■個人投資家の買いポジションは2016年以来の高水準に
今月(2月)、105円台まで下落した米ドル/円ですが、先週(2月19日~)は調整の1週間。107.90円まで高値をつけています。
(出所:Bloomberg)
気になっているのが、日本の個人投資家のポジション。米ドル/円の買い越し幅は、2016年7月以来の大きさだそうです。
日米金利差の拡大を手がかりに買っているのでしょうが、今年(2018年)の相場は、金利差拡大とともに円高が進んでいます。警戒が必要ですね。
(出所:Bloomberg)
2月の円高をもたらした犯人ではないかと思っているのが、本邦機関投資家。先週(2月19日~)発表された対外中長期債投資は、5531億円の売り越しでした。
3週連続の売り越しで、総額は2兆円を超えています。
(出所:Bloomberg)
米金利の上昇、つまり米国債価格の低下で本邦勢が損切りを迫られ、資金を円に戻す動きが円高の原因となったのではないかと…。
年度末も近いですし、再び米国債利回りが上昇する場面では円高に注意ですね。
(出所:Bloomberg)
一方、明治安田生命のように、1月後半から為替ヘッジをかけないオープン外債(為替をヘッジせず、オープンで投資する外債)を開始した機関投資家もいます。
彼らは、「1ドル=100円割れは想定していない。基本は緩やかな円安という見立て」だそうですが、105円割れあたりからは、個人投資家の損切りで走る場面があるかもしれません。
【参考記事】
●米ドル/円は一気に目標の105円台へ到達! いったん調整後、次のステージは100円へ(2月22日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
■27日夜にパウエルFRB議長の議会証言
2月27日(火)は、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長の議会証言ですね。日本時間では、原稿の発表が22時30分、議会証言は24時からです。
今月(2月)は、パウエルの就任に合わせるかのように株安が進みました。市場を沈静化させるような発言が出ないと、リスクオフ的な動きが加速するかもしれませんね。
少し先ですが、3月20日(火)~21日(水)はFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。利上げが確実視されていますが、一部からは利上げを疑問視する声も出てきています。
利上げの織り込みは100%。万が一、見送られるようなことがあれば、混乱は必至ですね。
織り込みどおりに利上げすれば、今年(2018年)は年4回利上げの可能性が出てきて、タカ派的なイメージともなりますよね。
そのとき、米長期金利は3%を超えてくるでしょうね。
そう考えると、3月FOMCは、「利上げすれば米金利上昇からの株安、利上げを見送っても先行き不安からの株安」と、どちらに転んだところで荒れるシナリオも考えられますね。ただ、FOMCは3週間後。まだ先です。
その行方を占う意味でも、経済指標、特にインフレ関連指標は気をつけたほうがよさそう。今週(2月26日~)はGDP改定値、コアPCEデフレーター、ISM製造業景況指数などの発表が控えています。
指標の発表を受けて、米金利がどんな反応を見せるのかがポイントですね。
■ビットコインは米国株の先行指標?
以前、米長期金利は3%が「デッドライン」とされていました。3%を超えてくると米国株が危ないと…。
ところが、最近では米国株が着実に戻しているせいか、「デッドラインは3.5%だ」とする向きも出てきています。市場に楽観が戻りつつあることが、逆に不安ですね。
米国株の先行指標になっているとジェフリー・ガンドラック氏(※)が指摘したのがビットコインです。
NYダウが急落するより先、昨年(2017年)12月にビットコインは急落していました。1カ月半のタイムラグはありますが、おもしろい見方ですよね。
(※編集部注:「ジェフリー・ガンドラック氏」は、米国の資産運用会社「ダブルライン・キャピタル」の共同創業者。世界的に有名なファンドマネージャーで「債券王」の異名を持つビル・グロス氏に代わり、「新債券王」として市場の注目を集めている)
ビットコインもNYダウも、昨年(2017年)は急騰しました。「ビットコインが下がってきたから利食おう、ついでにNYダウも利食っておこう」と、利益確定売りが連鎖した可能性はありますよね。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円の戻り売りを再開
今週末、3月4日(日)はイタリアで総選挙がありますし、ドイツでは連立政権を支持するかどうかのSPD(社会民主党)党員投票の結果が発表されます。
週明け、ユーロがらみの通貨ペアは、窓開けのリスクに要注意ですね。
ユーロがらみのポジションは、今週(2月26日~)末にいったん手仕舞ったほうがよさそうですね。
(出所:Bloomberg)
西原さんの戦略は?
米ドル/円の売りは、105円台でいったん手仕舞いましたが、先週(2月19日~)後半から再開しています。
トランプの通商政策や米金利上昇などの環境に変化はありませんので、再び105円台を試す場面があるでしょう。100円というターゲットも徐々に現実味を帯びてきています。
(構成/ミドルマン・高城泰)
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は登録後10日間無料解約可能なので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)