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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

ドル安の流れと機関投資家の買い需要交錯。
ドル/円は110.00円の攻防が流れを決める!

2018年01月18日(木)17:16公開 (2018年01月18日(木)17:16更新)
西原宏一

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■徐々にテクニカル分析も効き始めたビットコイン

 みなさん、こんにちは。

 先週(1月8日~)から今週(1月15日~)にかけて、多くのメディアが連日、仮想通貨を取り上げていました。

 もっとも多かったのが、1月17日(水)の仮想通貨全体の暴落を取り上げたものになるのですが…。

 たしかに、ビットコイン/円は、年初の200万円レベルと比較すると暴落と言えますが、昨年(2017年)1月に10万円だったビットコインが105万円になったからといって暴落という表現を使うのは、いまひとつ釈然としません

ビットコイン/円 週足
ビットコイン/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ビットコイン/円 週足

 個人的に興味を持ったのが、仮想通貨の流動性。

 たとえば、ビットコイン/円・日足のシーケンシャルでは、セットアップカウントダウンをていねいにカウントして反落という、デマーク(※)の教科書どおりの動きとなっています。

(※編集部注:「デマーク」とはTDシーケンシャルなどのテクニカル指標を開発したトーマス・R・デマーク氏のこと)

 アルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)は別として、ビットコインは徐々にテクニカル分析も効き始めています

 これは、参加者が増えて流動性を増しているということになります。仮想通貨の需要は、これからも高まるのではないでしょうか?

■米ドルは上値の重い展開、米ドル/円は110円割れに迫る

 為替市場に話題を戻すと、米ドルは、引き続き、上値の重い展開。

 米ドル円は111.00円を割り込み、一時110.00円という大台を割り込む寸前まで急落しました。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:Bloomberg)

 米ドル安は対円のみならず、対ユーロや対英ポンドでも米ドル安が進行。

 以下は、ユーロ/米ドルの日足チャートです。

 ユーロ/米ドルは、昨年(2017年)9月8日に1.2092ドルの高値に到達。

 その後、調整局面入りし、4カ月が経過しました。

 充分な調整を経た後、先週、1月11日(木)のECB(欧州中央銀行)議事要旨がタカ派トーンだったことをきっかけに、節目の1.2092ドルをブレイクし、対ユーロでも再び米ドル安が進行

【参考記事】
ECB議事録と独連立暫定合意でユーロ上昇! ドル売り継続も、IMMのユーロロングに注意(1月15日、西原宏一&大橋ひろこ)

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(出所:Bloomberg)

 加えて、英ポンドや豪ドルでも米ドル安が進みつつあります。

英ポンド/米ドル 日足
英ポンド/米ドル 日足

(出所:Bloomberg)

豪ドル/米ドル 日足
豪ドル/米ドル 日足

(出所:Bloomberg)

 総体的な米ドル下落の背景には、オプション市場の動きも反映されています。

 1月15日(月)のオプション市場では、ユーロ/米ドルや米ドル/円のみならず、英ポンド/米ドルや豪ドル/米ドルでも米ドルのプット高(※)が急速に進行。

(編集部注:「プット」は売る権利のことで、「コール」が買う権利のこと)

前回のコラムで紹介させていただきましたが、米国債利回り上昇が米ドル/円の上昇を誘引せず、相関性が断ち切れて米ドル/円はじり安の展開。

【参考記事】
米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随できず…。111円割れなら107円台も視野!(1月11日、西原宏一)

 他通貨でもその傾向が鮮明になりつつあり、オプションマーケットでも、米ドルのプット購入が目立ちはじめ、それが米ドルの下落をさらに誘引しました。

■オープン外債などに絡む米ドル需要が目立つ

 前述の米国債利回りに続き、米ドル/円と相関が切れているのが、日本株。

 年初からの日本株の底堅さは継続しており、本稿執筆時点の日経平均は一時、2万4000円台を回復しています。

日経平均 日足
日経平均 日足

(出所:Bloomberg)

 従来の日本株と米ドル/円の相関性から考えれば、米ドル/円は120円台を回復していてもおかしくないのですが、現時点の米ドル/円は111円台。

 こうして材料をピックアップしていくと、米ドル/円のサポート材料はなくなっているように思えますが、110円台では断続的に米ドル買いを持ち込んでいる市場参加者がおり、彼らの米ドル買いが米ドル/円を支えています

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:Bloomberg)

 それは、本邦機関投資家のオープン外債(為替をヘッジせず、オープンで投資する外債)

過去のコラムでも取り上げましたが、米ドル/円の110円台での円高局面では、生保からのオープン外債に絡む米ドル需要が目立ちます。

【参考記事】
米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随できず…。111円割れなら107円台も視野!(1月11日、西原宏一)

 住友生命は、「外債投資はドル安局面でのオープン外債を検討、USDJPYの110円にかけて押し目での投資を検討」という報道もあり、米ドル/円の110円台には、本邦大手生保は、かなりまとまった買いオーダーを置いている模様

 加えて、110円台にはフラット為替(※)による米ドル買いも散見され、彼らからの米ドル買いにより、本日(1月18日)の米ドル/円は、111円台に戻しています。

(※編集部注:「フラット為替」とは、スポットの為替レートが安いときに将来のかなり先(5-10年、それ以上の長期)までフォワードレートを加味し、輸入予約を済ませてしまおうというスキームのこと)

■米ドル/円は110.00円の攻防に注目

 以下は、米ドル/円の日足チャートです。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:Bloomberg)

 110.10円レベルには、中期の米ドル/円のサポートラインがきています。

 加えて、110.15円は、2017年9月8日安値と2017年11月6日高値の61.8%戻しレベル。

 他通貨での米ドル安の流れは変わりませんが、米ドル/円の110円台では、前述のオープン外債とフラット為替による米ドル買い需要で、いったん110円台はサポートされています。

 中期の米ドル安の流れは変わらないため、対円でも再び110円台の攻防になる可能性が高いのですが、次の110円台の攻防が、今年(2018年)前半の米ドル/円の行方を左右しそうです。

 1月17日(水)のように、米ドル/円が110.00円を下抜けなければ、昨年(2017年)後半のように当面レンジ

 逆に、110.00円を下抜けてしまうと、米ドル/円の下値余地は大きく拡大します。

 中期的な米ドル安の流れと、本邦機関投資家の米ドル買い需要が交錯する米ドル/円の110.00円の攻防に注目です。


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