■クラリダFRB副議長発言で12月米利上げに暗雲
先週金曜日(11月16日)、クラリダFRB(米連邦準備制度理事会)副議長の発言が注目を集めました。
9月に就任したばかりで、なじみのない名前ではありますが、インタビューに答えて、「世界的な景気減速を示唆する証拠はある」、「中立金利に近づいている」とハト派的な発言。
米国債利回りが低下し、米ドル安が進みました。
(出所:Bloomberg)
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クラリダ発言を受けてか、12月の米利上げ織り込みも65%まで低下してきました。先週(11月12日~)まで70%台中盤でしたから、だいぶ下がりましたね。
【参考記事】
●米ドル/円は、また114円台で伸び悩むのか? 何か起こる…!? 原油急落は炭鉱のカナリア?(11月12日、西原宏一&大橋ひろこ)
「米利上げの打ち止め近し」と市場が考え始めているのかもしれませんね。
10月には世界的に株価が下落し、米中間選挙を通過して戻すのかと思いきや、再び下落している状況ですから、「本当に利上げできるのか」と不安になって当然でしょう。
【参考記事】
●米中間選挙後の米国株は下落トレンドに。米ドル/円の上値は115円レベルで限定的か(11月15日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
■ハイテク株がトップアウト!? 完全にベアマーケット入りか
先週(11月12日~)発表された米半導体大手エヌビディアの決算も、次の四半期が減収見通し。10月2日(火)の高値から40%以上の急落となっています。
仮想通貨マイニング向けの需要後退が鮮明なようですね。
【参考記事】
●【超初級】 ビットコイン・仮想通貨入門(5) マイニングとはいったい何をしているのか?
●初めてでもわかる仮想通貨のマイニング(1) マイニングをすれば誰でも簡単に儲かるの?
●初めてでもわかる仮想通貨のマイニング(2) 個人マイナーに人気のある仮想通貨って…!?
●ハイパーニート・ポイン氏はどのように仮想通貨に出会い、億り人になったのか?(10月22日、高城泰)
(出所:Bloomberg)
前回のコラムでご紹介したビットコインキャッシュ(BCH)のハードフォーク(分裂)などを受けて、仮想通貨市場は急落。ビットコイン(BTC)/米ドルは、5000ドル台半ばです。
エヌビディアを取り巻く環境は、なおさら厳しくなっています。
【参考記事】
●米ドル/円は、また114円台で伸び悩むのか? 何か起こる…!? 原油急落は炭鉱のカナリア?(11月12日、西原宏一&大橋ひろこ)
(リアルタイムチャートはこちら → 仮想通貨チャート&レート:ビットコイン/米ドル 日足)
価格低迷で、マイニングは採算分岐レートを割り込んでいるとの見方も出ています。
GAFA銘柄(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)の最後の砦だったアマゾン株も崩れてきましたし、この数年の米株高を牽引してきたハイテク株が、いよいよトップアウトしたのかもしれません。
クラリダFRB副議長が言うように、米金利が中立水準に近いのであれば、米利上げ打ち止めで米株が買われる場面があるかもしれませんが……。
(出所:Bloomberg)
12月に米利上げが見送られれば、一時的に上がるのだろうと思いますが、ハイテク株は完全にベアマーケット入りしたように見えますね。
米株の下落が続くのであれば日経平均も弱いのでしょうし、ひいては米ドル/円も弱いということになります。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
■ゴールドが反発。逆相関になりやすい米ドル/円は弱い?
米ドルと逆相関になりやすいゴールドも、8月16日(木)安値から引いたトレンドラインで、きれいに反発しました。
(出所:Bloomberg)
ゴールドは米ドル/円と逆相関になりやすいですから、ゴールドのじり高が続くのだとすれば、ここからも米ドル/円は弱いということになりますね。
また、これは中期的な話になりますが、米ドル高相場が終わりつつあるのかもしれません。モルガン・スタンレーからも「米ドルの強気相場が終了したのでは」とのコメントが出ています。
(出所:Bloomberg)
日経新聞によると、61カ国の貿易量を踏まえてBIS(国際決済銀行)が算出した米ドルの総合的な価値である名目実効レート(以下、ドルインデックス)が、33年ぶりの高値をつけたそうです。
【参考記事】
●米金利上昇→株下落→円高の可能性小。今後は利上げで株高。ドル/円に上昇余地(11月9日、陳満咲杜)
33年前というと1985年。プラザ合意の年です。その水準まで達するのは、さすがに米ドル高の行き過ぎではないでしょうか。
米金利が低下し、ゴールドがじり高、米株も弱いとなると、ドルインデックスはここから反落する可能性が高いと思います。
■ユーロや英ポンドは先行き不透明。米ドル/円の売りを基本に
米ドル高が転換するのであれば、ユーロ/米ドルでの米ドル売りがよいですか?
ユーロは来年(2019年)後半にも利上げサイクルに入るかもしれませんし、「利上げ打ち止めが間近かもしれない通貨」と「利上げが始まるかもしれない通貨」では方向性の違いが鮮明です。
それはそうなのですが、ユーロ圏ではイタリア予算の混乱が不透明要因。今は、米ドル/円の方が明確だと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
英ポンドは、いかがでしょうか。
先週(11月12日~)は閣僚4人の辞任が相次ぎ、EU(欧州連合)離脱担当相すら政権から離脱してしまいました。メイ英首相への不信任の動きも出てきています。
【参考記事】
●英ポンド急落! メイ首相に不信任案も!? 日銀の関係者がマイナス金利撤廃を提言?(11月16日、今井雅人)
BISのドルインデックスが33年ぶり高値から反落するのなら、英ポンド/米ドルも買われるでしょう。しかし、今の英ポンドはヘッドラインリスクが高過ぎる。手が出せません。
今週(11月19日~)は米金利低下やゴールド高、株安といった背景から考えて、米ドル/円の戻り売りがよいかなと思います。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
(出所:Bloomberg)
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