■株の下落と比較すると米ドル/円は底堅いが…
日米の株が急落する中で、米ドル/円も108円台まで下落しましたが、株の下落と比較すると底堅い展開で、本稿執筆時点で109.30円で推移しています。
米ドル/円をサポートしているのが、引き続き、本邦勢。
既報のオープン外債(為替をヘッジせず、オープンで投資する外債)や、フラット為替からのドル買いが断続的に出て、米ドル/円の108円台をサポートしています。
【参考記事】
●ドル/円は110.00円の攻防が流れを決める! ドル安の流れと機関投資家の買い需要交錯(1月18日、西原宏一)
ただ、米政権から米ドル安誘導を連想させるようなコメントが出ていることもあり、米ドル/円の上値は限定的。
(出所:Bloomberg)
この点において、個人的に注目したのがECB(欧州中央銀行)のノボトニー氏のコメント。
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーのノボトニー・オーストリア中銀総裁は、世界の経済大国が目標としないことで明確に合意している通貨安を米国が志向している様子に仰天したと述べた。
ノボトニー氏は7日、オーストリア紙ウィーナー・ツァイトゥング(WZ)とのインタビューで「非常に驚いたことが2つある。1つは米財務省が意図的にドルを押し下げ、低水準に抑えたいと考えていることだ。もう1つはトランプ大統領の周囲には多くの思慮深い人々がいるのに、大統領やその政策に前向きな影響を及ぼす人間が誰もいないということだ」と語った。
ドルを巡る米国側の発言に関し、ノボトニー氏はこれまでで最も率直に非難した格好になる。これについてECBの広報担当者はコメントを控えた。
出所:Bloomberg
ムニューシン米財務長官が「(短期での)米ドル安歓迎コメント」をしたあと、トランプ大統領が火消しをして、本人も訂正するという流れ。
前回のコラムでは、個人的には失言というわけではなく、意図的なものがあったのではないか? と勘ぐっています、とご紹介させていただいていますが、これは、ノボトニー氏のコメントにも表れているように、大方の意見も同じということになります。
【参考記事】
●ムニューシン財務長官のドル安歓迎発言はやっぱり本音? ドル/円は105円目指す過程(2月1日、西原宏一)
これだけはっきりと「(短期的には)米ドル安歓迎」とコメントしていることに、失言というのも考えがたいところ(その後、当然否定はしますが…)。
■米国側から見て、米ドル/円レートに調整余地あり?
中国や韓国に対しては、通貨ではなく、セーフガードを発動。
ユーロ圏に対してもプレッシャーがかかるわけですが、通貨であるユーロは米ドルに対して、昨年(2017年)を通して米ドル安が進み、調整されていると、EU(欧州連合)側は反論することもできます。
【参考記事】
●2018年初頭に注目したいのはユーロ/円! 米中間選挙に向けて米ドル/円は105円へ(2017年12月21日、西原宏一)
そして、次は、米ドル/円。
対日本の米貿易赤字はかなり縮小しており、中国やユーロ圏と比べると規模はかなり縮小していますので、強烈なプレッシャーはかからないと想定しています。
ただ、トランプ大統領が選挙に勝利した時点の米ドル/円レートは、102円台。
この点だけを取り上げると、現在の米ドル/円相場は、米国側から見ると、米ドル高水準にあり、調整の余地があるといえるのかもしれません。
日米株価が不安定な環境下、豪ドル/円を筆頭にクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は下落。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
株価が不安定である環境が続けば、リスクアセットである豪ドル/円は、じり安傾向にあります。
そして、ノボトニー氏のコメントにもあるように、米当局の通商政策、言い換えれば、通貨安誘導。
この環境下、じわじわと上値が限定的になり、下値余地が拡大している米ドル/円の行方に注目です。
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