■危ない!かもしれなかった8月1日の分裂危機は回避
この夏、結構、大きなメディアでも、8月1日(火)にビットコインが分裂するかも!? みたいなことで大騒ぎされていたワケですが、混乱が生じる可能性があると言われていたビットコイン改善案、BIP148(UASF)は回避され、穏便に事が運びそうな別の案、BIP91がロックインされたので、とりあえず8月1日(火)に大きな混乱はなさそう、というのは、前回7月21日(金)の記事でお伝えしたとおり。
今回は、その後の状況について紹介したいと思いますが、前回の記事でもお伝えしたとおり、当記事においても、一部正確でない情報が含まれる可能性がありますので、その点はご了承いただければと思います。
【参考記事】
●BIP91っていったい何? 7月23日(日)が注目なワケは? どうなるビットコイン!?
ということで、さっそく本題に入っていきます。
その後、7月23日(日)に、BIP91は無事にアクティベート(有効化)され、以降、segwit(BIP141)支持を表明するシグナル、「version bits1のシグナルを発信していないブロックを無効にする」というルールが適用されることになりました。BIP91のアクティベートにより、懸念されていたBIP148(UASF)による混乱の回避は確定的になり、この件は、ひとまず落着。
ビットコイン相場も、いろいろあって直近はえらく好調ですが(このあたりのことについては、当記事最後に少し触れます)、8月1日(火)大暴落! みたいなことにはなりませんでしたね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 日足)
■チンプンカンプンな人のために、簡単に振り返っておこう
なんのことかチンプンカンプンという人もいるかもしれませんので、ここで、前回の記事からの復習を若干、はさみたいと思います。
まず、「segwit」とは、ビットコインのスケーラビリティ問題解決手段として有望視されている案で、「ブロックに記述する『署名』(Witness)を、『隔離』(Segragated)することで1ブロックの容量を実質的に拡大させる方法」のことを言います。
「スケーラビリティ問題」とは、ビットコインの取引量(トランザクション)の急増によって既存のブロックサイズだと取引データの処理が追いつかず、送金が遅延するなどの不具合が生じるという問題のことで、一連のドタバタ劇の発端となったものです。
以前からスケーラビリティ問題の解決方法としてsegwitに賛成する人は多かったみたいですが、そのアクティベートの手段については、当初、先日アクティベートされたBIP91ではなく、BIP148が有力視されていました。
このBIP148とは、8月1日(火)になったら問答無用で「version bits1のシグナルを発信していないブロックを無効にする」というルールを有効化するものだったため、もともと8月1日(火)に注目が集まっていたワケです。もしかしたら、混乱が生じてビットコインのブロックチェーンが不安定な状況になり、よろしくない問題が起きるかもしれないと…。
ただ、途中からはBIP91が優勢となり、冒頭でお伝えしたとおり、7月23日(日)には無事にBIP91がアクティベートされました。BIP148で懸念されたような大きな混乱も起きず、順調に推移し、あとはsegwitのロックインとアクティベートを待つばかり、という状況になったというワケです。
【参考記事】
●BIP91っていったい何? 7月23日(日)が注目なワケは? どうなるビットコイン!?
■segwitロックイン! アクティベートは8月22日前後?
そのsegwitは、ある一定のブロックから2016ブロックを集計期間としており、その期間中に95%以上のブロックがsegwitに対応している(version bits1のシグナルを発信している)ことが確認されるとロックインされ、さらに2016ブロックを経過するとアクティベートされるという流れで導入されるそうです。
このままいくと、スケジュール的には8月8日(火)前後にロックイン、8月22日(火)前後にアクティベートする可能性が高いと言われていましたが、8月9日(水)日本時間未明にsegwitは、無事にロックインしたようです。あとは、アクティベートを待つのみ。
(出所: https://xbt.eu/)
segwitロックイン後もビットコイン相場は、とっても堅調な動きが続いています。対円では為替相場の円高の影響を受けてなのか? 若干、動きが鈍い感じがした場面もありましたが、それでも、一時40万円超に達しました。対米ドルなどの動きを見ても、その好調さがよくわかります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 4時間足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/米ドル 4時間足)
なお、記載したロックインやアクティベートの日付は、1ブロックのマイニング(採掘作業)が、だいたい10分くらいということで算出された予想日です。なので、今後控えているアクティベートについても、前後する可能性があるということを前提に、日付を見るようにしてくださいね。
■新登場の「ビットコインキャッシュ」(BCH)って何モノ?
