■今年もあとわずか。値動き期待できないまま終了か
先週(12月18日~)は、ドイツが2018年に30年国債を増発すると発表したことで、欧州各国の国債利回りが上昇し、米長期金利もそれに連れて上昇したため、米ドル/円は113.63円まで上昇しました。
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【参考記事】
●為替が緩やかに動き出した! 休暇明けの投資家が円売りに向かうと考える理由は?(12月21日、今井雅人)
ユーロ/米ドルも1.1901ドルまで上昇しましたが、その後に、スペイン・カタルーニャ自治州の議会選挙で、独立賛成派の3党が合計で過半数を獲得したことから上げ渋りました。
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本日、12月26日(火)はボクシング・デーとなり、昨日(25日)のクリスマスに引き続き、連休となっている国が多いため、値動きが期待できない日になります。
残すところ、今年(2017年)は、本日(12月26日)を含めてあと4営業日となりますが、米税制改革法案も成立し、経済指標も重要なものが少なく、このまま今年は終わりそうです。
■米ドル安・円安で小動きになった2017年
今年(2017年)の米ドル/円は、非常に値幅が小さな1年でした。
2017年の米ドル/円の始値は117.55円、高値は118.60円、安値は107.32円(※)。年間の値幅は11.28円ですが、変動率では9.6%となります。
(※編集部注:EBS(電子仲介システム)のデータを参考、以下同)
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過去20年間の変動率は平均で16%程度となるため、2017年の9.6%という変動率は、かなり小動きだったといえます。
※2017年のデータは12月26日(火)時点
※小数点第2位を四捨五入して算出
※EBS(電子仲介システム)のデータを基にザイFX!が作成
【参考記事】
●ザイFX!で2017年を振り返ろう!(1) 為替相場よ、トランプ・ラリーは何処へ?
振り返ってみると、今年(2017年)の米ドル/円は、108円付近から115円付近の往復を繰り返したのが、メインの動きとなりました。
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米ドルも円もどちららも弱い通貨だったため、その綱引きで動きが出なかった年といえます。
【参考記事】
●2018年年初に注目すべき通貨ペアは…!? 米国株安と米金利上昇の綱引きもカギに?(12月25日、西原宏一&大橋ひろこ)
■来年の米ドル/円の動きを考えるうえでの注目材料は?
ここで、来年(2018年)の米ドル/円の動きを考えてみると、材料としては、1月にトランプ政権が発表する予定の米インフラ投資計画、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ(予想は3回、一部では4回との予想も)、税制改革に盛り込まれた本国投資法(HIA)に伴う、米国への米ドルの還流(※)などがあります。
(※編集部注:「本国投資法(HIA)」は、ブッシュ政権下で2005年に実施された時限立法。この法律下で、米国内での投資や雇用の創出を目的に、米多国籍企業による米国送金時の税負担優遇などが行われた。トランプ大統領が同等の効果を狙っていることから、本国投資法第2弾(HIA2)とも呼ばれる)
インフラ投資計画に関しては、まだ何が出てくるかわからないですが、HIAに関しては、米国企業の子会社が海外に2.5兆ドルほどの資金を溜めており、これが米国に戻ってくるとされています。
トランプ政権の税制改革に盛り込まれたHIAによって、米企業が海外で保有する資金がどれだけ米国に還流してくるかが、2018年の注目材料の1つとなりそう (C) Chip Somodevilla/Getty images
ただ、大手金融機関の予想によれば、米ドル建てで保有している分が8~9割あるとも言われており、もしそのとおりであれば、為替市場への影響は小さくなり、米ドル/円の上値の幅も、大きくは望めないと思います。
【参考記事】
●米税制改革法案が成立したら米ドル下落!? ドル/円はいつ売ってどこで買い戻すべき?(12月19日、バカラ村)
ただ、そうであったとしても、米国に米ドルが戻ってくれば、インフレを招く可能性があることから、米ドル高になる可能性はあります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 週足)
■利上げ期待で米ドル高にはなりにくい…
3回と予想されている米利上げに関しては、過去の動きを見ると、米国が利下げから利上げに転じた局面では米ドルが上昇するものの、利上げを継続していく局面では、米ドルの上昇があまり見込めない動きをしています。
※FRBとBloombergのデータを基にザイFX!が作成
来年(2018年)は、利上げを継続していく局面のため、利上げ期待での米ドル買いは、材料としては弱いといえそうです。
米ドル/円の売り材料としては、日銀は緩和策を継続していますが出口論も出てきており、さらに、各国の主要中銀が、利上げやテーパリングに向かい始めていることです。
日本は再来年(2019年)に消費増税を控えているので、日銀は緩和策を解除しにくい環境ですが、市場の期待が先行すれば、円高の動きになるのではないかと考えています。
また、地政学リスクは残ったままで、北朝鮮や中東情勢もリスクとしてあり、ロシア疑惑もまだくすぶったままです。
さらに、来年(2018年)は米国の中間選挙があるため、トランプ大統領が貿易不均衡問題を強調してくる可能性もあります。
貿易不均衡の相手国としては、中国や日本やユーロ圏が挙げられますが、中国は景気調整局面に入っており、ユーロ圏は英国の離脱問題や加盟国の一部で政局不安もあるため、トランプ大統領の矛先が向きやすいのは日本になります。
「シンゾー・ドナルド」と表現されるほど仲が良い、と言われていますが、貿易不均衡問題を安倍首相がどこまでかわせるのか、そこが注目点となりそうです。
■2018年は平均的な動きが期待できそう!?
