おはぎゃ~相場の中、トルコリラ/円だけ動きが違う!?
2019年8月26日(月)、週明けの金融市場が円高・株安のリスクオフの展開になることは多くのトレーダーが予想していただろう。
前週末の8月23日(金)、中国が米国に対する報復関税を発表すると、その後、トランプ米大統領が対抗措置の発表を予告。米国株は暴落し、円全面高となった。さらに、中国に対する関税率の引き上げが具体的に発表されたのはNY市場が終わったあとだった。
【参考記事】
●1月のフラッシュクラッシュとの違いは何? ドル/円は窓を埋めたが中期的には101円へ!(西原宏一&大橋ひろこ、2019年8月26日)
だから、月曜朝はいわゆる「おはぎゃ~」(※)の展開となり、円絡みの通貨ペアは下窓を開けて取引スタートとなったわけだが、今回は「まあ、そうなるよね」とある程度、覚悟のできた「おはぎゃ~」ではなかったかと思える。
(※「おはよう」と「ぎゃ~」を組み合わせた造語。夜寝たときと比べ、朝起きたときに相場が自分にとって不利な方向へ大きく動いたときに使われるネット上の俗語。掲示板やツイッターなどでよく見られる。株安・円高などリスクオフ方向へ大きく動いたときに使われることが多い。「おはぎゃーーーーーーー」「おはぎゃああああああああぁ」など、語尾はいろいろ変化する)
そんな中、高金利通貨として根強い人気を誇るトルコリラも月曜朝に派手に暴落していた。「まあ、そうなるよね」と筆者も思っていたので、その動きを横目で見ても、最初は格別の驚きもなかったのだが、横目ではなく、よくよくジッと見てみたら、ちょっと奇妙な点が見えてきた。
以下は円絡みの4通貨ペアの1時間足チャートだが、いずれもある程度の下窓を開けて取引が開始されたあと、窓を埋めるように反発する動きが出ていることがわかる。ただ、トルコリラ/円だけは下窓ができたあとに、さらに大きく急落し、長い長い下ヒゲを作っている。トルコリラ/円は大きく下落してから反発した点では他の通貨ペアと同じだが、その過程はよく見ると違っていたのだ。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨 vs 円 1時間足)
トルコリラ/円の本当の急落は7時25分頃から起こっていた
このことをもう少し詳しく見てみよう。
以下のチャートはSBI FXトレードのBID(※)のトルコリラ/円1分足チャートだが、7時の取引開始のとき、確かに下窓が開いている。前週末の終値が18.2888円、週初の始値が18.0860円だったので、約20銭ほどのトルコリラ安・円高だ。
これが前週末の米中関税報復合戦の影響を織り込んでリスクオフとなった分と言えるのだろう。
(※この場合の「BID」とはFX会社側から見た買い値のこと。投資家側から見ると売り値になる)
(出所:SBI FXトレード)
それ以降はしばらく小動きが続いたが、米中関税報復合戦による下窓がかわいいものと思えるようなダイナミックな動きが起こってくるのは7時25分頃からだ。とりわけ7時26分には非常に長い大陰線が刻まれた。そして、このSBI FXトレードの1分足チャートでは7時29分に16.1614円の最安値をつけている。
わずか5分ほどで約1.8円、約10.1%の急落だ。前週末終値を基準に計算すれば、約2.1円、約11.6%の急落となる。
ストップロス注文や強制ロスカットが急落の原因か?
