■「コロナショック」でFRBが50bpの緊急利下げも?
先週(2月24日~)のNYダウは過去最大の下落幅となり、米10年債利回りも過去最低を更新。ゴールドも高値から7%の急落となりました。「コロナショック」ですね。
【参考記事】
●「セル・ジャパン!」と言いながら円売り。低ボラ脱却へ。米ドル/円は下値余地拡大か(2月27日、西原宏一)
●「342兆円」VS「1855兆円」の行方は新型コロナウイルス次第。リーマンショック級の不景気も!? (2月27日、志摩力男)
●新型肺炎は中国の問題から世界的な問題へ。米ドル/円は105円程度まで下落の可能性も(2月28日、今井雅人)
●NYダウ暴落! 最悪の事態は織り込んだか。トイレットペーパー買い占めより安値を拾え!(2月28日、陳満咲杜)
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
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VIX指数も50ポイント近くまで急騰しました。
イタリアで感染者が急増し、米国内でも感染者が出て、市場がおかしくなりましたね。
(出所:Bloomberg)
中央銀行が動き出しています。
先週金曜日(2月28日)には、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長が利下げを示唆する緊急声明を発表。
3月の利下げ織り込み度は100%となっていますが、次回のFOMC(米連邦公開市場委員会)は3月18日(水)と少し先です。
FOMCを待たずに緊急利下げを行ったり、25bp(0.25%)ではなく一気に50bp下げるのではといった見通しも出ています。
ただ、一気に50bp下げてしまうと、市場は「そんなに悪いのか」と受け取り、逆効果かもしれない。
緊急か50bpかはさておき、3月の利下げは決定的です。
■金融政策でコロナショックは収まらない
利下げの効果は、どう考えますか?
リーマンショックは、金融メカニズムが目づまりを起こしたことによるショックでした。
だからこそ金融政策が一定の効果を及ぼしましたが、今回の原因はウイルスの拡大。
利下げで株が買われることはあるでしょうが、一時的な反応にとどまるのではないでしょうか。
米ドル/円にも若干ポジティブかもしれませんが、株式市場が下落すれば再び下げると見ています。
今朝(3月2日朝)の米ドル/円は、下窓を開けて始まりました。
早朝には107.01円まで急落。一部では106円台での取引もあったようです。
(出所:Bloomberg)
ところが、お昼には108円台を回復しましたね。
きっかけとなったのは黒田日銀総裁が出した緊急談話。5000億円の国債を買い入れる特別なオペを4年ぶりに実施するそうです。
週末のパウエルFRB議長に呼応した形で、次はECB(欧州中央銀行)が何らかの対応を発表するのでしょう。
明日(3月3日)はRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])が政策金利を発表する予定ですが、利下げが濃厚。
世界が緩和方向へ動いていますが、FRBは政策金利が1.75%と利下げ余地があるのに対して、ECBや日銀が打てる手は限られます。
■「キャリーの巻き戻し」で買い戻された円やユーロ
金融政策の効果は米ドルのほうが大きい、ということですね。
それに加え、これまで円やユーロは金利差を手がかりにしたキャリートレードによる売りが出ていました。
リスクオフとは、既存ポジションの逆流。
これまでキャリーで売られていた円やユーロは買い戻されやすくなっています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロVS世界の通貨 4時間足)
キャリー通貨だった弊害が出てくるわけですね。
3月3日(火)には14州で一斉に米大統領予備選が開催される「スーパーチューズデー」が控えています。どう見ますか?
サンダースなのか、昨日(3月1日)のサウスカロライナで勝利したバイデンなのか、スーパーチューズデーから参戦するブルームバーグなのか――。
混戦模様ですが、スーパーチューズデーで大きな流れは見えてくるのでしょう。
左派のサンダースが優勢なら、株式市場にポジティブではありません。
WTI原油先物は先週(2月24日~)43ドル台まで急落しましたが、OPEC(石油輸出国機構)総会が3月5日(木)、3月6日(金)に開催されます。
事前に報じられているのは、日量60万バレルの減産。注目は60万バレルを超えるような減産で合意できるか、ですね。
50ドル割れが常態化するようだと、株式市場にはネガティブです。
(出所:Bloomberg)
ゴールドの下げはどう見ますか?
CFTC(米商品先物取引委員会)が発表する取り組みを見ていると、買いポジションが過去最高水準でずっと高止まりしていました。その利食い売り、換金売りが出たのでしょう。
■「ボルマゲドン」となれば米ドル/円は100円もあり得る
この2、3年、米ドルや円、ユーロはボラティリティの小さな相場が続いていました。
低ボラを見込んだポジションが巻き戻されると、ボラティリティが急拡大する可能性もあります。
ボラティリティが、突然急騰する「ボルマゲドン」(※)には注意ですね。
米ドル/円は105円をターゲットに見ていますが、「ボルマゲドン」となれば、一気に100円をめざす展開もありえます。
(※編集部注:「ボルマゲドン」は「ボラティリティ」と隕石落下を題材にした映画「アルマゲドン」を組み合わせた造語)
【参考記事】
●「セル・ジャパン!」と言いながら円売り。低ボラ脱却へ。米ドル/円は下値余地拡大か(2月27日、西原宏一)
(出所:TradingView)
今週の戦略はどう考えますか?
米ドル/円の戻り売りでいいでしょう。
各国の政策対応もあり、戻す場面もあるでしょうが、そこは売っていきたいと思います。
また、米ドル/円だけでなく、ユーロ/米ドルでの押し目買いもいいでしょうね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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