■トルコショックに追い打ちをかけたトランプ砲
今週(8月13日~)はお盆で休暇の人も多いかと思いますが、いかにも「8月らしい相場」というか、先週(8月6日~)から大変な相場になっていますね。
発端は、トルコリラ。年初に30円台、今月(8月)初めに22円台だったトルコリラですが、今朝は15円台。今年(2018年)だけで50%ほど減価したことになります。

(出所:Bloomberg)
トルコ当局は、今日(8月13日)早速、朝方にスワップ取引の規制を、14時過ぎには「銀行は必要なすべての流動性を供与する」などのメッセージを発表しましたが、この程度の対策では焼け石に水。市場の反応も限定的です。
財政赤字やインフレなどの構造的な問題もありますが、急落の原因のひとつがアメリカとの対立ですよね。
トルコに拘束されたアメリカ人牧師の解放をトランプ政権は要求していますが、トルコのエルドアン大統領は拒否。対立が激化しています。
8月10日(金)の夜には、休暇中のトランプ米大統領がわざわざ、トルコへの関税を2倍にするとツイートしました。
牧師が逮捕されたのは、2016年。つまり、前政権が積み残した課題をトランプ政権が尻拭いするという構図は、北朝鮮の核開発問題などと同じですね。
通貨(トルコリラ)安を食い止めるには、緊急利上げや牧師の解放などが必要となるのでしょうが、エルドアン大統領は強硬ですね。
「金利は最低限に抑える」と利上げに否定的だし、アメリカに歩み寄ろうとする気配も見えません。
■「ユダヤ人国家法」がエルドアンを刺激した可能性
当座しのぎにしかならないでしょうが、トルコはもはや利上げするしかないと思うのですが……。
金利を否定するイスラム教の影響が強まっているのかもしれませんね。トルコは政教分離の国ですが、エルドアンは「金利は搾取の道具」とまで発言しています。
それに、これは勘ぐりすぎかもしれないですが、イスラエルで7月に可決された「ユダヤ人国家法」の影響も考えられます。
イスラエルを「ユダヤ人の民族的郷土」と位置づける法律です。日本にはあまり伝わっていないニュースですが、ユダヤ人国家法の可決が周辺国のムスリムを刺激している可能性は否定できません。
■トルコリラの下落は簡単には止められないが…
トルコリラの下落は、そう簡単に止められないと思いますが、緊急利上げや牧師解放などのヘッドラインによって跳ねる可能性もあります。
先週末(8月10日)の急落時もスプレッドが大きく広がりましたし、逆指値を置いても、いくらで約定するかわからない。
今、トルコリラに手を出してもギャンブルのようなトレードになってしまう。要注意です。

(出所:Bloomberg)
■トルコショックは日本の機関投資家にも波及か
トルコに対する懸念の高まりからユーロが売られ、この対談でも、ずっと注目していた1.15ドルの節目を下抜けしましたね。
トルコへの直接投資は、総額1400億ドル。そのうち75%がヨーロッパからの投資で、対トルコの債券保有国は、スペインやフランス、イタリアの順になるそうです。
ユーロの下落が加速するようだと、日本への影響も出てくるかもしれません。日本の機関投資家は、スペインやイタリアの債券を10兆円ほど保有しているそうで、しかも買ったのは昨年(2017年)、南欧の債券がスッ高値だった時期です。
【参考記事】
●中国の痛み大きい貿易戦争でも豪ドル高!? 大橋ひろこアナの妄想(?)シナリオとは?(8月6日、西原宏一&大橋ひろこ)
●日銀の金融緩和政策修正は「地ならし」程度のものに!? 米ドル/円はどう動くのか?(7月30日、西原宏一&大橋ひろこ)

(出所:Bloomberg)
昨年(2017年)、米国債で損をして欧州債に乗り換える動きがありましたね。機関投資家は合議制でポートフォリオを決めていくところが多いため、どうしても市場の動きから遅れがちです。
ユーロが下がると本邦勢からヘッジの売りが出てくる可能性が大きく、そうなればユーロ/円の下落が大きくなりそう。さらに下がれば、リスク資産を処分する動きが加速するかもしれませんね。

(出所:Bloomberg)
(次ページではリスクオフ加速の可能性や今週の戦略の話題が…)
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