■日米通商協議は9月会合へ持ち越し
日米通商協議が8月9日(木)~10日(金)の2日間にわたり開催されましたが、折り合いが付かず、9月の会合へ持ち越しとなりました。
協議前に、日本へ圧力をかけるため、トランプ大統領から発言が出てくるかと思いましたが、それはなく、ライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表からの圧力も、あまり聞こえてきませんでした。
EU(欧州連合)や中国などに対しては、トランプ大統領からの圧力が強かったのですが、日本に対してはまだそのようなことがないこともあって、日米間の貿易摩擦に関しては、市場の見方は緩和されてきています。
■市場の目先の注目はトルコに!
メインテーマは貿易戦争ではありますが、市場の目先の注目はトルコになっています。
8月10日(金)の1日で、トルコリラは対米ドルで約20%も暴落するほど下げ、米ドル/トルコリラは13日(月)に、7.24リラ付近まで上昇(米ドル高・トルコリラ安)しました。
(出所:Bloomberg)
トルコリラ/円も、15円台で推移しています(※)。
(※編集部注:本記事寄稿後の8月14日(火)の東京時間では、トルコリラ/円は16円付近で推移している)
(出所:Bloomberg)
トルコが米国人牧師を拘束しており、トランプ大統領は解放を求めてトルコへ圧力をかけていますが、それに対してトルコが強硬姿勢をとっていることから、リスク回避の動きとなっています。
トルコリラ安になっていますが、それを止めるための利上げもなく、さらにトランプ大統領がトルコから輸入する鉄鋼とアルミニウムへの関税を従来の2倍に引き上げるとしており、これがトルコリラ安をさらに加速させています。
【参考記事】
●トランプ砲がトルコショックに追い打ち! 米国株が崩れると、リスクオフ加速も…!?(8月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
●トルコリラ/円は一時15円台まで大幅続落! 原因はトランプとエルドアンの両大統領!?
■ユーロ/米ドルと豪ドル/米ドルの下値余地が拡大
そして、欧州の金融機関がトルコの債権を多く保有していることから、ユーロも売られ、ユーロ/米ドルは約1年ぶりに、1.15ドルを下抜けてきました。
長く続いた1.1500~1.1850ドルのレンジも下抜けたことで、下値余地が広がっています。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルは三角保ち合いブレイクで1.15ドル割れに再挑戦!? クロス円も売り時か?(8月14日、バカラ村)
●トルコリラ/円が一時、16円台まで暴落! トルコリラ急落の震源地はユーロか!?
(出所:Bloomberg)
ユーロ/米ドルと同様に、もみ合いを続けていた豪ドル/米ドルもレンジを下抜けました。下降トレンドに上値を抑えられたタイミングからの下げでもあるため、豪ドル/米ドルの下値余地も、まだあるように考えています。
(出所:Bloomberg)
■米ドル高続けばFRBの利上げは先送りに!?
トルコショックからリスク回避となり、米ドル高・円高となっていますが、トランプ大統領は米ドル高にはしたくないため、米ドルの上昇が続きすぎるようであれば、また米ドル高けん制発言が出てくる可能性が高まります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
また、トランプ大統領はFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げに関しても快く思っていないようですが、今のトルコショックがその他の新興国市場の通貨危機にまで発展してくるようであれば、FRBの利上げも先送りになる可能性が出てきます。
FRBの年内の利上げが9月と12月に実施されるのは、ほぼ確実だと考えていますが、リスク回避の動きが続くようであれば、12月の利上げの確率は後退することになります。
8月23日(木)からはジャクソンホール会議(※)があるため、その点からも、パウエルFRB議長の講演内容が注目されます。
(※編集部注:「ジャクソンホール会議」は米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される、カンザスシティー連銀主催の年次経済シンポジウムの通称。世界中の中央銀行総裁や金融関係者の多くが参加するイベントのため、毎年、市場参加者から高い注目を集めている)
■ユーロ/米ドルの下値メドは?
ユーロ/米ドルはテクニカル的に、1.15ドルを下抜けると1.13ドル台へ推移する可能性をこれまで挙げていました。1.2555ドルからの下げを起点として、現在がエリオット波動論の5波動目と考えると、1波目と5波目の値幅が同じになりやすいことから、目先の下値メドは1.1350ドルとなります。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルは三角保ち合いブレイクで1.15ドル割れに再挑戦!? クロス円も売り時か?(8月14日、バカラ村)
(出所:Bloomberg)
ただ、すでにそのターゲットも近いことから、2017年1月安値、1.0340ドルからの上昇の62%戻しにあたる1.1180ドルが、下値メドとなりそうです。
(出所:Bloomberg)
週足で一目均衡表の雲を下抜け、日足とともに三役逆転となっていることも、下げを示唆している状況です。
(出所:Bloomberg)
トランプ大統領からドル高けん制発言が出たり、FRBがハト派になる可能性はありますが、ユーロ/米ドルはテクニカル的に1.15ドルを下抜けたこともあり、売り方向で良いと考えています。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)