■「セル・ジャパン」と言いながら円売りへ
みなさん、こんにちは。
先週(2月17日~)後半は、米ドル/円が110円台前半にあった強烈なレジスタンスをブレイクし、突然、急騰。
【参考記事】
●日本のGDPは衝撃の年率マイナス6.3%…。悪材料で円安に!? 米ドル/円は115円へ!(2月20日、西原宏一)
日本の10-12月期GDPが、年率マイナス6.3%という報道をきっかけとして、米系ファンド中心に「日銀の追加緩和期待」をあおって、米ドル/円は一時112.23円まで急騰しました。

(出所:Trading View)
筆者の友人の米系短期筋も、「セル・ジャパン(日本売り)」と言いながら円売りへ。
もともと彼は、米系を中心に増えている円安派で、今回に限らず昨年(2019年)からずっと円安派ですが、上述のGDPの数字に、新型肺炎ショックも重なり、さらに円売りに傾いた展開です。
■米国でも新型肺炎報道拡大。資金は株から債券へ
ところが、今週(2月24日~)に入って、米ドル/円のセンチメントは一変します。
その原因は、先週(2月17日~)末、米国でも新型肺炎報道が拡大したこと。
呼応して、今週(2月24日~)に入り、投資資金は、急速に米国株から債券へ移動しました。
結果、米10年国債利回りは、過去最低を記録(利回りは1.3055%へ)。

(出所:Bloomberg)
米金利の低下に呼応して、100に近づいていたドルインデックスは急反落しています。

(出所:Bloomberg)
■米金利の急低下でドルインデックスも急落…
ここで、今年(2020年)に入ってからの主要通貨の動きを確認します。
中国経済の低迷を背景に、まず豪ドルが下落。
中国はドイツの主要輸出先であることから、次にドイツ経済の低迷が予測され、今月(2月)はユーロ/米ドルが続落しました。
【参考記事】
●新型コロナが猛威振るう中、なぜ株は好調? 豪ドルが影響を織り込む一方でユーロは…(2月13日、西原宏一)

(出所:Trading View)
さらに、先週(2月17日~)は、日本の10-12月期GDPの悪化をきっかけに円安が加速し、米ドル/円が112円台まで急伸。
結論として、先週(2月17日~)までは主要通貨の中で、買える通貨は米ドルしかないという展開で、ドルインデックスは節目である100に急接近。
しかし、ドルインデックスが100に急接近すると、マーケットでは、トランプ政権から米ドル高牽制コメントが出るのでは(?)という警戒感が漂っていました。
そこに、新型肺炎ショックで米金利が急低下し、米10年国債利回りは過去最低を記録。結果、ドルインデックスは節目の100を超えることなく、反落しました。

(出所:Bloomberg)
ドルインデックスの反落は、米ドル/円の上値を抑えることにもなり、米ドル/円は急反落。112円台前半まで急騰していた米ドル/円ですが、一時110.00円割れまで反落しました。
米ドル/円は、110.00~112.00円で「行って来い相場」に終始という、ボラティリティの高い展開です。

(出所:Trading View)
■米金利低下に日欧は追随せず
ここで個人的に注目しているポイントは、米国の金利低下と比較すると、日欧が追随できていないこと。

(出所:Bloomberg)

(出所:Bloomberg)
それは、対米の金利差が縮小することとなり、米ドルの上値を重くします。
結果、リスクオフの円高は短命に終わるかもしれませんが、米金利の急低下が相関性の高い米ドル/円の下値余地を拡大する可能性が台頭しました。
■米ドル/円が低ボラティリティ相場を脱却するきっかけに
ここで、米ドル/円のチャートを確認してみます。
今回の米ドル/円の高値は、112.23円。
2015年6月の高値125.86円と2016年6月の安値99.02円の半値戻しが112.44円。
今回の米ドル/円急騰では、この水準を超えられるかどうかがポイントでしたが、ここを超えられずに反落しています。

(出所:Bloomberg)
本稿執筆時点では、先週(2月17日~)米ドル/円急騰の起点となった110円台前半と半値戻しである112円台ミドルの間で乱高下している展開。
今回の米ドル/円の急騰、そして急反落は、昨年(2019年)来の低ボラティティマーケットを脱し、米ドル/円相場が大きく動くきっかけになるのではと想定しています。
その方向ですが、米金利の急低下に日欧の金利が追随できない展開からすれば、米ドル/円はダウンサイドではないかと考えています。

(出所:Trading View)
米国でも新型肺炎報道拡大により、資金は株から債券へ移行し、米10年物国債利回りは過去最低を記録。
本稿執筆時点では、トランプ政権は新型肺炎の早期沈静化と予算追加というスタンスをとっています。
しかし、仮に感染が拡大するようであれば、米大統領選に向けて、さらに強烈な対応策を講じる可能性があるため、トランプ政権の動向にも注目しておきたいところ。
引き続き、米金利の低下により、112円台ミドルを超えられず反落した米ドル/円の行方に注目です。
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