ところで、前回の記事の最後の方では、ここまでお伝えしてきた話とはまったく別ラインの話として、「中国のマイニング(採掘)をしている業者などの勢力が、8月1日(火)にビットコインをハードフォークして、新たにビットコインキャッシュというコインを作る、なんて話も急浮上しているみたい」ということをお伝えしていました。
【参考記事】
●BIP91っていったい何? 7月23日(日)が注目なワケは? どうなるビットコイン!?
中国の大手マイニングプール(ビットコインを採掘する人たちの集団)、ViaBTCが主導する動きとして注目されていましたが、【参考記事】でお伝えしたとおり、この件については、「きれいさっぱり、現在のビットコインチェーンとビットコインキャッシュのチェーンに別れるので、特に危ないことはないハードフォークとの見方が優勢」という感じだったのです。
急な話ではありましたが、いくつかの関連サイトを漁ってみた限り、「あまり懸念はない」という評価が多かったように思います。
(出所: https://www.bitcoincash.org)
迎えた8月1日(火)には、日本時間22時過ぎにビットコインのチェーンからハードフォークされ、新たな仮想通貨、Bitcoin cash(ビットコインキャッシュ)が誕生しました。BIP148で懸念されていたような混乱も起きず、前評判どおり、粛々とハードフォークされた印象です。
本家ビットコイン相場の反応は冒頭でお伝えしたとおり、あまり激しいものではありませんでしたし、記者自身、生まれてはじめてハードフォークというものに注目してみたのですが、ふ~ん、こういうものなのか、という感じで。もしかしたら本家ビットコイン相場が大いに荒れたりするのかしら? とも思っていましたが、今回に関しては、そういうこともなかったみたいです。
元は同じとはいえ、ビットコインとビットコインキャッシュの違いはいろいろとあるようですが、目立つ違いがブロックサイズの上限。ビットコインは1MBが上限となっていますが、ビットコインキャッシュは8MBが上限となっています。ビットコインキャッシュは、スケーラビリティ問題などを抱えるビットコインの諸問題を解決する仮想通貨として生み出されたものみたいです。
誕生後、一時的にググンと上昇したビットコインキャッシュですが、8月9日(水)現在は、日本円にして3万円台で推移している感じ。
かつてイーサリアムがハードフォークされ、現在もイーサリアムとイーサリアムクラシックという別々の仮想通貨として存続していますが、ビットコインとビットコインキャッシュもそんな感じで、2つとも存続していくのでしょうか…。
(出所:Kraken)
■通貨コードは「BCC」ではなく「BCH」?
ちなみに、ビットコインキャッシュの通貨コード(通貨記号みたいなもの)は、「BCC」か「BCH」となっているみたいですが、BCCという通貨コードがすでに他の仮想通貨で利用されているとかいう話で、途中から「BCH」が大勢を占める感じになっています。
日本の仮想通貨取引所も、bitFlyer(ビットフライヤー)、coincheck(コインチェック)、Kraken(クラケン)、Zaif(ザイフ)などの大手どころを見る限り、現在は「BCH」で表記しているようでしたので、ザイFX!でもビットコインキャッシュについて紹介する時の通貨コードは、とりあえず「BCH」と表記していこうと思います。
■ビットコインキャッシュを自動的にもらえたらしい
概要を確認したところで、今回のハードフォークによるビットコインキャッシュの誕生によって、具体的にどんなことが起きたのかをざっと確認してみましょう。
まず、記者的に、なんだか不思議な現象だなぁ…と思ったのが、従来からビットコインを保有していた人は、ハードフォークによって新たに誕生したビットコインキャッシュを、保有していたビットコインと同量だけもらえるという点。
実は7月21日(金)に、日本仮想通貨事業者協会(※)が発表した「8月1日に予期されるビットコイン分岐危機に向けた対応について(その2)」の中では、ビットコインキャッシュをもらえるかどうかについて、以下のように記載されていました。
【7月21日(金)の日本仮想通貨事業者協会のお知らせより抜粋】
各会員がお客様から預かっているビットコインに関し、このハードフォークによって新たに発生するビットコインキャッシュが誰に帰属するかは、各会員の規約等によって定められます
(※「日本仮想通貨事業者協会」とは、もともと銀行や証券会社、FX会社などの金融機関が日本国内で仮想通貨ビジネスを行うにあたり、必要な情報の調査・研究、情報交換などをすることを目的として、2016年4月に設立された一般社団法人。自主規制団体を目指している。国内の主要な仮想通貨取引所は加盟しているが、大手のbitFlyerは未加盟)
上記のとおり、ハードフォークによって誕生したビットコインキャッシュをもらえるかどうかは、各仮想通貨取引所の対応次第という状況にあったワケです。ただ、国内の主要な仮想通貨取引所の対応を見ると、基本的に、従来からビットコインを持っていたユーザーは、それと同量のビットコインキャッシュをもらうことができるという感じになったみたいです。
何か特別なことをする必要もなく、自動的に新たに誕生した仮想通貨が付与されるワケですから、もし、以降、価値が上がっていけばラッキーですよね?
