トルコリラ/円が最大約11.6%の急落!
週末のうちに、にわかに激しくなった米中関税報復合戦を受け、週明け、8月26日(月)は円全面高で始まった外国為替市場だったが、そのような米中関税云々だけでは説明し切れないような異常な急落がトルコリラ/円で起こったことは、以下の記事で先日お伝えしたとおりだ。
【参考記事】
●おはぎゃ~の原因はトランプではない!?午前7時台はトルコリラの“魔の時間帯”か
なにしろ、トルコリラ/円の本格的な急落は取引開始と同時ではなく、しばらく経ってから起こっており、ごく短期間に起こった出来事だというのに、その下落率は前週末と比べ、最大約11.6%にも達していたのである。
ちなみにトルコ出身のストラテジスト、エミン・ユルマズさんは8月28日に公開した記事内でこの出来事について、「これはいわゆるフラッシュクラッシュと言われるような動きで、出来高が薄い市場でのポジション調整などによるものだと予想されます」とコメントしている。
【参考記事】
●8月26日早朝、トルコリラが急落したワケは? 米中貿易交渉次第で対円は17円台前半も…(エミン・ユルマズ)
このトルコリラ急落のとき、各FX会社のスプレッドはどうなっていたのだろうか? レート配信が止まるようなことはなかったのだろうか?
ザイFX!では、それらのことをリアルタイムでウォッチすることまではできていなかった。けれど、各社の1分足チャートを詳しく調べることで、ある程度のことがわかった。
本記事ではトルコリラ/円を扱っている主要FX口座について、そのようなやり方で今回の急落時の状況を調査した結果をお伝えしたい。
チャート上に大きな空間。それが意味するものは?
まず、以下のチャートをご覧ください。
こちらは8月26日(月)午前7時25分前後のマネーパートナーズ「パートナーズFX」におけるトルコリラ/円1分足チャートだ。
(出所:マネーパートナーズ)
チャート上に大きな空間が空いてしまっていることが、急落の激しさを物語る……ように思える。
では、以下のチャートはどうだろうか。これも8月26日(月)午前7時25分前後のトルコリラ/円1分足チャートだ。こちらはSBI FXトレードのチャートとなっている。
(出所:SBI FXトレード)
上のチャートでは、午前7時25分以降、ローソク足の長さが非常に長くなったり、陰線と陽線が入り乱れたりしており、やはり、相場変動の激しさが感じられる。ただ、マネーパートナーズのチャートとは結構、形が違っているのも確かだ。
実はマネーパートナーズのチャートには、この急落がクライマックスとなる近辺で存在しないローソク足があるのだ。午前7時27分、午前7時29分、午前7時30分の足である。また、午前7時28分の足は始値、高値、安値、終値がすべて同じ「一本線」と呼ばれる足になっている。
残された1分足チャートから見る限り、このときのマネーパートナーズのトルコリラ/円はレート配信が停止し、取引することが困難な期間があったと推測されるのだ。
一方、SBI FXトレードの1分足チャートは動きは激しいが、存在しない足はなく、すべての1分足が存在していた。1分よりも短い期間において、レート配信停止のようなことが一時的にでも起こっていなかったかは何とも言えないが、この1分足を見る限り、異常な市場環境の中でもSBI FXトレードはレート配信を続けていたのではないかと推測できる。
SBI FXトレードは相場急変の非常時にも強いFX会社として、ザイFX!でも何度も紹介してきた会社。だから、こうした結果は頷けるところだ。
【参考記事】
●イケダハヤト氏も知らない、トルコショックでもスプレッドが拡がらなかったFX口座とは?(2018年8月15日)
1分足のローソク足が欠損しているFX口座がある
話が少し先走ってしまったが、今回、トルコリラ/円急落時の状況を調査したFX口座を改めて紹介しておくと、
・トレイダーズ証券「みんなのFX」
・IG証券「標準」
・サクソバンク証券「スタンダードコース」
・ヒロセ通商「LION FX」
・外為どっとコム「外貨ネクストネオ」
・SBI FXトレード
・マネーパートナーズ「パートナーズFX」
・GMOクリック証券「FXネオ」
・岡三オンライン証券(くりっく365)
以上の全9口座となる。言うまでもなく、すべてトルコリラ/円の取扱いがあるFX口座だ。
●FX会社おすすめ比較:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ!
これらの口座について、トルコリラ/円の動きが著しく激しかった8月26日(月)午前7時25分~7時33分の1分足を調べてみたのである。
このうち、存在しない1分足があるかどうか、存在しない1分足があるとしたらそれは何本か、ということをまず調べて、まとめたのが以下の表だ。
トルコリラ/円の1分足が存在しなかった本数
(8月26日(月)午前7時25分~7時33分)
FX会社 「サービス名」 |
本数 |
トレイダーズ証券 「みんなのFX」 |
なし |
サクソバンク証券 「スタンダードコース」 |
なし |
外為どっとコム 「外貨ネクストネオ」 |
なし |
SBI FXトレード | なし |
IG証券 「標準」 |
2本 |
岡三オンライン証券 (くりっく365) |
2本 |
マネーパートナーズ 「パートナーズFX」 |
3本 |
ヒロセ通商 「LION FX」 |
5本 |
GMOクリック証券 「FXネオ」 |
5本 |
トレイダーズ証券「みんなのFX」、サクソバンク証券「スタンダードコース」、外為どっとコム「外貨ネクストネオ」、SBI FXトレードは存在しない1分足がなかった。これらの4口座は異常な市場環境の中でもレート配信が継続されていたものと推測される。
一方、上表のIG証券「標準」以下の5口座は2~5本のローソク足が欠損しており、その間はレート配信ができていなかったのではないかと推測される。
通常時の最狭水準は1.7銭原則固定だが、どこまで拡大?
