■政局混迷でユーロ/米ドルは6週連続の陰線に
ユーロ圏の政局が荒れています。イタリアでは大統領がユーロ懐疑派の大臣起用を拒否したことから再選挙の可能性が浮上し、スペインではラホイ首相への不信任決議案が提出されました。
政情不安を反映してか、ユーロの下落が止まりませんね。ユーロ/米ドルは先週(5月21日~)、1.16ドル台まで下落し、これで6週連続の陰線となりました。
(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドルの下落は、1.25ドルから始まりました。当初は米金利上昇とユーロ圏の経済指標の悪化による下落でしたが、先々週(5月14日~)あたりからは、イタリアなどの政局混乱による下落となっています。
ユーロ圏では、ギリシャやフランスなど毎年のように不安要因が出てきますが、今年(2018年)もか…という感じ。
ただ、不安材料が顕在化するとユーロ安に対するヘッジをかけないといけない投資家が出てくるので、それがさらにユーロ安を進めることになるかもしれません。ユーロ/米ドルの下落は、1.17ドルをクリアに割ってくるかどうか、注目ですね。
(出所:Bloomberg)
■サウジアラビアの増産示唆で原油急落
WTI原油も、先週(5月21日~)、70ドルを割り込んで66ドルまで急落しました。
チャート的には、トップアウトしたように見えますね。
(出所:Bloomberg)
原油高でガソリン価格が高騰しています。車社会の米国にとって、ガソリン高は好ましくありません。
トランプ米大統領がイラン核合意を離脱したことで原油価格は一段高となりましたが、「トランプのせいで生活が苦しくなった」との印象は、中間選挙に響いてきます。
米国とサウジアラビアは、近年、急接近しているので、6月22日(金)のOPEC(石油輸出国機構)総会に向けて、原油価格にも注目です。
それはあるでしょうね。「アメリカは産油国だから原油高を歓迎している」との意見もありますが、中間選挙を考えると、市民の生活が苦しくなることは避けたいでしょう。
トランプ大統領の思惑に応えたのでしょうか。先週(5月21日~)末、サウジアラビアのエネルギー相は、増産を示唆しました。協調減産をきっかけにして上がってきた相場なので、減産緩和が具体的になってくると、WTI原油は200日移動平均線の60ドル近辺まで下がってもおかしくない。
そうなると、米長期金利に影響が及びそうです。米長期金利は、原油高などを背景とするインフレ期待で上がってきた部分も大きいですから、原油価格が下がると米長期金利にも下落圧力となります。
WTI原油がどこまで下げるのか、今週(5月28日~)から来週(6月4日~)にかけて焦点になってくると思います。
(出所:Bloomberg)
■原油急落→インフレ期待/米長期金利低下→円高
原油が下がり、インフレ期待が後退すれば、米長期金利が下落し、相関性の高い米ドル/円も下がることになりますね。一方では、イタリアやスペインの政治危機が十分に織り込まれていない。
イタリア国債などの対独スプレッドを見ると、まだユーロは下げる余地がありそうで、そうなると、ユーロ/米ドルの下値余地もあるということになります。
【参考記事】
●トルコリラ急落をきっかけにリスクオフ! 米ドル/円急反落! ユーロ/円は123円へ…(5月24日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
円高の動きとユーロ安の動きが強まるとなると、西原さんはユーロ/円の売りですか?
そうですね。それもあって先週(5月21日~)初からユーロ/円のショートをキープしています。
ユーロ圏のクレジット市場が変調をきたし始めていて、全般的に、じわじわとリスクオフ的な動きが強まっています。
以前だと円やスイスフランがヘイブンカレンシー(Haven Currency、逃避通貨)だったのが、最近では円一択となってきています。そうなると、対スイスフランや対米ドルでユーロを売るよりも、対円で売る方がいいでしょう。
(出所:Bloomberg)
■ユーロや産油国通貨のクロス円ショートに妙味
原油の下落が続くなら、産油国通貨のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)でショートするのもおもしろいですよね。メキシコペソや加ドル、英ポンド――
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
英ポンドや加ドルは、いいかもしれないですね。
それに、原油先物では、投機筋らのロングがパンパンに溜まっていましたから、利食いの嵐が吹き荒れれば、もうひと下げくるでしょう。
そのときは、米長期金利も2.75%あたりまで下がっているかもしれません。
(出所:Bloomberg)
いずれにせよ、今週(5月28日~)は。対ユーロや産油国通貨を中心としたクロス円の戻り売りがよさそうですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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