■米ドル/円がまたたく間に112円台まで上昇した理由とは?
2月19日(水)、110.30~40円前後のレジスタンスを突破した米ドル/円は、またたく間に111円台に達し、その翌日20日(木)には112.22円前後まで上昇しました。

(出所:TradingView)
2015年からの大きな三角保ち合いを突破したように見えたことも、テクニカル系ヘッジファンドの米ドル/円買いを促し、強い上昇につながったように見えました。

(出所:TradingView)
この米ドル/円の上昇に、巷ではにわかに、ついに「日本売り」が本格化してきたと論評する人も増えました。
【参考記事】
●株価と為替の関係はいつも同じではない。「リスクオフの円高」がなくなる日は近い(2月19日、志摩力男)
●日本のGDPは衝撃の年率マイナス6.3%…。悪材料で円安に!? 米ドル/円は115円へ!(2月20日、西原宏一)
●新型コロナの初動対応に失敗した日本政府。円安は「日本売りそのもの」だと認識すべき(2月21日、陳満咲杜)
●もう円は「セーフ・ヘイブン」ではなくなった!? 新型コロナ対応後手に回り、日本売り開始か?(2月24日、西原宏一&大橋ひろこ)
その理由を挙げてみると、以下のとおりです。
(1)消費増税の影響もあり、2019年10-12月期GDPが年率マイナス6.3%と驚くほど低い成長率だった。そして、2020年1-3月期も新型コロナウイルスの影響でマイナス成長が避けられず、そうなれば2期連続マイナス成長=景気後退入りと判断される。
(2)財務省が公表する「対外及び対内証券売買契約等の状況」の1月月次ベースの発表で、信託銀行が外国の中長期債を1兆9637億円と大きく買い越した。GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)など年金資金は信託銀行を経由して売買するため、GPIFによる何らかの資金シフトが始まっているのではないかとの思惑を呼んだ。しかも、最新の週次ベースの発表では、2月の第1週に1.6兆円、第2週に1.4兆円と大きめの買い越しが見られた。
実は、2月の第1、2週の中長期債大量購入が信託銀行経由かどうか、すなわちGPIFによるものなのかどうかは、次の月次ベースの発表がある3月9日(月)までわかりません。
ただ、1月の大量購入のあとなので、もしかしたらという思惑があり、それが2月20日(木)の112円台示現を促した面もあるでしょう。
■GPIFなど年金資金は為替ヘッジをしない
なぜ、GPIFなど年金資金による購入かどうかが重要かというと、生保・損保による外債投資はかなりの比率で為替ヘッジをかけており、為替市場へのインパクトがほとんどないのに対し、年金資金はほとんど為替ヘッジをしないからです。
【参考記事】
●国内生保が外債投資を行っても、それが円安要因にならない理由とは?(2013年10月31日、今井雅人)
また、最も大きな外債プレーヤーである銀行は、直接短期市場で外貨を調達できるので、その資金で中長期債を購入します。つまり、為替のフローはまったくありません。
■東京市場が動かないのは運用が臆病になったから
銀行・生保・損保がほとんど為替リスクを取らないのに対し、我々の大切な年金が為替リスクにさらされているというのは合点がいかない人も多いでしょう。
かつては、生損保も為替リスクを積極的に取っていましたが、1990年代における金融危機、そして金融庁の誕生により、リスクを極力取らない運用方針にシフトして行ったという背景があります。
金融機関の健全経営につながっているとも言えますが、運用が臆病になり、資金が有効に活用されなくなったとも言えます。東京市場が動かない理由も、ここにあります。
■米国株の急落で「リスクオフによる円高」が勝った
しかし、112円台まで上昇した米ドル/円相場は、新型コロナウイルスによる感染が世界中に広まり始めたことにより、米国株が急落を始め、110円前後まで反落してしまいました。「リスクオフによる円高」が勝ったわけです。
【参考記事】
●株価と為替の関係はいつも同じではない。「リスクオフの円高」がなくなる日は近い(2月19日、志摩力男)

(出所:Bloomberg)

(出所:TradingView)
日経平均も下落したのですが、NYダウの急落を見ていると、どうしても米ドル/円を売ってしまいます。
一生懸命、為替市場を見回しても、その瞬間、買えるものはやはり「円」しか見つからないのです。
事前に円を売っているから、リスクオフで円の買い戻しが入る、これが「リスクオフによる円高」の原理ですが、もっと大きな理由も…
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【参考記事】
●2023年1月31日20時~「ライブ配信!志摩力男」開催! メルマガ配信も好調!FXプロトレーダー志摩力男が2023年FXトレード新戦略を本音で語る!
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