■8月26日早朝、トルコリラが瞬間的に急落
週明け(8月26日)のトルコリラは、対米ドル・対円で瞬間的に大きな下げに見舞われました。約15%の下落が一気に起きましたが、その後、反発しました。
【参考記事】
●おはぎゃ~の原因はトランプではない!? 午前7時台はトルコリラの“魔の時間帯”か
(出所:Bloomberg)
※通常は「米ドル/トルコリラ」ですが、トルコリラの下落をわかりやすくするため、「トルコリラ/米ドル」のチャートを掲載しています。
(出所:Bloomberg)
これはいわゆるフラッシュクラッシュと言われるような動きで、出来高が薄い市場でのポジション調整などによるものだと予想されます。
実は、トルコ国内の投資家のセンチメントは週末に悪化していました。エルドアン大統領は、8月25日(日)に行った演説で「イスタンブールをテロ組織に任せることはできない」と発言しました。
トルコのメディアの一部は、この演説を受けて「イスタンブール市長の解任は近づいている」と報道しました。これが投資家センチメントを悪化させた可能性があります。
イスタンブール市長選挙のやり直しでは、野党候補であったイマモール現市長が圧勝しましたが、同じように圧勝した東部三都市のクルド人市長が解任されています。
【参考記事】
●米国と関係改善で、次の懸念はロシア…。トルコリラが大幅下落している理由とは?(8月21日、エミン・ユルマズ)
この事件を受け、選挙後に落ち着いていたトルコの政治不安が再び高まりました。イマモール市長が解任されることになれば、事態が大規模な反政権デモに発展する可能性があり、それが国内外の投資家から懸念されています。
■エルドアン政権が再び政治対立を煽る理由とは?
しかし、なぜこのタイミングでエルドアン政権は再び政治対立を煽ることにしたのでしょうか。
個人的には、解散総選挙が近いのではないかと考えます。エルドアン大統領には、急いで解散総選挙に持ち込みたい理由がいくつかあります。最大の理由は、元経済担当大臣のアリ・ババジャン氏の新政党ではないかと考えます。
【参考記事】
●G20サミットでS-400問題は進展したのか? リスクオン追い風に、トルコリラ/円は上昇(7月3日、エミン・ユルマズ)
新政党の準備は着々と進められていて、秋口には正式に立ち上がると予想されています。トルコの法律上、新しい政党が選挙に参加するためにはトルコの41以上の県で地方組織を形成する必要があります。
これには少し時間がかかるので、エルドアン大統領としては、新しい政党の選挙準備が整う前に総選挙をやりたいというインセンティブが大きいと考えます。
エルドアン大統領は、元経済担当大臣・ババジャン氏の新政党の選挙準備が整う前に総選挙をやりたい、という考えがあるとエミンさんは解説している (C)Anadolu Agency/Getty Images
ババジャン氏は、エルドアン大統領との意見の相違が理由で政治からいったん退いたわけですが、彼はまだ若く、市場関係者や欧米諸国と良好な関係を持っている人物であり、新政党は、たくさんの右派票を与党・AKP(公正発展党)から奪う可能性があります。
■トルコリラ/円は17円台前半まで下落する可能性あり
フラッシュクラッシュ後の米ドル/トルコリラは、5.8リラ前後で推移しています。本当に解散総選挙となれば通貨安(トルコリラ安)が進む可能性もありますが、選挙の決定はもうちょっと先だと考えますので、米ドル/トルコリラは、しばらく5.7~5.9リラのレンジで動く可能性が高いと考えます。
(出所:Bloomberg)
一方で、トルコリラ/円は18円台前半まで下がっていますが、今後も米中貿易交渉の進行具合や香港情勢の悪化による急な円高の可能性があり、トルコリラも対円で17円台前半まで下がる可能性があると見ています。
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