実際、ビットコインキャッシュは、8月9日(水)現在、お伝えしたとおり日本円にして3万円台で推移しており、ビットコインも暴落することなく、最高値を更新するなど好調に推移しています。詳しいところは把握できていないのですが、見た感じ、今回のハードフォークでビットコインキャッシュがもらえた人は、何もせずに資産が増えたってことでラッキーだったのではないか? という印象です。
■「ふしぎなポケット」ならぬ「ふしぎなブロックチェーン」
ビットコインってなんだかオイシイ、いや不思議だなぁ…と改めて感じたところで、記者の脳内に懐かしい歌が思い浮かびましたので、ちょっと脱線して紹介します。
それは、こんな歌。
ポケットをたたくとビスケットはふたつ♪
もうひとつたたくとビスケットはみっつ♪
(童謡 : 「ふしぎなポケット」)
子どもの頃に「割れただけじゃね?」と、疑ってかかった記憶がありますが、今回のビットコインのハードフォークって、まさにそんなイメージかも。
技術的な解説ができず申し訳ないのですが、あくまでイメージとして「ふしぎなポケット」の歌に、今回のハードフォークでのできごとを当てはめると、こんな感じではないでしょうか?
・ 「ポケット」 → ブロックチェーン
・ 「たたく」 → ハードフォークする
・ 「ビスケット」 → ビットコイン
そうすると「ふしぎなポケット」ならぬ「ふしぎなブロックチェーン」の歌は、こうなるはずです。
ブロックチェーンをハードフォークするとビットコインはふたつ♪
もういっかいハードフォークするとビットコインはみっつ♪
完全にイメージ先行で書いてみましたが、このあたりのことは、いずれ機会があれば専門家の人に詳しく取材してみたいと思います。まじめに詳しい情報をお届けできるようになるまで、今しばらくお待ちください。
■ビットコインキャッシュの取引を扱うかどうかは、また別らしい
ということで、脱線はこのくらいにして話を元に戻します。
先ほど「基本的に、従来からビットコインを持っていたユーザーは、それと同量のビットコインキャッシュをもらうことができるという感じになったみたい」とお伝えしましたが、同量のビットコインをもらうことはできても、実は、仮想通貨取引所がビットコインキャッシュの取引や預入れ・送付などを扱うかどうかは、また別問題みたい。各仮想通貨取引所の判断によって対応が異なってくるようなので、注意が必要です。
日本仮想通貨事業者協会でも、7月21日(金)に公開された「8月1日に予期されるビットコイン分岐危機に向けた対応について(その2)」の中で以下のとおり、告知がありました。
【7月21日(金)の日本仮想通貨事業者協会のお知らせより抜粋】
当該会員が、ビットコインキャッシュによる売買取引を取り扱わない場合には、ビットコインキャッシュがお客様に帰属するものとされている場合であっても、お客様は、当該会員から、ビットコインキャッシュを引き出して、ビットコインキャッシュを取り扱う他の仮想通貨交換業者に移して取引を行うことが必要となります
仮想通貨取引所の対応例としていくつか紹介すると、たとえば国内大手仮想通貨取引所のビットフライヤーでは、8月2日(水)にビットコインキャッシュの付与を完了し、取引も開始したようです。
ただし同社のフェイスブックによると、「お預入・ご送付サービスの提供は開始しておりません。Bitcoin Cash チェーンの動向をみて、Bitcoin Cash のお預入・ご送付サービスの提供を開始予定です」とのこと。
同じく大手仮想通貨取引所のザイフでも、8月7日(月)にビットコインキャッシュの付与を完了したようですが、取引や預入れ・引出しについては「今週を予定しており、追ってブログ・SNS等でご連絡させていただきます」とのことでした。
こちらは、まだ取引などはできないみたい…と思っていたら、8月9日(水)から対円と対ビットコインで、ビットコインキャッシュの取引ができるようになったみたい。ウェブサイトにお知らせが掲載されていました。でも、預入れ・引出しについての案内は特に見当たらず…でした。