次にスプレッドについてはどうだろう。
現在、通常時のトルコリラ/円は1.7銭原則固定というのが業界最狭水準のスプレッド。
GMOクリック証券「FXネオ」、トレイダーズ証券「みんなのFX」、ヒロセ通商「LION FX」、外為どっとコム「外貨ネクストネオ」などが1.7銭原則固定というスプレッドを提供している。
ただ、今回のようなこれだけの急落が起きた際は、1.7銭のような通常時の数値よりも、かなりスプレッドは拡大することになるだろう。それ自体は仕方がないと思えるが、では実際、各FX口座のスプレッドはどの程度、拡がっていたのか?
8月26日(月)午前7時25分~7時33分の期間、調査対象となったFX口座のトルコリラ/円、各1分足の始値のBIDとASKの差(スプレッド)を調べてみた。
(※この場合の「BID」とはFX会社側から見た買い値のこと。投資家側から見ると売り値になる。また、「ASK」はその逆で、FX会社側から見た売り値であり、投資家側から見た買い値のこと)
ただ、この調査をできなかった口座が2つあることはまずお断りしなければならない。
それはトレイダーズ証券「みんなのFX」と岡三オンライン証券(くりっく365)だ。この2口座ではBIDとASKのそれぞれについてチャートを表示することができず、片方しか表示できないため、各1分足の始値についてスプレッドを調べることがそもそもできなかったのだ。
最大116銭までスプレッドが拡大していた口座も…
午前7時25分~7時33分という調査期間内の1分足がすべて存在し、なおかつスプレッドの調査も可能だった3口座について、調査期間内のスプレッドの推移を示したのが以下のグラフだ。
想定したとおり、今回のような急変時には、各口座でスプレッドが拡大していた。SBI FXトレードで最大20銭、外為どっとコム「外貨ネクストネオ」で最大50銭、サクソバンク証券「スタンダードコース」では最大116銭までスプレッドが拡大していたのである。
サクソバンク証券「スタンダードコース」のスプレッドは原則固定制ではなく、変動制となっていることもあってか、スプレッドの拡大幅が一際大きかった。非常時に取引することがあったら、かなり注意した方が良さそうだ。
また、SBI FXトレードのスプレッドは取引量によって変化し、さらにその方式が最近、頻繁に変更されている。
SBI FXトレードのスプレッドは現在、取引量によって原則固定制と変動制が混じった方式になっているが、筆者の見たところ、チャートからわかるスプレッドは「1001通貨~100万通貨」という取引する人がもっとも多いと思われる区分についてのものと思われた。
SBI FXトレードが発表しているデータによると、2019年8月1日(木)6時00分~2019年8月17日(土)5時30分の「トルコリラ/円、1001通貨~100万通貨」のスプレッドは1.89銭~8.80銭の間に収まっていたとのこと。
また、スプレッド下限の1.89銭が提示されていた時間は全体の97.56%だったということで、これは通常のFX口座の原則固定スプレッド並みに高い提示率だ。
ただ、先ほど示したグラフのとおり、さすがに今回の急落時にはスプレッドが少なくとも20銭まで拡大していたようだ。スプレッドは上記の8月1日~8月17日に計測された数値以上に拡がったことになる。
ただ、以下に再掲載したグラフ内の3社で比較すると、SBI FXトレードのスプレッドが一番安定していて、相対的に狭かったことがわかる。
スプレッド拡大は限定的もレート配信休止期間が長い?
次に調査期間内のスプレッドが調査可能な口座のうち、調査期間内に存在しないローソク足がある4口座についてスプレッドの推移をまとめたものが以下のグラフだ。
ローソク足が存在しない期間があるため、ちょっとさびしいグラフとなっている。ポッカリ空いた空間から、午前7時27分~7時29分あたりの動きがとりわけ激しかったのだろう、ということが感じられる。
この中でGMOクリック証券「FXネオ」は最大15銭までしかスプレッドが拡大しておらず、この中では一番踏ん張って、スプレッドの拡大幅が狭かった口座ということになる。
ただ、その一方、調査期間内において5本の1分足が存在しておらず、ローソク足欠損本数はヒロセ通商「LION FX」と並んで最多となっている。
GMOクリック証券「FXネオ」はスプレッドが大きく拡がりすぎてしまうぐらいなら、レート配信は休止するという方針なのだろうか?
SBI FXトレードのスプレッドは比較的安定
最後に調査期間内のローソク足がすべて存在している口座も、存在しないローソク足がある口座もまとめてスプレッドの推移を表示してみたのが以下のグラフだ。
がんばってレート配信は続けているものの、変動制スプレッドだけに大きく拡大することがあるサクソバンク証券の青いグラフが目立っている。一方、緑のグラフのSBI FXトレードはこの中ではかなり安定していることが改めてわかる。
なお、SBI FXトレードはわずか1通貨から取引できることも大きな特長の1つ。トルコリラ/円も、もちろん1通貨から取引できる。「相場急変時にトレードしてみたいけれど、リスクが高いなぁ~」と思っている人でも、SBI FXトレードなら、取引量を超少額に絞って、参戦してみるようなことができるのだ。
以上、8月26日(月)午前7時台に起こったトルコリラ/円急落時のレート配信状況、スプレッドの状況を、残された1分足チャートから推測してお伝えした。次回、トルコリラ/円が急落した際の参考にしていただけるだろうか。また、そういった非常時に備え、今から良さそうなFX口座を開設しておくのもいいかもしれない。
●FX会社おすすめ比較:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ!
(文/ザイFX!編集長・井口稔 編集協力/ザイFX!編集部・庄司正高、堀之内智)
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