■パウエル議長は今回の利上げは見送るべきだった?
注目度が高まっていた先週(12月17日~)のFOMC(米連邦公開市場委員会)、予想どおりの利上げとなりました。
【参考記事】
●炭鉱のカナリアが米国株急落を再度警告! 2019年の米ドル/円は105円台に下落か(12月20日、西原宏一)
FOMC直前には利上げ織り込み度が65%程度まで低下していましたが、上げましたね。もうひとつの注目だった来年(2019年)の利上げ予想は3回から2回へと減少と、これも予想どおり。
影響が大きかったのは株式市場で、日経平均は12月19日(水)の2万1000円から2日後には2万円割れ寸前まで急落しています。
(出所:Bloomberg)
先物市場ではすでに2万円を割っていますし、米国株市場も急落。株式市場の反応を見ると、今回は利上げを見送ったほうがよかったのかもしれません。
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長が「市場との対話」に失敗した、ということは盛んに指摘されていますね。
S&P500が過去3カ月、半年、1年で見ていずれも下落している状況での利上げは、1980年以降の76回中たった2回しかないそうです。きわめて異例な状況下での利上げ強行ということですね。
■もしパウエルFRB議長解任なら株高に?
パウエルさんとしても株価がここまで落ちるとは思っていなかったのでしょう。FOMC前、トランプ米大統領は「FRBがさらに利上げを検討するとは信じられない」、「愚かなことだ」と牽制していました。
それに対してパウエルさんが「政治には屈さない」と意固地になってしまったのかもしれないですね。
FOMCで利上げを決定したパウエル議長。トランプ米大統領の牽制発言に意固地になってしまったのかも… (C)Bloomberg/Getty Images News
株安をFRBのせいにできると考えて、あえてパウエルさんを挑発したんじゃないか、なんて邪推もしてしまいますね。
仮に今回利上げを見送って株価が反発したとしても長続きしなかったでしょうし…。
週末には「トランプ氏、利上げ決定後にパウエルFRB議長解任を議論」とのニュースも出てきました。実際に解任に及ぶようなことはないと思いますが…。
パウエル議長解任論はヘッドラインリスクとして今後、頭に入れておきたいですね。「パウエル解任」の憶測が高まった時、市場はどう反応すると思いますか?
パウエルさんが利上げを継続したことで株が売られているわけですから、ロジック的には「パウエル解任→株高」ではないでしょうか。
(出所:Bloomberg)
■外国人の日本国債買い越し額が過去最高に
先週(12月17日~)、もうひとつの注目だったアメリカのつなぎ予算法案は成立せず、週末には国立公園など一部の米政府機関が閉鎖されました。
3度目のことではありますが、これだけ地合いが悪い中だと嫌な感じですね。
実際の生活への影響は少ないでしょうが、たしかに市場環境が悪化していますから軽視はできないですね。
米議会はクリスマス休暇入りしてしまったため、審議再開は12月27日(木)午後の予定です。
気になったのが、外国人投資家の日本国債買いです。12月第1週、外国人投資家は日本国債を1兆7200億円も買い越していました。
統計開始以来、過去最高の買い越し額だそうで、これが円高圧力につながったのではと推測できます。「リスクオフの円高」を証明するひとつの材料となりますね。
(出所:Bloomberg)
先週(12月17日~)の米ドル/円は、一時110.81円まで下がりました。ただ日経平均は10月の2万4448円から4000円以上下げています。
反発があってもおかしくない水準ですから、安値を売らないよう、気をつけたいですね。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
(出所:Bloomberg)
■原油価格50ドル割れ! 価格支配力は米国へ?
先週(12月17日~)は原油市場も急落。心理的な節目だった50ドルを割り込んで、一時45ドル台まで下げています。
(出所:Bloomberg)
技術革新によってアメリカのシェールオイル事業者の採算ラインは30ドル台まで下がっているところもあり、40ドル台でも利益が出ます。OPEC(石油輸出国機構)と非OPECの減産はアメリカの増産でほぼ埋められてしまうでしょう。
アメリカでは来年(2019年)、新たに3本のパイプラインが開通する見込みで、アメリカが石油輸出国となり価格支配力を強めていくものと思われます。
原油価格が下がればインフレ圧力が低下するわけですから、なおさらパウエルさんは利上げを焦らなくてもよかったのではと思ってしまいますね。
それから中国政府は先週(12月17日~)、大規模減税の実施を発表しました。今年(2018年)の中国株は売られっぱなしでしたし、そろそろ上海株が買われる場面があるかもしれません。
(出所:Bloomberg)
反発があったとしても戻り高値は売られるのでしょう。いずれにせよ、来年(2019年)のテーマは「米国経済の失速」となりそうですし、米ドル安の1年になるのではないでしょうか。
株安の勢いが急だっただけに反発には注意が必要ですが、今週(12月24日~)も引き続き米ドル/円の戻りを売っていきたいと思います。
2018年の作戦会議は今日で最後。次回は1月7日(月)に配信予定です。1年間、お読みいただき、ありがとうございました!
2019年もよろしくお願いします。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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