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西原宏一の「ヘッジファンドの思惑」

炭鉱のカナリアが米国株急落を再度警告!
2019年の米ドル/円は105円台に下落か

2018年12月20日(木)16:43公開 (2018年12月20日(木)16:43更新)
西原宏一

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■2018年の米ドル/円の値幅は10円未満…

 みなさん、こんにちは。

 早いもので、本年(2018年)も間もなく終了。

 振り返ってみれば、2018年の為替相場は極めて値動きの少ない展開に終始しました。

 特に、今年(2018年)の米ドル円の値幅は、本稿執筆時で、わずか9.9円。

年間の値幅が10円にも満たない、稀にみる膠着相場で1年を終えそうです。

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 週足

■2016年の大相場が低ボラティリティを演出

 この低ボラティリティを演出したのが、2016年の大相場。

 2016年の為替相場は、6月のBrexit(英国のEU離脱)という歴史的サプライズとなった英国国民投票の結果を受けて、英ポンドが急落。英ポンド/円は2015年の高値から75円も急落しました。

 連れて、米ドル円も急落しました。

 ところが同年11月には、こちらも米大統領選でトランプ氏が勝利をおさめるというサプライズの結果を受け、米ドル円は急騰。

 年末までの1カ月強で約18円も急騰するといった大相場を演じました。

【参考記事】
ザイFX!で2016年を振り返ろう!(1) 英国がEU離脱! 英ポンドは二度死ぬ!?
ザイFX!で2016年を振り返ろう!(2) トランプ氏当選でまさかのリスクオン到来!

 さすがに、これだけ短期間にBrexitとトランプ米大統領の誕生という歴史的に重要なイベントで乱高下した為替相場はその後、方向性に欠け、ボラティリティが低下。

 為替市場全体のボラティリティの低下に伴い、米ドル/円の値幅も徐々に狭くなり、2018年の米ドル/円は、年間の値幅が10円にも到達しないという、稀にみる膠着相場に陥っています。

米ドル/円 月足
米ドル/円 月足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足

■2019年の米ドル/円相場は大きな動きを予想

 こうした値動きの乏しいマーケットは、多くのトレーダーの収益を圧迫します。

 しかし、唯一の例外は、オプショントレーダー。

 金融機関のオプショントレーダーは、方向性だけではなく、ボラティリティに対してトレードを行います。

 つまり、今年(2018年)の米ドル/円のように、相場がレンジに陥り始めると、彼らは「さらに米ドル/円相場が膠着すること」にリスクを傾けます

 結果、今年(2018年)の米ドル/円のように、終始相場が動かなくなると、膠着することに賭けた彼らの収益力は極めて高いものになります。

米ドル/円 月足
米ドル/円 月足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 月足

 しかし、オプショントレーダーにとって収益力の高い、膠着相場が長期に渡って続くことはありません。

 それは、2016年に大きな値幅を伴い、多くの為替トレーダーに多大な収益をもたらした相場が長く続かなかったことと同様です。

 つまり、彼らは、膠着相場を見込んでオプションを売っているわけですが、実際に少しずつマーケットが動意を見せ始めると、売ったオプションを一気に買い戻さないといけないことになります。

 結果、オプションの買い戻し、巻き戻しの動きが始まると、為替市場では突如、ボラティリティが急騰し、米ドル/円も一転して明確な方向性を見せ始めることになります。

 こうした流れから、過去2年間の膠着相場を経て、2019年の米ドル/円相場は大きく変動することが予想されます。

■米ドル/円相場のカギを握るのはFOMC

 では、米ドル/円が大きく調整するきっかけは何かを探ってみます。

 そのカギを握るのが、FOMC(米連邦公開市場委員会)

過去数年間に渡って米ドルの底堅さを演出してきたのは、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げです。

 その利上げが、まだ継続中であるというのが、11月中旬までのマーケットのコンセンサスであり、その意味において、米ドルはさらに続伸するのではないかという意見が大半でした。

 逆説的にいえば、FRBが政策金利を中立と判断した局面で、米ドルは続伸する理由を失い、ピークアウトするとも言えます。

 そして、今年(2018年)最後のイベントとして、マーケットの注目を集めたFOMCの結果が、日本時間本日(12月20日)未明に公表されました。

 まず、FF金利(※)誘導目標を2.25-2.50%のレンジへ引き上げました。

(※編集部注:「FF金利」とは、フェデラルファンド金利のことで、FFレートとも呼ばれる。米国の政策金利)

米政策金利の推移

(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)

 そして、2019年の利上げ見通しは、前回予測の3回から2回に減少

【参考記事】
ハト派色強いFOMCなら米ドル/円は売り! 「黄色いベスト運動」で欧州が景気減速!?(12月17日、西原宏一&大橋ひろこ)

2019年12月FOMCで公開されたドットチャート
2019年12月FOMCで公開されたドットチャート

(出所:FRB)

 これは、ほぼ大方のマーケットの予想通りです。

 ただ、一部のマーケット参加者は、もう少しハト派的なものを期待していたため、一時米ドルは買い戻される展開に。

■パウエル議長の声明は、ややタカ派的な内容に

 次に、注目のパウエル議長の声明ですが、トランプ大統領のツイートに対しても一言、加えています。

 まず、今回の決定で中立金利の「下方レンジに到達した」と指摘。

【参考記事】
保守党の不信任投票を乗り切ったメイ首相。再び問題山積みのBrexit交渉最前線へ…(12月13日、西原宏一)

