■為替市場は株式市場に比べて動きが小さい…
ムニューシン米財務長官が、日本に対しても為替条項(※)を求めると発言したこともあり、先週(10月15日~)は円高になる可能性がありました。しかし、麻生財務相が「貿易交渉に為替が入ることはない」と発言し、他の日本の要人からも否定する発言が繰り返されたこともあって、米ドル/円は月曜日(10月15日)に111.62円で下げ止まりました。
(※編集部注:「為替条項」とは、貿易における輸出の競争力を高める目的で、為替介入などによって自国通貨安に誘導することを防ぐ取り決めのこと)
【参考記事】
●今週も米ドル/円は戻り売り方針を継続! 111円台前半で止まらず、下げ幅拡大か!?(10月16日、バカラ村)
●ムニューシンの刺激的な発言にも反応薄!? 米ドル/円よりユーロ/米ドルに安心感あり(10月18日、今井雅人)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
海外投資の買いオーダーもあるようで、米ドル/円は底堅い展開が続いていますが、今月(10月)初旬からの株式市場の下落率と比べると、為替市場の下げは穏やかで、その後の反発に関しても、動きは小さいです。
(出所:Bloomberg)
■上海総合指数に連動しやすい豪ドルも小動き
米ドル/円だけでなく、豪ドルに関しても、小動きが続いています。
上海総合指数が下落しましたが、連動して下がりやすい豪ドルは動かず、昨日(10月22日)の上海総合指数の大幅反発に対しても、豪ドルの反応は薄いものとなりました。豪ドル/円は約2週間、80円を挟んだ推移をしています。
【参考記事】
●米中貿易戦争は収まるどころか深刻化…!? 下値余地拡大の豪ドルには戻り売りで臨む!(10月18日、西原宏一)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/円 日足)
豪ドル/米ドルも、0.71ドルを挟んだ小動きが続いています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
■米長期金利上昇で米ドル/円は再び下落しそう
FOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨は、引き続き、段階的に利上げしていくことを示唆しており、米長期金利は今後も上昇していくと思われます。
チャートの方も、米長期金利は、今月(10月)初旬に急騰したこともあって、しばらくは高止まりになると思いますが、以前のレジスタンスだった3.10%台が、今はサポートとなって推移していることもあり、今後も上昇して行く可能性が高そうです。
(出所:Bloomberg)
そして、米長期金利が上昇すると、株式市場は再度、下がることになると思います。
米ドル/円も、今は海外投資の買いで底堅いですが、株式市場が下落するようであれば、米ドル/円も再度、下がることになるのではないかと考えています。
【参考記事】
●日米株の調整は終盤戦。株が大波乱でも米ドル/円の動きはなぜ、限定的なのか?(10月19日、陳満咲杜)
■NYダウは二番底を付けにいく展開へ!?
今年(2018年)2月のVIXショックのとき、株式市場は、最初の急落後、しばらく方向感なく推移し、その約1カ月半後に二番底を付けています。
【参考記事】
●NYダウ、史上最大の暴落にVIX指数の影。ビットコインも真っ青。2日で96%下落って!?
(出所:Bloomberg)
今回も、下げたあとに方向感のない推移をしており、同じように今後、二番底を付けるタイミングがやってくるのではないかと思います。
そのときに、米ドル/円も同じように下がるのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
■欧州通貨は下がる材料が豊富だけど…
欧州通貨に関しては、イタリアの予算問題や、Brexit(英国のEU離脱)協議が12月まで続く可能性、サウジアラビアの記者問題もあって、ユーロ/円や英ポンド/円は、下がる材料が豊富にあります。
英ポンド/円に関しては、要人からは離脱交渉の合意に関して、楽観的な発言が多くなってきていますが、何も進展しているような状況ではありません。合意の最終期限が11月とされていましたが、それが延びていることから、合意なき離脱(※)の思惑も出てくるため、軟調な展開になりやすいと思います。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
【参考記事】
●日本のBrexit報道は正確ではない!? ソフト・ハード・合意なき離脱の違いとは?(9月12日、松崎美子)
●合意なき離脱ならポンドは10~20%下落も。2度目の国民投票は?“クーデター”の噂も!? (9月17日、松崎美子)
(出所:Bloomberg)
ただ、ヘッドラインにも振らされやすい状況のため、トレードのリスクは高くなっています。
ユーロ/円も、材料としては売りのものが多いですが、長期のチャートでは124円台で2度、底を付けており、上値も133円台で止められているため、その間でのレンジが続くことになりそうです。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円の値幅は10円足らず…。このまま小動きに?
全体的に為替市場は小動きですが、長期的にも小動きとなりそうな状況になってきています。
今年(2018年)の米ドル/円やユーロ/円などは、例年と比べて小動きとなっており、米ドル/円は今のところ、104.56円~114.55円と9.99円の値幅です。直近10年の平均では、15円~16円ほど動いています。
(出所:Bloomberg)
75円の大底を付けた2011年のときは、日銀の介入もあって、年間の値幅が10.18円と小動きでしたが、今のところ、それよりも値幅が小さいことになります。
今年は残り2カ月ほどで、このままであれば小動きで終わりそうですが、大きく動くことを期待したいところです。
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