■為替市場の主役は英ポンド。メイ首相に不信任案!?
先週(11月12日~)の為替市場の主役は、英ポンドでした。
11月14日(水)に、英国のEU(欧州連合)離脱協定案の草案が英閣議で承認されると、英ポンドは一時的に上昇しましたが、翌日(15日)に協定案に否定的だった、ラーブEU離脱担当相など4名の閣僚が辞任すると、英ポンド/米ドルは1.2723ドルまで急落しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
メイ英首相の不信任の可能性が高まっていますが、これを求めるには、48人以上の議員の書簡提出が必要となります。英タイムズ紙によると、50人を超える不信任文書が集まったと報道されています。
もし、不信任の採決が行われ、保守党議員の過半数158人以上が賛成すると、その後は解散総選挙となります。
そうなると、EUとの合意が難しくなるため、合意なき離脱(※)の可能性も高まります。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
【参考記事】
●英ポンド急落! メイ首相に不信任案も!? 日銀の関係者がマイナス金利撤廃を提言?(11月16日、今井雅人)
■英ポンドは上値の重い状態が続きそう
Brexit(英国のEU離脱)協議が大詰めを迎えていることもあって、報道も二転三転するような内容が出てきています。
合意する可能性が出てくるようであえば、これまで売られていた分だけ、英ポンドはショートカバーで上昇しますが、今はまだ、合意できるような状況ではなく、英ポンドの上値は、重い状況が続くのではないかと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
■英ポンド/円と米ドル/円の相関性に異変!?
英ポンド/円が下がれば、米ドル/円も相関性から下がるのではないかと思いますが、今年(2018年)に入ってからは、英ポンド/円と米ドル/円の相関性は薄くなっています。
2016年の英国民投票から、Brexit協議が市場のテーマとなっていたこともあり、リスク回避やリスク選好で、英ポンド/円の動きに米ドル/円も連れて動いていました。しかし、チャートで確認すると、英国民投票の前から、相関性の高い動きをしていました。
特に、2015年以降の英ポンド/円と米ドル/円の相関性は、非常に高い状態でした。
(出所:Bloomberg)
2016年11月の米大統領選のときは、米ドル主導の相場展開となったこともあって、一時的に相関性は薄れていました。
ただ、その米ドル高相場が終わると、2017年からは再度、英ポンド/円と米ドル/円の相関性は高まっています。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円は乱高下に無関心!?
それが今年(2018年)に入ってからは、相関性がなくなってきており、英ポンド/円と米ドル/円は、別々の動きをするようになっています。
(出所:Bloomberg)
相関係数で確認すると、今年(2018年)8月頃からは、相関性が戻ってきていますが、1年間で見た場合は、相関性がないという状況です。
これは、M&Aの買いも影響していると思います。また、AI(人工知能)による自動売買プログラムも、相関性に反応しなくなったのではないかと思います。
そのため、Brexit協議の合意の有無で英ポンド/円が乱高下しても、米ドル/円がそれに連れるかどうかは、疑問だと言えます。
■日経平均との相関性もなくなっている
米ドル/円は、英ポンド/円に対してだけでなく、日経平均との相関性もなくなっています。
(出所:Bloomberg)
10月の日経平均急落のときもそうでしたが、今年(2018年)1年間を見ても、米ドル/円と日経平均の相関性は、なくなっています。
相関係数で確認しても、長期も短期も、相関性は見られなくなっています。
■9円幅の下落を演じた昨年と同じ状況に
米ドル/円は、英ポンド/円や日経平均などと、別の動きになる可能性がありますが、チャートでは、昨年(2017年)4月から、114円台で何度も上値を止められています。
(出所:Bloomberg)
CFTC(全米先物取引委員会)が公表するIMM(国際通貨先物市場)ポジション動向では、投機筋の米ドルに対する円の売り越しが、10万枚を超えて、偏った状態となってきています。
※CFTCのデータを基にザイFX!が作成
米ドル/円の水準も、投機筋のポジションの偏りも、昨年(2017年)末と同じような状況になってきています。
【参考記事】
●IMMの円売り越し13.6万枚! この数字が10万枚を越えると米ドル/円は調整しやすい(2017年11月21日、バカラ村)
●IMMの危険水準は円10万枚、ユーロ15万枚、英ポンド10万枚だが、さらに確認すべきは?
■米ドル/円は戻り売りで!
昨年(2017年)の場合、米ドル/円は年が明けてから、9円幅の下落をしましたが、今年(2018年)は、M&Aの買いで、まだ底堅い展開が続いています。
(出所:Bloomberg)
ただ、月末(11月30日~)にG20(20か国・地域首脳会合)もあることから、ポジション調整も出やすい状況ではないかと考えています。
G20や年末に向けて、ボラティリティが高まってくると考えていますが、米ドル/円は114円台のレジスタンスが強いこともあり、戻り売りでのトレードが良いのではないかと考えています。
先月(10月)に、111円台半ばで下げ止まったこともあり、まずはそれがサポートとなるものの、まだ、下値を期待できるのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
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