 そして、さらなる利上げについては「不確実性が相当に高い」とコメント。

 最後に、金融政策に政治は「一切影響しない」とし、「我々が正しいと考える行動を止めるものは何もない」と言い放ちました。

パウエル議長は声明で、今回の決定で中立金利の下方レンジに到達したと指摘。さらに、金融政策に政治は一切影響しないと言い放った (C)Bloomberg/Getty Images News

パウエル議長は声明で、今回の決定で中立金利の下方レンジに到達したと指摘。さらに、金融政策に政治は一切影響しないと言い放った (C)Bloomberg/Getty Images News

 これは、トランプ大統領に対する反撃。

 FOMCを控えて、トランプ大統領は、米金融当局に対し、「相場を感じ、相場の流動性をこれ以上引き締めるべきではない」と主張。「米金融当局は休止すべき時」と題したウォール・ストリート・ジャーナルの社説を読むべきだともコメント。

 トランプ大統領のほかにも、ドラッケンミラー氏(※1)やガンドラック氏(※2)も利上げも見送るべきとの見解を示していました。

(※1編集部注:ドラッケンミラー氏は、ヘッジファンドのファンドマネジャーとして、長年に渡って高い収益を上げてきた人。1992年にはジョージ・ソロス氏の片腕として、英ポンドを売り浴びせ、英国を欧州通貨制度(ERM)から離脱させて、10億ドル以上を稼ぎ出したと言われている)

(※2編集部注:「ジェフリー・ガンドラック氏」は、米国の資産運用会社「ダブルライン・キャピタル」の共同創業者。世界的に有名なファンドマネージャーで「債券王」の異名を持つビル・グロス氏に代わり、「新債券王」として市場の注目を集めている)

 ただ、声明文においては、タカ派的なトーンではあるものの、今回の決定で中立金利の「下方レンジに到達した」と指摘していることから、さらなる追加利上げの確率は低下しています。

■「炭鉱のカナリア」が米国株続落を再び警告

 金利先物市場のトレーダーが織り込む2019年の利上げ幅は、0.25%の半分にも満たない状況。

 FOMCの発表後、一時的に米ドル/円が反発していますが、上値は限定的。

米ドル/円 1時間足

米ドル/円 1時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足

 その要因は、米国株の下落です。

 今週(12月17日~)に入って、米国株の下落は極めて鮮明に。

 注目のFOMCでも株の下落を止められず、FOMC後のパウエル議長の会見中に下げ足を早めた展開です。

 米国株の中で注目は、ラッセル2000

10月11日のコラムで、ラッセル2000が「炭鉱のカナリア」として米国株の急落を示唆していることをご紹介させていただきました。

【参考記事】
「炭鉱のカナリア」が米国株急落を警告!? 米ドル/円、クロス円の続落に警戒必要!(10月11日、西原宏一)

米中小型株の軟調、米景気減速伝える炭鉱のカナリアか

10月に入って米中小型株の株価指数であるラッセル2000が下げ足を速め、8月末の高値から一時5.7%下落した。

S&P500で割ったレシオも6月をピークに、2日には一時8%余り低下。GDPとの相関も高い同レシオの下落は、これから年末にかけての米景気減速を示している可能性もある。

出所:Bloomberg

 実際、10月の米国株は、大きな値幅を伴って急落。

 そして、今回、ラッセル2000が主要3指数に先立って、直近高値から20%以上急落し、下落相場入りを示唆しています。

ラッセル2000 日足
ラッセル2000 日足

(出所:Bloomberg)

当コラムで何度かご紹介させていただいてるように、NYダウはブルトラップとダブルトップを形成し、調整中。

【参考記事】
米国株急落はヘッジファンドの思惑どおり! 米中間選挙のシナリオと相場の反応を予想(11月1日、西原宏一)

 よって、今回のFOMCでも米国株の下落は止められず、ラッセル2000が示唆するように米国株が続落すれば、米ドル/円の上値を抑える展開に。

 米国株の下落に伴って米10年債利回りは2.800%を割り込み、一時2.7477%まで下落しており、こちらも米ドル/円を押し下げる要因に。

米長期金利(米10年国債利回り)
米長期金利(米10年国債利回り)

(出所:Bloomberg)

■2019年の米ドル/円は、再び105円台へ

 2016年に、Brexitと米大統領選という2大イベントにより乱高下した相場の反発で、過去2年間、膠着した米ドル/円。

 一転して、2019年の米ドル/円はボラティリティの反動が期待できますが、米国の中立金利が迫っていることと、米国株の反落が顕著になったことで、ボラティリティが高まる米ドル/円の方向はダウンサイド

 2019年の米ドル/円は、再び105円台へと下落するのではないでしょうか?

米ドル/円 週足
米ドル/円 週足

(出所:Bloomberg)

 ボラティリティの反発を伴って下落基調が徐々に鮮明になりつつある、米ドル/円相場に注目です。


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