⇒Amazonで『これからを稼ごう仮想通貨と未来のお金の話』(徳間書店/堀江貴文 著 大石哲之 監修)を見る
6月末に『これからを稼ごう 仮想通貨と未来のお金の話』(徳間書店)という仮想通貨の書籍を出版したホリエモンこと堀江貴文さん。これは堀江さんの2冊目になる仮想通貨に関する本で、単著としては初めてとなる仮想通貨本だ。
その中では、仮想通貨のしくみや歴史がわかりやすく解説されているほか、お金の正体とは何か? これからお金はどうなっていくのか? 仮想通貨の発展でどんな社会が到来するのか?といったことが語られ、単なる仮想通貨本に止まらない広がりを持った内容となっている。
常に時代の先を見通してきた堀江さんは仮想通貨の今後をどう見ているのか? 仮想通貨本を出版したこの機会に「ザイFX!×ビットコイン」では堀江さんに話を聞いた。
■2017年の熱狂を見通していたホリエモンが占う今後の仮想通貨
────BTCN(※)が堀江さんに2015年6月に行ったインタビューの中で「ビットコインなどの暗号通貨が日本で爆発的に普及しうるシナリオ」について聞かれ、「投機です。投機」と即答されていました。
2017年の仮想通貨界の熱狂をズバリ見通していたかのような発言に唸らされたのですが、仮想通貨相場もいったん落ち着いた今、もう一度聞きたいです。2018年の今、「ビットコインなどの仮想通貨が日本で爆発的に普及しうるシナリオ」にはどんなことがあると堀江さんは思いますか?
(※「BTCN」とは仮想通貨取引所を運営するbitbank(ビットバンク)が持っている仮想通貨の有力なウェブメディア)
堀江 : 僕が当時予想していた流れは、まずビットコインに対する投機が進み、そこで膨大な含み益を抱えていた「仮想通貨長者」たちによるアルトコインへの投資で、マーケットが拡大することでした。加えて、ビットコインFX、そして最後にトークンエコノミーです。
その中で言えば、トークンはまだ発展途上で、可能性は充分に残っていると思います。問題は日本国内での法規制ですが、エストニアやアルメニアといった旧ソ連邦の小国や東欧諸国などでは次々と実験が行われており、そのあたりの国から徐々に波及していく形でしょうか。
あとは、やはり共通ポイントサービスの動きで、ネガティブな空気は一変すると思います。中でもLINEの動き。仮想通貨取引所「BITBOX」も開設して、ちゃんと手を打っています。旧ライブドアの遺伝子も継いでいるので、個人的には期待しています(※)。
(※かつて堀江さんが率いていたライブドアはやや複雑な変遷を辿りつつも、現在のLINE株式会社に吸収された形となっている)
共通ポイントサービスの動きで仮想通貨に対するネガティブなイメージは一変!? 特に、LINEの動きには、注目しているという堀江さん。ビットコインなどの仮想通貨が日本で爆発的に普及する時代は、すぐそこまで来ているのかもしれない
■かなり早い時期からビットコインFXには可能性を感じていた
────堀江さんはかつてライブドア時代に外国為替証拠金取引の「ライブドアFX」を運営されていたこともありますが、仮想通貨のレバレッジ取引である「仮想通貨FX」については、どう見ていますか?
堀江 : 98年の外為法の改正で、それまで限られた事業者しか取り扱えなかった外国為替が、他の事業者でも扱えるようになったことはご存知の通りですが、その時に「これを利用すればギャンブルができる」と理解しました。その後、あれだけFXが流行った日本で、仮想通貨FXの需要があることは自明です。特にビットコインがすでに値上がりしていた状態以降で参入した人たちにとっては、需要があるでしょうね。
ビットフライヤーの加納さんやビットバンクの加藤さんには、かなり早い段階からビットコインFXの可能性は伝えていました。結果、流行ったのは予想通りです。
■モナコインなどを投げ銭してくる人がいたのが仮想通貨との出会い
────堀江さんと仮想通貨はどのように出会ったのでしょうか? また、仮想通貨のどんな点に魅力を感じたのでしょうか?