GMO系のGMOコイン(8月9日に「Z.comコイン byGMO」からサービス名変更)は、もともと8月2日(水)にビットコインキャッシュの付与を予定していたそうですが、顧客資産の保全を優先し、慎重に対応したいということでいったん延期に。
8月4日(金)に再度ウェブサイトにお知らせが掲載され、同日15時よりビットコインキャッシュの付与が行われたようです。ただし、「ビットコインキャッシュの引出機能につきましてはお客様の資産保全の観点から提供を見合わせております」とのこと。
このように、各取引所の判断によって対応時期や内容がバラついている印象ですが、今のところ、ビットコインキャッシュの付与は、ほぼ規定路線とされており、さらに、状況を見て、取引や預入れ・引出しの対応を検討していこうというのが、国内の取引所では多数派のように見えます。
とはいえ、この件については、現在も各取引所が関連情報をそれぞれのタイミングで都度、発信している状況ですので、最新情報は各仮想通貨取引所のウェブサイトやSNSツールから得るしかありません。ビットコインキャッシュの付与を受ける人(ハードフォーク前からビットコインを取引していた人)や取引などに興味がある人は、各取引所からの情報を見逃さないよう、チェックしてください。
■2MBハードフォーク問題を11月に控えて
さて、いろいろと複雑な経緯をたどりつつも、とりあえず注目の8月1日(火)を無事に乗り超えた(?) ビットコイン。次の注目は、8月22日(火)頃と予想されているsegwitのアクティベートと、11月に迎えるらしい2MBハードフォークの問題となりそうです。
実は、segwitの導入は、マイニングを行う人たちの中で、これを行う代わりに、しばらくしてから2MBにブロックサイズを引き上げるという約束事(NY協定というものがあるらしい)の下に実現したそうで、どうやらそれが、segwitアクティベートの3カ月後という話らしい…。
でも、まだどんなふうにそれを実行するのかなどは議論が尽くされていないらしく、segwitのアクティベートが近づいてくる、あるいは実際にsegwitがアクティベートされると、またあーだこーだといろいろな情報が出てきそうな感じがします。
ハードフォーク後も最高値を更新! するなど、破竹の勢いで上昇を続けるビットコインですが、お伝えしたとおり、segwitのアクティベートは8月22日(火)前後と言われていますから、もしかすると8月下旬あたりからは特に、急激な動きに要注意なのかも?
日本国内では、8月3日(木)に仮想通貨取引所・ザイフを運営するテックビューロが、仮想通貨を使った資金調達用ICOソリューション(※)をリリースしたり、8月7日(月)にビットフライヤーが新宿マルイ アネックスでのビットコイン決済サービスの提供を始めたり…。さらに、米国からはシカゴ・オプション取引所(CBOE)が2017年末から2018年の初めにビットコインの先物を上場する予定みたいなニュースが飛び込んできたり…。
(※ICOとは、Initial Coin Offeringの略で、仮想通貨の発行による資金調達手法のこと。IPO(新規公開株)の仮想通貨版のようなものとも言われることがある。今回、テックビューロが発表したICOソリューションの名称は「COMSA」(コムサ))
いろいろと上昇要因と思われるプラス材料はあるにはありますが、それにしても上げ過ぎじゃない???? ビットコイン!!!! 週足とかで見ると、最近の動きだけではなく、2017年に入ってからの暴れん坊ぶりがよくわかります。
この快進撃はいつまで続くのか? ザイFX!編集部も、引き続き注目していきたいと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 週足)
最後に、ビットコイン絡みということで、8月8日(火)に公開したこちらの記事も、ぜひチェックを。イケハヤさんとザイFX!編集長・井口の間で、いったい何があったのよ…?
【参考記事】
●熱狂のビットコイン相場。イケダハヤト氏は再び「靴磨きの少年」となるのか?
(ザイFX!編集部・向井友代)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)