■日本の機関投資家は外債を処分
先週(2月12日~)の米ドル/円は105円台半ばまで下げました。何が原因だったのでしょうか。

(出所:Bloomberg)
通商問題がテーマとなってきたことが大きいと思います。NYダウが下げて、日経平均、さらに米ドル/円の下落を誘発したとする見方がありますが、それだと年初からの株高に、なぜ為替は追随しなかったのかを説明できない。むしろ株高でも重かった為替が先行指標だったのでしょう。
【参考記事】
●米通商問題が争点となり米ドル安が進む。ドル/円は110円が決壊! 次は105円へ…!?(1月25日、西原宏一)
今週(2月19日~)も円高が続くのでしょうか?
米ドル/円の105円台では、「フラット為替」(※)の買いが出ていたようです。
(※編集部注:「フラット為替」とは、スポットの為替レートが安いときに将来のかなり先(5-10年、それ以上の長期)までフォワードレートを加味し、輸入予約を済ませてしまおうというスキームのこと)
円高が進むとフラット為替が出てくることがあるのですが、経験上、これが出てくると円安になりにくい。
また、本邦機関投資家が外債を処分していたことも、足もとの円高を加速させている一因です。

(出所:Bloomberg)
竹内典弘さんが18日(日)に「FXトレード戦略指令!」で配信したメルマガ(「今週(以降かなり先までも含めた)展望」)が興味深かったですね。
日本の機関投資家が、1月最終週から2月第1週にかけて2兆円近い外債を処分した、と。
2017年下半期の計画では、大手生保は為替リスクをヘッジしない「オープン外債」を買っているのだと思いましたが…。
【参考記事】
●ドル/円は118円への上昇過程! 注目は…!?NZドルを反落させたネガティブ材料とは?(2017年10月26日、西原宏一)
中堅生保はむしろ外債を処分しているようですし、オープン外債にしても頼りになるものではありません。
昨年(2017年)9月上旬も、リスクオフのムードが高まると、彼らは注文を引いてしまいましたから…。
■リフレ派の日銀副総裁誕生にも反応せず
大手生保のオープン外債はあてにならないし、中堅生保は売っているとなると、本邦機関投資家による米ドルの買い支えは期待できないようですね。
トランプ政権は先週(2月12日~)、予算教書を議会に提出しました。財政支出を拡大させる内容で、2027年に収支を均衡させるとしていた共和党の目標は、あきらめたようです。
これだと米国債への信任が低下し、悪い意味での金利上昇、さらには株安、米ドル安につながるかもしれません。
さらに、1兆7000億ドル規模のインフラ投資も控えており、財政赤字の拡大は必至です。
インフラ投資法案が議会を通過すると、さらに信任が低下。米金利が上昇し、株式市場に悪影響を与えると予想されるため、むしろ否決されたほうがいい、とする見方もあるようです。
マーケットにとっては否決されたほうがいいのかもしれませんが、それはトランプ政権の行き詰まりを露呈することにもなり、新たな悪材料ともなりますよね。
一方、日本政府は先週(2月12日~)、黒田さん再任のほか、新たな副総裁として若田部昌澄・早稲田大学教授などの日銀人事案を国会に提示しました。若田部さんは金融政策重視のリフレ派ですが、市場は反応していません。
株が上がっても米ドル/円は上がらず、黒田再任やリフレ派の副総裁が誕生しても反応しないし、機関投資家の買い支えも期待できない――。どうしたら上がれるんだろうな、という感じです。

(出所:Bloomberg)
(次ページではユーロ/米ドルとゴールドの高い相関性の話題が…)
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