堀江 : ある程度、しっかりとその存在を認識したのは、2013年に入ってからです。2011年から1年9カ月、私は長野刑務所にいたのですが出所後、ツイッターで僕に対して、ビットコインやモナコインを投げ銭して「布教」してくる人が結構いたんです。ホリエモンが使ったら、仮想通貨の価格が上がる、と考えるちょっと頭のいい人がいた。当時のビットコインはまだ安かったし、モナコインなんてタダみたいな値段でしたから。
ただ、やっぱり国にとっては都合が良くない存在だと思っていましたし、当時は自分も仮釈放の状態だったので、あまり当局から睨まれるようなものとは関わりたくない。「関わってくれるな」という気持ちもありました。
ビットコインについては、インターネットと出会った時までは行かないものの、好意的には見ていました。現金決済の無駄の多さに常々苛立っていたというのもあります。
堀江さんは勝手に仮想通貨の投げ銭をしてくる人がいたことから、仮想通貨の存在を本格的に認識するようになったという。
イラスト:西アズナブル
■ライブドア株の100分割にはどんな意図があったのか?
────2017年後半のビットコインはハードフォーク(分岐)を何度も行ったことが話題の1つでしたが、堀江さんはかつて、ライブドア株の100分割などで話題をさらっていました。あの大規模な株式分割にはどんな意図があったのでしょうか?
堀江 : いまだに誤解されがちですが、分割時に一時的に急騰した「時価総額」を使って、株式交換などできないのは何度も説明している通りです。
ただ、金融商品の価値の源泉というのは流動性です。1株あたりの売買単位が下がり、流動性が上がったことによってライブドア株の価値は上がりました。もちろん、これは当時も今も合法です。
一方で、当時漠然と僕がライブドア株を通貨のようなものにしたいと思っていたのは事実です。今で言うトークンですね。当時、急成長を続けて多種多様な業種がライブドアグループに入っていき、1つの経済圏が生まれつつあった。
そこでライブドア株が10円、1円という単位で取引できるようになれば、その経済圏の中でサービスや、肉や野菜といった生活必需品までが買えるような仕組みができるかもしれない。社会実験としては、とても面白いと感じていました。
ライブドア株100分割の真の狙いとは、何だったのか――? 結論を言うと、これは堀江さんが仕掛けた社会実験だったようだ。ライブドア株が10円、1円という単位で取引できるようになれば、ライブドアグループという経済圏の中でサービスや生活必需品までが買えるような仕組みができるのではないか? と。今でいうトークンみたいなものを株式で実現しようとしたのが、ライブドア株100分割の真相らしい
■イーサリアムの生みの親、ヴィタリック・ブテリンに注目している
────仮想通貨の世界において、注目している人物はいらっしゃいますか?
堀江 : 20歳ぐらいでICOを行い、イーサリアムを世に送り出したヴィタリック・ブテリンは、僕が常々言っている「実行力」といった点で、傑物だと思います。
1994年生まれ、ロシア系カナダ人のヴィタリック・ブテリンはイーサリアムの考案者。ビットコインに興味を持ち、大学を中退して世界中のビットコイン関連のプロジェクトを見る旅をしていくうちに、イーサリアムの構想が浮かんできたという (C) John Phillips/Getty Images
■仮想通貨は国家の規制が難しい仕組み。でも中国は違うかな
────中国では2017年に仮想通貨取引が全面禁止され、日本でも2018年のコインチェック事件以降、仮想通貨交換業者に対する当局の姿勢が厳しくなっています。これから、国家は仮想通貨とどのような関係を築いていくとお考えでしょうか?
