■輸入関税に反対してきたコーン氏が辞任
みなさん、こんにちは。
トランプ政権発足時、金融業界では、「トランプ政権は金融業界を理解している人材に不足している」という懸念が拡大していました。
その不安を払拭したのが、ゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長の存在。
金融業界の著名人である、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者も下記のようにコメントしています。
トランプ大統領就任の数日前に、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は将来について心配してはいないとして、大統領は「真剣な人々」を政権内に迎えようとしていると述べたが、これは元ゴールドマン社長のコーン氏のことだった。
出所:ロイター
コーン氏は米税制改革にも深く関わり、改革を達成した人物。
米税制改革の実現により、米企業の大幅な競争力改善を期待させ、1月の米国株は急騰しています。

(出所:Bloomberg)
そのコーン氏が辞任。
その背景にあるのが、輸入関税問題。
【参考記事】
●今週はSQ絡みの「株安・円高」に警戒! 米ドル/円は105.50円近辺の攻防に注目!(3月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
コーン氏はトランプ政権が導入しようとしている鉄鋼・アルミニウム輸入関税に反対していました。

写真は辞任したゲーリー・コーン国家経済会議(NEC)委員長。コーン氏は鉄鋼・アルミニウム輸入関税に反対していた (C)Bloomberg/Getty Images
多くの報道によれば、大統領に輸入関税導入を勧めていたロス商務長官とコーン氏は、輸入関税が発表される数時間前に、この問題を巡って非公式に議論を戦わせていたとのこと。
ただ、トランプ大統領は3月1日(木)、鉄鋼とアルミに、それぞれ25%と10%の関税を課すと発表。
金融業界のよりどころだったコーン氏は、下記のコメントを残し、政権を去りました。
ホワイトハウスが記者団に配布した発表資料でコーン氏(57)は、「国に奉仕し、米国民に利益をもたらす成長促進の経済政策を法制化できたことを光栄に思う。特に歴史的な税制改革法の成立が印象深い」とした上で、「私にこのような機会を与えてくれた大統領に感謝しており、今後、大統領と政権が素晴らしい成功を収めることを望む」と述べた。
出所:Bloomberg
■トランプ政権は株高維持よりも保護主義を選択
コーン氏の辞任は、トランプ政権が中間選挙を控え、「株高維持よりも保護主義を選択」との見方が増えています。
コーン氏が辞任した後のトランプ政権の中枢を担うのが、ピーター・ナバロ氏。

ナバロ氏は、『米中もし戦わば 戦争の地政学』という書籍の著者でもあり、対中強硬派として有名。
【参考記事】
●世界の為替市場参加者を震撼させる報道が出ても米ドル/円下落が限定的なワケは?(2017年2月2日、西原宏一)
つまり、トランプ政権は、中間選挙に向けて、対中貿易戦争を政策の主軸に据えたとの観測もあります。
結果、米国株はさらに不安定な展開となり、「貿易戦争」は通貨安(=米ドル安)を連想させ、米ドルの上値は限定的に。

(出所:Bloomberg)
米ドル/円は、105.00円に巨大なバリアが存在していると言われ、今のところ105.00円がサポートとなっていますが、コーン氏の辞任により、上値が限定的となっています。

(出所:Bloomberg)
仮に105.00円が決壊すれば、100円が見えてきます。
【参考記事】
●米ドル/円は一気に目標の105円台へ到達! いったん調整後、次のステージは100円へ(2月22日、西原宏一)
●ドル/円は再び105円台試すと100円も視野!? ビットコインは米国株の先行指標になる?(2月26日、西原宏一&大橋ひろこ)
金融関係者のよりどころであったコーン氏の辞任により、上値がさらに重くなった米ドル/円の行方に注目です。
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