■米上院補欠選で共和党が敗北!
12月12日(火)、米アラバマ州上院補欠選挙があり、日本時間13日(水)に結果が出ました。アラバマ州は共和党の支持基盤の地域だったものの、民主党が勝利しました。
これによって、米税制改革法案の成立が難しくなるとの思惑から、米ドル/円は下がりました。
(出所:Bloomberg)
ただ、これによって共和党内で危機感が出たようで、党内の連帯感が強まり、米税制改革法案の採決に向けて、造反議員は出にくいのではないかと考えられたことで、アラバマ州の補欠選挙で共和党が負けても、米ドル/円の下げは113.12円までと、大きくは下がりませんでした。
【参考記事】
●FOMCは予想どおりでセル・ザ・ファクト! 米上院補欠選挙で共和党敗北。影響は?(12月14日、西原宏一)
■FRBの見通しは上方修正されたけれど…
12月13日(水)(日本時間14日(木)未明)には、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果公表もあり、市場予想どおり、政策金利が0.25%引き上げられました。
※FRBのデータを基にザイFX!が作成
ただ、市場には税制改革期待や来年(2018年)のインフラ投資によって、2018年の利上げの想定回数が3回から4回へ引き上げられるのではないかという思惑もあり、これが前回9月と変わらず3回で据え置かれたことによる失望や、さらに材料出尽くしもあって、米ドル/円は112.45円まで下がりました。
【参考記事】
●FOMCは利上げでも、ドル/円は上がらず。今週もセル・ザ・ファクト狙いで戻り売り継続(12月18日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:FRB)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
ただ、FRB(米連邦準備制度理事会)による2018年の経済成長率見通しは、前回9月時点では2.1%でしたが、今回は2.5%へ上方修正され、2019年も、9月時点の2.0%から2.1%へ引き上げられました。
失業率見通しに関しても、2018年、2019年ともに9月時点は4.1%でしたが、今回は両方とも3.9%へ引き下げられ、米国の景況感の良さが予想されています。
■Brexit交渉は第2段階へ。英ポンドの下落は限定的!?
FOMCの翌日、12月14日(木)には、英MPC(金融政策委員会)とECB(欧州中央銀行)理事会もありましたが、こちらは市場予想どおり、どちらも金融政策は据え置きとなりました。
英国に関しては、Brexit(英国のEU離脱)交渉の第2段階入りとなり、今後、さらに交渉が難しくなっていきます。ただ、悪材料もかなり織り込まれていることから、英ポンドの下げも限定的になると思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
■米税制改革可決は既定路線だけど、米ドル高にならない!?
12月14日(木)に、米共和党議員2名が、税制改革法案の修正を求めたことで、米ドル/円は翌日15日(金)に112.03円まで下がりました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
ただ、このあと、この2名の議員は、税制改革法案を支持に回ったことから、米税制改革法案の成立は既定路線となっています。
12月19日(火)に、下院で採決が予定されており、今週(12月18日~)中に上院でも採決が予定されていることから、税制改革法案は今週には可決しそうです。
ただ、既定路線となっているものの、為替相場の方は米ドル買いの勢いが弱く、税制改革法案が成立したとしても、年内に米ドルを買い上げていく動きは、あまり期待できない展開となっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
■日銀会合は無風で通過か
12月21日(木)には、日銀金融政策決定会合の結果公表があり、黒田日銀総裁が先日、リバーサルレートに関する発言をしたことで注目が集まります。
黒田総裁の記者会見では、その質問が出てくると思いますが、黒田総裁はそれを否定すると思うので、日銀会合は無風で通過するものと思います。
■米税制改革法案が成立すれば、米ドルは利食いで売られそう
今週(12月18日~)は、米税制改革法案の行方が注目のイベントであり、今年(2017年)最後のイベントにもなります。
これが成立するまでは、市場に期待が出てくるので、米ドルは底堅い展開が続くと思いますが、米税制改革法案が成立する週半ば以降に関しては、米ドルの利食い売りが出てくるのではないかと考えています。
【参考記事】
●クリスマスにかけてもう少し調整が続いても来年以降、ドル高に向かうと考える理由は?(12月14日、今井雅人)
円に関しても、IMM(国際通貨先物市場)における投機筋の米ドルに対するポジションが円売り越し方向に偏っていることから、ポジション調整で円高になる可能性の方が高いと思います。
【参考記事】
●米ドルが堅調でも米ドル/円は買いたくない!? 調整しているユーロ/米ドルを戻り売り!(12月12日、バカラ村)
●IMMの円売り越し13.6万枚! この数字が10万枚を越えると米ドル/円は調整しやすい(11月21日、バカラ村)
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
したがって、米ドル/円は、週半ば以降に売りではないかと考えています。週半ば以降に、113円台があれば売りで考えています。
ただ、米税制改革で米国株は上昇し、来年(2018年)には本国投資法(※)によるドル買いが出てくることから、米ドル/円を売り進める動きも限定的だと考えています。
(※編集部注:「本国投資法(HIA)」は、ブッシュ政権下で2005年に実施された時限立法。この法律下で、米国内での投資や雇用の創出を目的に、米多国籍企業による米国送金時の税負担優遇などが行われた。トランプ大統領が同等の効果を狙っていることから、本国投資法第2弾(HIA2)とも呼ばれる)
112円台前半では、米ドル/円を買い戻したいと考えていますが、111円台半ばにはサポートもあるので、さらに下がったとしても、ここでは下げ止まりそうに思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
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