■英EU離脱案をEUが正式決定! 英議会通過が焦点に
日曜日(11月25日)の夜になり、大ニュースが飛び込んできました。「EU(欧州連合)が、緊急首脳会議で英国が提案したEU離脱案を正式決定」とのことです。
今後は、英国議会を通せるかどうかへ焦点が移行します。EU離脱まで残り4カ月と差し迫り、予断を許さない状況には変わりありません。
議会の反対で修正を迫られたり、ノーディール・ブレグジット(合意なき離脱)となる可能性も残されています。
【参考記事】
●日本のBrexit報道は正確ではない!? ソフト・ハード・合意なき離脱の違いとは?(9月12日、松崎美子)
●合意なき離脱ならポンドは10~20%下落も。2度目の国民投票は? “クーデター”の噂も!?(9月17日、松崎美子)
為替市場の反応は、いかがでしょうか。先週(11月19日~)はメイ英首相の不信任案すら懸念される状況でしたから、一歩前進ということで英ポンド買いになるでしょうか?
【参考記事】
●英ポンド急落! メイ首相に不信任案も!? 日銀の関係者がマイナス金利撤廃を提言?(11月16日、今井雅人)
●反発するゴールドと逆相関の米ドル/円は戻り売り方針! 米ドル高相場は終焉へ!?(11月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
●米ドル/円は9円幅の下落を演じた昨年と同じ状況に!? 111円台半ばの下抜けに期待(11月20日、バカラ村)
英EU離脱案をめぐり、ラーブ英EU離脱担当相など4名の閣僚が辞任したことで不信任案が懸念されたメイ英首相。EUは11月25日(日)の緊急首脳会議で、英国が提案したEU離脱案を正式決定した (C)Matt Cardy/Getty Images News
シドニー時間では、特に大きな反応はありませんでした。ロンドン市場の動きを待ちたいですが、ヘッドラインで乱高下する相場はまだ続くのでしょう。
(出所:Bloomberg)
■衝撃的な原油急落が金融危機の要因に!?
先週(11月19日~)、衝撃的だったのは原油市場。WTI原油は金曜日(11月23日)の深夜に、50ドル割れ寸前まで売り込まれました。
(出所:Bloomberg)
土曜日(11月24日)の早朝と言ってもいい時間での急落でしたが、意外だったのは米国株が思ったほど下げなかったこと。
今週(11月26日~)、改めて材料視され、リスクオフ的な動きが強まるかもしれないですね。
(出所:Bloomberg)
原油急落の原因となったのは、サウジアラビアのファリハ・エネルギー産業鉱物資源相の発言です。
サウジは、11月の原油生産量を過去最高水準に引き上げたと同時に、来年(2019年)1月の原油需要が12月よりも弱含む可能性に言及しています。
発言の真意を測りかねますね。中間選挙前であれば原油下落は選挙対策となりますから、「トランプ米大統領に恩を売るためか」との推測もできます。
しかし、中間選挙が終わった今、原油を下げても株価の下落をもたらすだけだと思うのですが……。
【参考記事】
●イラン「幽霊船」が闇輸出!? 中間選挙は金利急騰に注意。ユーロ/ドルは買い方針!(11月5日、西原宏一&大橋ひろこ)
●米中間選挙後の米国株は下落トレンドに。米ドル/円の上値は115円レベルで限定的か(11月15日、西原宏一)
12月6日(木)にはOPEC(石油輸出国機構)総会が開かれます。ロシアのノバク・エネルギー相は減産に否定的で、OPECとロシアが減産で合意できるのか不透明な状況。
ここで原油価格を下げておくことで、ロシアから減産合意を取り付けやすくする意図がサウジにはあるのかもしれません。
OPEC総会の前には、G20(20カ国・地域首脳会合)もありますね。
G20で急遽、話し合うかもしれませんね。
それに、原油価格がこれだけ下がると懸念されるのがハイイールド債(※)市場への波及。米ドル建てハイイールド債市場は、1割ほどをエネルギーセクターが占めるそうです。
原油価格が下がればデフォルトする債券も増えるでしょうし、米国株だけでなく世界の金融市場をクラッシュさせる要因ともなりかねません。
(※編集部注:「ハイイールド債」とは信用格付が低い代わりに利回りが高い債券のことで、ジャンク債などとも呼ばれる。具体的には格付会社が行う信用格付でBB(ダブルビー)以下の評価をされた債券のこと)
■2019年の予想を織り込む動きに要注意
注目のG20は、11月30日(金)から12月1日(土)までですね。最大の注目点は、通商問題について米中首脳がどのような話し合いを行うのか。
また先日、ハト派的な発言で注目を集めたクラリダFRB(米連邦準備制度理事会)副議長の講演が11月27日(火)22時30分から、翌11月28日(水)26時にはパウエルFRB議長の講演も控えています。
【参考記事】
●反発するゴールドと逆相関の米ドル/円は戻り売り方針! 米ドル高相場は終焉へ!?(11月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
●米ドルは早晩ピークアウトする!? 2019年にかけて、米ドル弱気派が急増するワケは?(11月22日、西原宏一)
ポイントは、クラリダFRB副議長がハト派的な発言を修正するのか、維持するのか、ですね。
中立金利への接近や利上げ打ち止めを示唆する発言が繰り返されれば米ドル安が進むのかもしれませんし、モルガン・スタンレーやゴールドマンサックスは来年(2019年)以降の米ドル安を予想し始めています。
例年、翌年の予想を織り込む動きが年内のうちに出てきますから要注意です。
原油市場の動きから考えると株価は上がりにくいでしょうし、G20を控えてリスク資産を手仕舞う動きも出てきそうですね。
リスクオフが強まれば円高、米ドル高でしょうか。
■オセアニア通貨はセオリーが通用しない!? 米ドルは戻り売りで
リスクオフに関連して注意したいのは、オセアニア通貨の動き。今年(2018年)3月から、米国株が上がってもオセアニア通貨、特に豪ドルは下落トレンドが続いていました。逆に10月以降、世界的に株式市場が急落するとオセアニア通貨は反発しています。
これまでの「リスクオン=オセアニア通貨買い、リスクオフ=オセアニア通貨売り」というセオリーが通用しなくなっています。
ひとつには、米利上げの打ち止めにより米豪金利差が拡大から縮小へと向かうことを織り込みつつあるのかもしれません。
理由は何にせよ、ゲームチェンジが起きている可能性を頭に入れておきたいですね。
(出所:Bloomberg)
今週(11月26日~)の戦略は、どう考えますか?
前回のコラムでもお伝えしたように、日経新聞によると、BIS(国際決済銀行)が算出した米ドルの総合的な価値である名目実効レートは歴史的高水準にあり、米ドル高はトップアウトした可能性が高い。
米ドル安の進行を見込んで、米ドル/円の戻り売りと、ユーロ/米ドルの押し目買いでしょうか。
【参考記事】
●反発するゴールドと逆相関の米ドル/円は戻り売り方針! 米ドル高相場は終焉へ!?(11月19日、西原宏一&大橋ひろこ)
●米ドルは早晩ピークアウトする!? 2019年にかけて、米ドル弱気派が急増するワケは?(11月22日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
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