■日銀の金利許容変動幅の拡大は円高リスク
7月30日(月)~31日(火)に開催された日銀金融政策決定会合では、金融機関の副作用を緩和させる行動が出てくるのではないかとされ、注目を集めていました。
結果は、黒田総裁が記者会見で、長期金利の許容変動幅を倍にすると発言。従来は0.1%が上限となっていましたが、これを0.2%へ拡大しました。
ただ、これは円高要因でもあるため、フォワードガイダンスの導入や、「緩和策は長期的に継続される」という趣旨の発言も行い、円安要因も織り交ぜた内容となりました。
日銀は7月30日(月)~31日(火)の金融政策決定会合で、長期金利の許容変動幅を従来の倍にすることを決定。一方でフォワードガイダンスを導入するなど、円高と円安、両方の要因を織り交ぜた内容となった。写真は2016年9月会合後の記者会見時 (C)Bloomberg/Getty Images
日銀金融政策決定会合の結果が伝わった7月31日(火)は円安に推移しましたが、翌日(8月1日)は長期金利が上昇して円高となり、米ドル/円は方向感のない展開が続いています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
市場がまだ、長期金利の上値を試しきっていないこともあり、円高リスクがありますが、目先は落ち着いた動きをしています。
【参考記事】
●米ドル高予想変わらず!「偉大なアメリカ」の利上げに対し日銀政策は「コップの中の嵐」(8月3日、陳満咲杜)
●日銀は長期金利上昇を条件つきで容認! 米ドル/円の下値余地は徐々に拡大へ…(8月2日、西原宏一)
■今週は日米通商協議が重要イベントに
米国と中国の貿易戦争は継続していますが、今週(8月6日~)は、9日(木)(日本時間10日(金))に日本と米国の通商協議があります(※)。
(※編集部注:場合により、10日以降も協議が続く可能性がある模様)
自動車関税も話題となっており、もし課税されるとなると、トヨタ自動車では日本からの輸出だけで、年間4700億円の影響が出るとされています。
これはリスク回避要因になり、為替市場では円高の材料になるため、今週の日米通商協議は重要なイベントとなります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
■トランプ大統領から厳しい要求があるかも
日米通商協議では、まだ何が出てくるかわからない状況ですが、米財務省の為替報告書に「円は割安」との指摘もあることから、為替への言及も出てくる可能性があります。
7月25日(水)の米欧首脳会談では、交渉を有利に進めるため、トランプ大統領が会談前に自動車関税をかけると、事前に厳しい要求を発言していました。
結果はEU(欧州連合)側が歩み寄るかたちとなり、工業製品の関税をゼロにし、欧州向けの大豆やLNG(液化天然ガス)の輸入を拡大することが決まりました。
【参考記事】
●日銀が出口政策に向かうには早すぎる! けれど、米ドル/円は上昇したら売ればいい(7月31日、バカラ村)
日米通商協議は、茂木経済再生担当相とライトハイザーUSTR(米通商代表部)代表が中心となって行われますが、交渉を有利に進めるため、米欧首脳会談のときと同様に、トランプ大統領から厳しい要求が出てくる可能性があります。
その場合は、円高へ推移することになります。
実際に、そのような発言が出なかったとしても、開催前まではその警戒感もあって、円安には進みにくいのではないかと考えています。
■米ドル高・円高でクロス円が下落しているが…
米ドルに関しては、米国のGDP(国内総生産)は良く、8月3日(金)に発表された米雇用統計も悪くない内容だったこともあり、金利差や景況感、米国への資金還流の動きからも、米ドル高に推移しやすい状況です。
そのため、為替市場全体としては、米ドル高・円高となり、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)が下落しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
ただ、夏枯れ相場となっていることもあって、値幅は小さく、勢いもなく、トレンドが出ている通貨ペアは少ない状況です。
今週(8月6日~)は、9日(木)の日米通商協議が重要ですが、米ドル高・円高から、米ドル/円の動きが期待できない状態はまだ続きそうです。
開催前は円安に進みにくいことからも上値が重く、米ドル/円は今週も、110~112.50円のレンジ内での推移となりそうです。
(出所:Bloomberg)
■ユーロ/米ドルは1.15ドルトライの可能性!
ユーロ/米ドルは、1.1500~1.1750ドルでの狭いレンジが続いていますが、再度、1.15ドル割れをトライする動きが出てきそうです。
三角保ち合いの下限が1.1605ドルにありましたが、先週(7月30日~)、それを下抜けました。そして、下抜けた三角保ち合いの下限が、今度はレジスタンスに切り替わっています。
(出所:Bloomberg)
値動きとしては、8月3日(金)の米雇用統計で少し悪い数字が出て、上がったところで売られたこともあり、1.15ドルのトライを期待できるのではないかと考えています。
夏枯れ相場となっていることから、値動きが小さく、勢いもない状態が続いているため、1.15ドルを割れるためには何か材料がほしいところですが、下抜ける可能性が高まっている状況ではあります。
米ドル/円の動きは、あまり期待できませんが、今月(8月)は円高になりやすい時期でもあるので、クロス円の下げにも期待できるのではないかと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)