堀江 : 金融庁の思惑としては、ビットコインやモナコインのようなオーソライズされたものは別として、新規で取引所に「上場」する仮想通貨の銘柄一つ一つに対して、個別に上場審査のようなことをしたいということなんでしょう。
ただ、それぞれの仮想通貨からすれば、じゃあ別に日本人や日本向けに発行しなくていいよ、ということになる。取引所もバイナンスをはじめ、どんどん分散型になっていっているので、根本的な規制は難しいと思っています。ビットコインは「規制できない仕組み」を作り出してしまっている。
結局、規制は新しい技術に対抗できないというのが、僕の一貫したスタンスです。エストニアのように国が自ら仮想通貨を取り込んでいくこともあれば、今の日本のように排除に動くところもあるでしょう。小さな経済圏が法定通貨と共存するような世界になっていくと思います。
ただ、中国政府はどうなんだろう。個人情報を一元化して管理できている強さはあるし、習近平が国の通貨発行権を脅かす存在を許すかといえば、おそらくそれはない。仮想通貨の規制を行う上で、一番強いのは事実です。
■イーサリアムが持つ仕組みは社会インフラを一変させる可能性を持つ
────これから仮想通貨がもっと普及していくと、社会はどのように変わっていくと思われますか?
堀江 : 一言でいえば、「なんでもできるし、すべてが変わる」です。
まず、イーサリアムが提唱するスマートコントラクトは、単純なお金の代替といった機能だけではなく、社会インフラを一変させる可能性がある。分散型のブロックチェーンに「契約を自動実行する」仕組みを組みあわせれば、あらゆる社会インフラの構造が変わる。許認可やその管理などが自動化されるわけですから、中間コストは圧倒的に引き下げられます。
で、各企業や団体、地域ごとによるトークンの発行により、複数の小さな経済圏が法定通貨と並び立つような世界になる。そこで人々は、それぞれが自分の生きる経済圏を自由に選択するようなことになると思います。
そこでの本質的な富は、貨幣の多寡ではなく、その人自身の持つ「信用」です。現段階では一部のインフルエンサーが持つ大量のSNSフォロワーといった形でしか可視化されていませんが、単純な人気のような指標ではなく、もっと精緻に「信用」を評価するような仕組みが誕生するでしょう。
ただ、こうした仕組みに、抵抗を感じる人は必ず出てくるので、貨幣経済で生きる人、評価経済で生きる人と、二極化はこれまで以上に進んでいくんじゃないかなと思います。どちらで生きるかは、個人が決めればいいでしょう。
仮想通貨がもっと社会に普及していけば、各企業や団体、地域ごとによるトークンの発行により、複数の小さな経済圏が法定通貨と並び立つような世界になると堀江さん。貨幣経済で生きる人と評価経済で生きる人が二極化していくのではないか? と見ているようだが…もし、その時が来たら、果たして、わたしたちはどちらの経済圏を選択するだろうか
単純な法定通貨の代替に止まらない仮想通貨が普及することで、個々人が持つ「信用」がもっと重要になってくるとみる堀江さん。そして、そんな堀江さんが注目するのは「スマートコントラクト」という仕組みを備えたあの仮想通貨らしい……ということがみえてきた。
また、「ビットコインなどの仮想通貨が日本で爆発的に普及しうるシナリオ」にはトークンエコノミーや共通ポイントサービスがカギを握っていると堀江さんはみているようだ。このあたりについては先日開催された「ホリエモン仮想通貨祭」のレポート第3弾でも紹介しているので、こちらもご参考に。
【参考記事】
●ホリエモン仮想通貨祭(3) カギはあぶく銭&QRコード決済。堀江貴文の仮想通貨大予言とは?
また、「ホリエモン仮想通貨祭」のレポート第1弾、第2弾は以下のとおりだ。こちらもどうぞご覧ください。
【参考記事】
●ホリエモン仮想通貨祭(1) ミスビットコインはナカモトサトシの正体を知っているのか?
●ホリエモン仮想通貨祭(2) 1800倍以上に爆騰したイーサリアムが取り出せなくなった!?
(編集担当:井口稔[ザイFX!編集長]&向井友代[ザイFX!副編集長] 特記以外の撮影:和田佳久 イラスト:西アズナブル)
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