■テクニカル的には「第二のトランプラリー」になり得る?
2016年11月9日(金)と言えば、トランプ氏が米大統領に当選した日だ。当日も大きく反落し、ドルインデックスが一時大きく売られた後、一転して大きく反騰、また、ずいぶん高く大引けしたから、いわゆる「トランプラリー」の起点であったといえる。
(出所:Bloomberg)
当日の日足を詳細に観察すればわかるように、その足型自体も典型的な強気リバーサルで、フェイクセットアップの事例として教科書に載るほどの好例であった。
その後、ドルインデックスは2017年高値103.82まで上昇し続け、「トランプラリー」と言われる大相場を演じた。
言ってみれば、今回はファンダメンタルズ上の出来事が違ったものの、テクニカル上の視点からみれば、第二の「トランプラリー」になってもおかしくないから、軽視すべきではないだろう。
米ドル高はずいぶん進行していたから、もうこれ以上無理といった先入観を排除しないと、これからの相場についていけなくなる、というリスクが大きいかもしれない。
実際、あの「トランプラリー」の起点自体も、2016年5月安値から形成された大きな米ドル高の途中であった。
(出所:Bloomberg)
米ドル高は2016年5月安値からすでに大きく進んでいたが、米大統領選で途中の波乱はあったものの、結局その後、ドルインデックスはブルトレンドを大きく伸ばしていった。そのときの経緯に照らして考えると、我々は目下の位置している状況を再確認することができ、また、多くのヒントが得られるのではないかと思う。
■ユーロ/米ドルは戻り売りに徹した方が無難
もちろん、米ドル全体のブルトレンドが継続し、また、ユーロのベアトレンドが推進されていくと予想されても、すぐに高値更新、また、安値更新していくとは限らないことも想定できる。
しかし、仮にそのような市況であっても、米ドル全体は高値圏での保ち合いに留まり、ユーロもせいぜい安値圏での保ち合いを維持するだけで、トレンド自体を修正はできないだろう。
この意味では、ユーロ/米ドルに関しては、これから戻り売りのスタンスに徹したほうが無難であろう。ちなみに、2016年11月9日(金)のユーロ/米ドルの高値は1.13ドルの節目前後だったので、1.15ドルの節目割れがあれば、1.13ドルの大台の打診を射程圏内に収めるかとみる。
(出所:IG証券)
前述のように、1.15ドルの節目を割り込むまで安値圏での保ち合いが想定されるが、1.15ドル割れが早晩見られ、また、次のターゲットである1.13ドルまで大したサポートゾーンが存在しないことを強調しておきたい。
■ユーロ/円はユーロ/米ドルと分けて考えた方が良い
ユーロのベアトレンドがこれからも続くなら、ユーロ/円も安値を更新していくだろうといった連想もあるが、筆者はユーロ/円は分けて考える方が良いかと思う。その理由に関しては、また次回にて詳説したいが、つまるところ、やはり、米ドル高とリンクして円安の進行が推測されるからだ。
米中貿易戦争が一段と激化(※)して円高の余地あり、といった向きもあるが、米国株の基調が崩れない限り、材料として二の次かと思う。
(※執筆者注:6月16日(土)に米国による制裁、500億ドルの中国輸入品課税が実施される予定)
カギとなるのは米、欧、日の金融政策格差だが、出口さえ模索されていない日銀の緩和政策が円安を支える材料として一層目立つ以上、安易な円高の再来もなかろう。市況はいかに。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)