」を激しく推進してきただけに、同ラリーに対する修正、すなわち、4月安値までの下落も激しく、また「行きすぎ」だったから、これからの上昇は「再修正」に当たり、また激しくなる可能性がある。
トランプ氏の弾劾シナリオで、すっかり米ドル安の継続を必然視する風潮が根強くなった今だからこそ、米ドルの高値更新を見込み、「余裕」を持ちたい。
また、前回のコラムで指摘したように、これはユーロ/円が早晩、130円の節目を打診することにもつながる。仮に同ターゲットを達成した場合、それは基本的にはユーロ高ではなく、米ドル高・円安を背景にした値動きになるから、しっかり対応しておきたい。
【参考記事】
●今こそ米ドル/円押し目買いの好機!? 今晩の雇用統計が悪くてもさほど売られないかも(2017年6月2日、陳満咲杜)
市況はいかに。
(13:00執筆)
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