米ドル/円の過去20年間の変動率をみると、最も低かったのが2015年になります。2番目に変動率が低かったのは2006年になります。そして、3番目が今年(2017年)です。
値幅の狭さで見ると、2011年、2012年も狭いのですが、75~85円で推移していたため、変動率に直すと、今年(2017年)よりも大きくなります。
※2017年のデータは12月26日(火)時点
※小数点第2位を四捨五入して算出
※EBS(電子仲介システム)のデータを基にザイFX!が作成
年間の動きを予想する場合、値幅よりも、変動率で見る方がいいのではないかと考えています。
1980年代には、1年間で米ドル/円が50円ほど動いている年もあり、それに対して、75円台のときは10円程度しか動いておらず、その後、100円台に戻ってきたときは値幅も大きくなり始めたので、変動率で考える方が、うまくいくのではないかと思います。
そして、小動きだった過去1番目(2015年)と2番目(2006年)のそれぞれ翌年、2016年と2007年は、平均的な変動率に戻っています。
とすれば、変動率が少なかった今年(2017年)の翌年、2018年も平均的な動きが期待できるので、米ドル/円は16%程度は動くと考えられるのではないでしょうか。
【参考記事】
●2018年はクロス円が大波乱!? 米ドル/円も含め上昇リミットは春頃、その後一転暴落?(12月22日、陳満咲杜)
■ユーロ/米ドルに買い妙味あり!
来年(2018年)の始値はまだわかりませんが、仮に現在のレート付近である113円が米ドル/円の始値とすれば、17円の値幅が出る可能性も期待できます。
米ドルには買い材料もありますが、売り材料の方が強く、さらに、最近では米国で大統領が選ばれたときの米ドルの動きは、共和党になれば米ドル安に、民主党になれば米ドル高となっており、トランプ大統領(共和党)が勝利してからも、過去のように米ドル安となっていることから、今回もそのアノマリーが継続しています。
とすれば、長期的にはまだ、米ドル安になる可能性があります。
この点からは、ユーロ/米ドルの上昇が期待できるので、そちらを買う方が妙味があるとも言えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 月足)
■米ドル/円は101円~118円のレンジを想定
米ドル/円では、115円付近が今年(2017年)のレジスタンスとなっており、118円台が今年の高値、120円は節目となっており、上値は重いように思います。
来年(2018年)の米ドル/円の高値が、もし118円であれば、変動率から考えると、安値は101円付近になるのではないかと考えています。
あくまでも、平均的な変動率からの予想になるので、平均より大きく動く可能性も十分あります。
もし、これよりも狭くなると、来年(2018年)も小動きの年、ということになってしまうので、上記の値幅(17円)は動くと予想されます。
したがって、来年(2018年)の米ドル/円の予想レンジは、101円~118円ではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
今年、6月から本コラム「バカラ村のFX専業トレーダーの相場観」が始まりました。本年はお世話になりました。
来年も、皆様が良いお年をお迎えになることを心からお祈りしています。
次回のコラムは、1月9日(火)となります。
来年もよろしくお願いいたします。
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