■米中貿易戦争は、まだ合意するような状況ではない
米中の貿易戦争は継続しており、6月1日(土)には中国が、600億ドル相当の米国製品に対する報復関税を発動しました。
これに関しては、すでに織り込まれていることもあって、相場への反応はなかったですが、先週(5月27日~)はレアアースに関しても、輸出制限をするのではないかという報道もあり、米中の対立は激化しています。
6月末のG20(20カ国・地域)大阪サミットで、合意するのではないかという楽観的な見解もありますが、株式市場が急落しているようであれば、その可能性もありますが、今の段階ではまだ、合意するような状況ではないように思います。
【参考記事】
●買われやすい通貨と売られやすい通貨は? ユーロ/英ポンドが0.90ポンド台へ上昇中!?(5月28日、バカラ村)
●株価が崩れなければ米中貿易摩擦は継続。米ドル/円は、まだ戻り売りで良さそう(5月21日、バカラ村)
●米ドル高でも米ドル/円は、なぜ上昇しない? 米中貿易交渉に中国が秘密兵器を投入!?(5月30日、今井雅人)
(出所:Bloomberg)
■今度はメキシコ! 相場を動かすトランプ大統領
5月31日(金)には、トランプ大統領はメキシコに対しても、関税導入を示唆する発言を行いました。
....at which time the Tariffs will be removed. Details from the White House to follow.
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年5月30日
「6月10日(月)から、5%の関税をかける」、「25%に達するまで引き上げる」と発言したことで、リスク回避の動きとなり、株安・円高に推移しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
これは、不法移民問題の解決に、進展がないことからの対応となります。
米国内では、トランプ大統領の中国への圧力は支持されていますが、メキシコへの関税に関しては、全米商工会議所などの産業界やクドローNEC(国家経済会議)委員長なども反対しており、共和党内からも反対意見が多数、出てきているようです。
ゴールデンウィーク後半の、トランプ大統領の中国への発言から、米国株は下落が始まり、メキシコへの関税の導入を示唆する発言で、さらに下落していることもあって、トランプ大統領の発言だけで相場は動いていることになります。
もし、メキシコへの関税の導入を撤回するような発言が出れば、リスク回避の動きも反転することになります。
【参考記事】
●トランプの対メキシコ関税ツイートで株もドル/円も下落。でも、これならかわいい方!?(5月31日、陳満咲杜)
■市場は年内2回の利下げを織り込み!?
昨年(2018年)後半から、米長期金利が低下してきていますが、その下げがさらに加速し、現在、2.1%付近まで低下してきています。
(出所:Bloomberg)
貿易戦争や逆イールドからの景気後退懸念などで、株式市場の資金が債券市場に流れ、それが米長期金利を低下させていることになります。
【参考記事】
●米国債の逆イールドはリセッションを警告! 米ドル/円は中期的に100円目指す展開も(5月30日、西原宏一)
CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFEDウォッチによると、年内に2回以上の利下げが行われる確率が、約80%まで上がってきています。
(出所:CME)
FOMC(米連邦公開市場委員会)で利下げが行われるとすると、9月と12月の可能性が高くなってきています。
パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は、前回のFOMCでは中立の発言をしていましたが、市場は利下げを催促しているような状況です。
そのため、今後、利下げへの言及があると思いますので、パウエル議長の発言は、注目されることになります。
■パウエル発言に注目! 利下げ示唆なら相場は落ち着く!?
今週(6月3日~)は、4日(火)~5日(水)に、FRBの金融政策の骨組みを見直す討論会が予定されており、パウエル議長の講演もあります。さらに、6月8日(土)~9日(日)は、福岡でG20財務相・中央銀行総裁会議もあります。
パウエル議長から利下げ発言があれば、株式市場の下落もいったん、落ち着くのではないかと思います。
パウエル議長から利下げを示唆する発言があれば、株式市場もいったん落ち着くというのがバカラ村氏の見方 (C)Bloomberg/Getty Images News
まだ利下げへの発言がなかったとしても、6月18日(火)~19日(水)にはFOMCもあるため、その頃にはリスク回避の動きも、ひと相場が終わっているのではないかと思います。
■リスク回避から米ドル安の動きに!?
IMM(国際通貨先物市場)における投機筋のポジションを見ると、まだ米ドルに対するユーロ売り越しは、約10万枚のままで偏っています。
※CFTCのデータを基にザイFX!が作成
ユーロ売りが多いことや、FRBが利下げに動くと思うので、米ドル安にもなりやすいことから、ユーロ/米ドルの下降トレンドは、終わるのではないかと考えています。
【参考記事】
●買われやすい通貨と売られやすい通貨は? ユーロ/英ポンドが0.90ポンド台へ上昇中!?(5月28日、バカラ村)
ユーロ/米ドルは、1.11ドルが3度、サポートされており、戻り高値の1.1215ドルも超えてきています。
1.1260ドルにレジスタンスもあり、積極的に買うような材料は、まだ出てきていませんが、下を固めながら、1.15ドルに向けて上昇するのではないかと思います。
(出所:Bloomberg)
リスク回避の動きから、米ドル安への動きに変わってくるのではないかと思います。
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