■「セル・イン・メイ」をきっかけに米ドル/円は続落中
みなさん、こんにちは。
前回コラムでご紹介させていただいたように、「5.23」という「セル・イン・メイ」をきっかけに、下落トレンドに回帰した今週(5月28日~)の米ドル/円は、急激に値を下げる展開。
【参考記事】
●トルコリラ急落をきっかけにリスクオフ! 米ドル/円急反落! ユーロ/円は123円へ…(5月24日、西原宏一)
米ドル/円は、111.40円の高値から戻しもなく一気に、一時108.11円まで急落。

(出所:Bloomberg)
米ドル/円の108.00円は反発局面で節目となったレベルであるため、下落時もサポートとなり、いったん下げ止まっています。
ただ、米ドル/円は米10年債利回りが反落過程にあるため、上値は極めて重い展開。

(出所:Bloomberg)
4月の米ドル/円の反発は、米10年債利回りが、一時3.00%を超えて上昇したことが要因となっています。
一方、2月の米ドル/円は、米10年債利回りは急騰したのですが、米国株が反落したことから、米金利の上昇より米国株の下落に連動して急落しました。
米ドル/円は、米金利の上昇に正の相関を示すというのがマーケットの通説になっています。ただ、それには条件があります。
株が安定して(上昇せずとも)推移し、マーケットのボラティリティが低いことです。
見方を変えれば、米金利の下落と株価の下落が重なると、米ドル/円の下落は急激なものとなります。
つまり、この状態は、典型的なリスクオフ相場を意味します。
先週(5月21日~)後半からの相場は、イタリアの政局の混乱によるリスクオフ相場=「株安・債券高(利回りは低下)・円高・米ドル高」の環境下であるため、米ドル/円、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下落は、急激なものとなるのです。
円高の要因が「イタリアの政局の混乱」であるため、クロス円の下落で、もっとも急激な値動きを示しているのがユーロ/円、ということになります(先週のコラムを参照)。
【参考記事】
●トルコリラ急落をきっかけにリスクオフ! 米ドル/円急反落! ユーロ/円は123円へ…(5月24日、西原宏一)
■イタリア政局はさらに混迷…
先週のコラムでご紹介させていただいた、イタリアの政局は、さらに混迷。
【参考記事】
●トルコリラ急落をきっかけにリスクオフ! 米ドル/円急反落! ユーロ/円は123円へ…(5月24日、西原宏一)
事の顛末をまとめますと、まず、今年(2018年)3月のイタリアの選挙において、どの政党も過半数を取れなかったことから始まります。
そして、「五つ星運動」と「同盟」が連立政権を目指し、新首相に五つ星運動のジュセッペ・コンテ教授を任命します。
しかし、マッタレッラ大統領は、先週(5月21日~)末、ユーロ懐疑派のエコノミストであるパオロ・サボーナ氏の経済相起用を拒否。
これを受けて、五つ星運動と同盟が首相に推した、ジュセッペ・コンテ教授は組閣を断念することに…。
結果、イタリアの政局は、さらに混迷したというわけです。
5月29日(火)の報道によれば、早ければ、7月29日(日)や8月5日(日)の選挙実施に向け、議員らのコンセンサスが固まりつつあるとのこと。
呼応して、イタリア10年国債利回りの対独スプレッドは、さらに急拡大しています。

加えて、驚くべきは、イタリア2年債の急落。
5月29日(火)のイタリア2年債の利回りは急上昇し、一時、前日比2倍強の2.7%に到達。

(出所:Bloomberg)
これに即座に反応したのが、ユーロです。
次のイタリア再選挙は、ユーロの是非を問う事実上の国民投票になるとの意見も増えてきているため、ユーロクロス(米ドル以外の通貨とユーロとの通貨ペア)は、急激に下落。ユーロは、主要通貨に対して大きく値を下げています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 日足)
■ユーロ/円は1週間で約7円急落! 120円へ…
このユーロクロスで下落が際立ったのが、先週のコラムでも取り上げているユーロ/円です。
【参考記事】
●トルコリラ急落をきっかけにリスクオフ! 米ドル/円急反落! ユーロ/円は123円へ…(5月24日、西原宏一)
ユーロ/米ドルは、イタリアの政局の混迷から急落し、米ドル/円は、米10年債利回りが下落して値を下げているという相場環境の中、ユーロ/円は暴落。
131.35円の高値(5月22日)から、あっという間に124.62円(5月29日)まで下落しました。
つまり、わずか1週間で約7円の急落となっています。

(出所:Bloomberg)
イタリアの混乱は、5月30日(水)に行われた5年債、10年債の入札が、まずまずの結果であったため、いったん下げ止まっています。
ただ、同盟のサルビーニ党首は、そもそも、ユーロは「ドイツの通貨」であるという意見を持っていることもあり、イタリアの政局は、依然、不透明。よって、当面、ユーロの上値は、限定的なものになりそうです。
以下は、2018年2月8日(木)にロイターで配信された記事を引用したものです。
イタリアの右派政党である北部同盟のマッテオ・サルビーニ書記長は7日、同党がユーロ離脱に向けた準備を進めていると表明、ユーロは「ドイツの通貨」であり、イタリア経済に損害を与えているとの認識を示した。
出所:ロイター
お伝えしたとおり、イタリアの再選挙は、ユーロの是非を問う事実上の国民投票という考え方も増えてきています。120円への下落過程にあるユーロ/円の動向に注目です。
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