■ユーロ/円、英ポンド/円が下値ターゲット達成
前回のコラムでは、「リスクオン・オフの市場センチメントと関係なく、近々ユーロ/円の125円割れ、英ポンド/円の144円割れを覚悟しておきたい」と指摘していたが、市況はそのままになり、また、ターゲットを達成するまでほぼ一本調子の下落となった。
もちろん、イタリア政局の混乱でリスクオフだったので、当然の成り行きといえるが、それにしてもスピードが速かったと思う。
【参考記事】
●米朝首脳会談の中止で円高になったわけではない! 円高になった真の理由とは?(2018年5月25日、陳満咲杜)
(出所:IG証券)
■リスクオン・オフが先か、ファンダメンタルズ上の材料が先か
ここからの焦点は、やはり、リスクオフのムードが続くかどうかにあるだろう。イタリア政局に加え、中国のみならずEU(欧州連合)、日本とも貿易戦争を辞さないトランプ政権の政策やスタンスから考えると、これからもリスクオフムードが続くといった結論が出やすいだろう。
しかし、筆者の考えはやや違っている。断定的な結論には達しないが、必ずしもリスクオフが続くとは限らないと思う上、また、リスクオン・オフはいわゆるファンダメンタルズ上の材料によって決まるものではないとみる。
世間一般の常識では、材料があって値動きが形成され、また、値動きの連続でトレンドが形成される。しかし、市場の歴史を振り返ってみるとわかるように、このような「規律正しい」相場の反応パターンは、むしろ少ない方だと気づく。
多くの場合はその逆で、だいぶトレンドが形成され、その途中か最終段階においてトレンドを証左、あるいは加速させる材料が出てくる、というパターンがよく見られる。今回も然り。ユーロ/米ドルの例で見るとおわかりいただけるだろう。
■イタリア国債暴落のニュースより先にユーロは下落していた
ユーロ/米ドルは2月にて頭打ち。その後、4月末まで保ち合いを形成し、3月安値を割り込んだのが4月26日(木)であった。その時、イタリア政局云々の材料は浮上しておらず、あるいはあっても市場関係者には語られていなかった。
(出所:IG証券)
3月安値を割り込んだあと、ユーロはほぼ一本調子に下落。イタリア混乱の材料が5月下旬に入ってから重く受け止められ、また、イタリア国債暴落のニュースがモニターにて確認されたのも、5月25日(金)あたりからだ。
つまるところ、「ユーロが下落したからイタリア政局が不穏になった」というロジックと因果関係はないが、逆に「ユーロ売りの原因はイタリア政局の不穏にあった」と解釈されるのも正しくない。
むしろ、イタリア云々が巷で広く語られ、また周知されたところ、一種の「出尽くし」もあって、トレンドにおけるスピード調整(場合によっては反転)が行われやすかったかと思う。
ユーロが5月30日(水)から反騰してきたのも、ほかならぬ、トレンドがだいぶ進行し、また、イタリア云々が広く人口に膾炙されたところ、猫も杓子もユーロ売り(4月前半まで猫も杓子もユーロ買いであった状況と正反対だ)を仕掛けたため、「出尽くし」が生じたからだ。
(出所:IG証券)
この意味では、往々にしてトレンドの途中や最終段階において…
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