■森友文書と日本株7兆円の売り
週末にかけて、森友文書の書き換えとアメリカの通商政策、2つのニュースが円高リスクとして警戒されていました。
しかし、今朝(3月12日)の為替市場は大きな反応もなく始まっています。
森友文書については、今日(3月12日)、財務省が国会で調査結果を報告する予定です。交渉の経緯や関与した政治家の名前が明らかになるのかどうか…。
もし、政治家の名前が出てくるなら、どんな名前が出てくるのか。その結果次第では、日本株の下落を誘うかもしれません。
森友文書は、普通に考えれば日本株の売り材料。少なくとも買いたくなるような材料ではないですよね。
(※編集部注:この対談は3月12日(月)の午前中に行っています。同15時20分現在、森友学園の決済文書については、財務省報告で14の決済文書で書き換えがあったことが明らかとなっています。また、書き換え前の文書に安倍首相の名前があったと報じられています)
(出所:Bloomberg)
そこで気になるのは、海外投資家が1月第2週から現物、先物を併せて、日本株をすでに7兆円売り越しているということ。チャイナショック後のピーク時と同じ水準まで売りが積み上がっています。
チャイナショックでは、7兆円をピークにして大きなリバウンドがありました。安倍政権を揺るがすような調査報告が出たのに日本株が下がらない、ということになれば、逆にリバウンドに警戒した方が良いのかもしれないですね。
それだけショートが積み上がっていると、簡単には下がらないかもしれないですね。
■トランプのツイッター砲が日本を直撃!
もうひとつの懸念が、トランプ大統領のツイッター。
3月10日(土)の深夜には、日本を名指しして、アメリカが抱える1000億ドルの貿易赤字は「Not fair or sustainable」=「不公平で持続的ではない」と批判しています。
こうしたツイートが出ると、円高が連想されやすくなります。
トランプ大統領はツイッターで、日本を名指しして、アメリカが抱える1000億ドルの貿易赤字は「Not fair or sustainable」=「不公平で持続的ではない」と批判 (C) Chip Somodevilla/Getty Images News
専門家の予想を見ても、円高を予想する人が増えてきましたね。
ただ、多くの人は、米ドル/円は100円が底になると考えているようです。そうなると、反対に100円を大きく割り込む可能性もあるのかもしれませんね。
しかし、それは、まだ先の話でしょう。短期的には、105円のバリアオプションを割り込めず、反発しています。
リスクとしては下方向を見ていますが、低いところを売りたくはないですね。
【参考記事】
●輸入関税に反対してきたコーン氏が辞任! ドル/円は上値重く、105円決壊なら100円へ(3月8日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
■米朝首脳会談のサプライズでナスダックが最高値更新
気になるのは、米国株。ナスダック総合指数は、先週(3月6日~)末、米雇用統計発表後に最高値を更新しています。ナスダック総合指数とともに、NYダウも巻き戻す可能性がありますよね。
そうなると、リスクオン相場が戻ってくるという見方ができなくもない。米朝首脳会談のサプライズもありましたし、下ばかりを考えているとリバウンドが怖いですね。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
米朝首脳会談については、安心するのはまだ早いという印象。まだ会談するというだけであって、北朝鮮の非核化が担保されたわけではありません。
口約束だけを信じるのでは、クリントン政権と同じ轍を踏むことになってしまいます。
経済指標では、3月13日(火)の米CPI(消費者物価指数)が大注目ですね。
来週(3月19日~)、20日(火)から21日(水)の日程でFOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されます。
CPIがどうなろうと利上げが揺らぐことはありませんが、CPIの数字次第では、年3回利上げか4回なのかの議論に影響を与えることになる。
当面、インフレ関係の経済指標には注目が集まりそうです。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:各国政策金利の推移)
あとは、3月18日(日)にロシア大統領選挙も。プーチンさんの再選が確実視されていますので、為替への影響はないとは思いますが、国際政治上の大ニュースではあるので、考慮しておきたいですね。
■ペンシルバニア州補選が撹乱する可能性も
選挙という意味では、3月13日(火)に予定されている米ペンシルバニア州での下院補欠選挙の方が、市場への影響が大きいかもしれない。
ペンシルバニア州には、鉄鋼の街・ピッツバーグがあります。トランプ大統領は、先週(3月5日~)、鉄鋼・アルミへの追加関税を導入する大統領令に署名しましたが、この選挙へ向けての人気取りだったのでは? との指摘が出ています。
【参考記事】
●今週はSQ絡みの「株安・円高」に警戒! 米ドル/円は105.50円近辺の攻防に注目!(3月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
●輸入関税に反対してきたコーン氏が辞任! ドル/円は上値重く、105円決壊なら100円へ(3月8日、西原宏一)
世論調査では、共和党候補有利のようですが、もし、共和党が敗北すると、トランプ政権はさらに過激な方向へとアクセルを踏みかねない。
この選挙、マーケットの撹乱要因になるかもしれないですね。
森友文書、通商政策、ペンシルバニア州補選、米CPIなど材料の多い1週間ですが、基本的には、米ドル/円の戻り売りを考えています。
しかし、日本株がショートに偏り過ぎていることが気になりますし、大きなリバウンドがあるかもしれません。
そうなると、米ドル/円も下がりにくくなりますから、低いところでは売らず、リバウンドを見極めながら慎重に売っていきたいですね。
(出所:Bloomberg)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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