これについてブルームバーグは以下のとおり、個人投資家の損切りが原因ではないか…と報じていた。
トルコ・リラが対円で一時12%急落-個人投資家の損切りか
アジア時間26日の取引で、トルコ・リラが対円で12%急落する場面があった。新興国通貨の取引でリラ・円は日本の個人投資家の間で最も人気のあるペアの一つだが、投資家が損切りによるポジション解消を余儀なくされたのは今年2度目。
リラはこの日、下落して始まっていたが、外国為替証拠金(FX)取引業者が顧客ポジションの強制ロスカットの執行を通常開始する日本時間7時20分ごろに加速した。
(出所:ブルームバーグ)
このトルコリラ/円急落は18円という大台を割り込んだ直後に起こっている。
また、2019年1月3日(木)に起きたフラッシュクラッシュ時のトルコリラ/円安値は動きが激しすぎたため、FX会社によってかなりまちまちなレートとなっているが、くりっく365のBIDではおおよそ18円近辺だった。
そしてその後、5月9日(木)につけたトルコリラ/円の年初来安値はおおよそ17.50円近辺だ。
(出所:インヴァスト証券(くりっく365))
フラッシュクラッシュ時の安値割れであり、大台割れにもなる18円の少し下や、年初来安値となる17.50円の少し下の水準には日本の個人投資家のストップロス注文が多く並んでいても不思議ではなさそうだ。
そして、まったくの想像だが、投機筋がそういったことを見越して売り崩すようなこともあったかもしれない。さらにそうした急落によって、強制ロスカットされるポジションも数多くあったことも考えられそうだ。
トルコリラ/円の急落には似たパターンが多い
トルコリラ/円の急落はときどき発生しており、もはや外国為替市場における風物詩の1つ(!?)と言えるかもしれない。そして、その発生の時間帯や値動きのパターンはある程度、似ていることが多いようにも思える。
以下の2つの記事でまとめているトルコリラ/円急落は2017年10月9日(月)に起こったもの。この日は月曜日で日本が祝日だった。
【参考記事】
●衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!?のかも…(1)(2017年10月25日)
●衝撃の13分間。崩れ落ちたトルコリラ/円の真相とは? 暴落の震源地は日本にあった!?のかも…(2)(2017年11月1日)
このとき、トルコリラにとってネガティブなニュースは日本のFX会社で取引が始まる前に出ていたが、開いた下窓は限定的。そして、午前7時4分頃から本格的な急落が始まっていた。
2018年5月23日(水)に起こったトルコリラ/円急落は以下の記事にまとめている。このときは月曜日ではなく、平日の水曜日。ただ、急落は午前7時7分頃から起こっており、似た時間帯だった。
【参考記事】
●【謎】トルコリラが半年間に2回も朝7時すぎ~7時10分すぎに急落したのはなぜか?(2018年5月25日)
2019年1月3日(木)に起こったフラッシュ・クラッシュはトルコリラだけの話でなく、米ドル/円なども大きく急落したため、そちらの印象が強いが、以下の記事では実はトルコリラ/円の急落が先導して起きていたことをまとめている。
このとき、トルコリラ/円が急落し始めたのは午前7時23分頃からのことだった。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュの真犯人はトルコリラ!? クラッシュ時もスプレッドが優秀なFX会社は?(2019年1月17日)
日本時間午前7時台はトルコリラにとって“魔の時間帯”か
今回よりも前に起こっていた以上3つの例では、トルコリラ/円はいずれも午前7時台に激しく急落していたことがわかる。日本時間の午前7時台はトルコリラにとって“魔の時間帯”なのかもしれない。
なお、2018年8月に起こったいわゆる“トルコショック”は一際規模の大きいトルコリラ暴落だったが、これは日本時間の午後から急落が始まっていて、2営業日ほどかけて大きく下がったものだった。このときは急落開始が午前7時台ではなかった、ということだ。
【参考記事】
●トルコリラ/円が一時、16円台まで暴落! トルコリラ急落の震源地はユーロか!?(2018年08月10日)
●トルコリラ/円は一時15円台まで大幅続落! 原因はトランプとエルドアンの両大統領!?(2018年8月13日)
●8分間の暴落! トルコショックで何が…!? トルコリラのロスカット未収金の規模は?(2018年9月29日)
“トルコショック”のときはパターンが違っていたものの、これだけ日本時間午前7時台に比較的決まったパターンでトルコリラ/円相場が動くのなら、リスクはあるかもしれないが、このようなときに売りでも買いでもトルコリラ/円をトレードしてみたくなる人もいるのではないだろうか。
ただ、相場が急変しているだけに、レート配信が止まったり、スプレッドがあまりにも拡がりすぎたりしたら問題だ。そのような非常時に適したFX口座はどこなのだろうか? それについて調査した点は別記事にて、また紹介したい。
(「トルコリラ/円急落時の各社スプレッドを徹底調査! ローソク足が欠損している例も!?」へつづく)
●FX会社おすすめ比較:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ!
(文/ザイFX!編集長・井口稔 編集協力/ザイFX!編集部・庄司正高)
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