■FRBが1.0%の緊急利下げ&量的緩和再開!
先日、WHO(世界保健機関)がパンデミック(世界的な大流行)になっているとの認識を示した新型コロナウイルス。発生源とみられる中国での感染者数は減少傾向にあるものの、欧米での感染者数は日に日に増加しており、依然として世界規模での終息の兆しは見えてきません。
日本でもイベント開催の自粛要請などが続いており、3月13日(金)には新型コロナウイルス対策の特別措置法が成立しましたが、米国ではトランプ大統領が非常事態宣言を出し、欧州では人の移動が制限されるなど、各国が対応に追われている状況です。
金融市場では投資家のリスク許容度が極端に低下し、世界中で株価が大幅に下落。米国の代表的な株価指数であるNYダウが先週(3月9日~)、1987年のブラックマンデー以来の下落率を記録するなど、「コロナショック」と呼ばれるパニック的な動きが起きています。
こうしたなか、財政・金融面での政策も、各国から相次いで打ち出されており、FRB(米連邦準備制度理事会)は日本時間3月16日(月)未明に、緊急のFOMC(連邦公開市場委員会)を開催。
政策金利にあたるFF(フェデラル・ファンド)レートを1.00%引き下げて、0.00~0.25%にすると発表。さらに、米国債などを買い入れる量的金融緩和政策の再開も明らかにしました。
※FFレートの誘導目標レンジ上限を掲載
(出所:Bloomberg)
FRBは、3月3日(火)に0.5%の緊急利下げを実施していますので、これで今月2度の利下げを実施したことなります。
ザイFX!のコラム「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」でおなじみのエミン・ユルマズさんは、今回のFRBの対応を受けて、
「FRBの利下げと量的緩和は市場と米景気へのサポートというのが目的ですが、間接的に新興国通貨を助けることにもなります。米ドル高のトレンドを和らげるだけでも、パンデミックで減速している新興国経済は楽になります」
とのコメントを寄せてくれています。米ドルやユーロ、円など主要通貨の動向はもちろんですが、トルコリラをはじめとした新興国通貨の動向にも注意していきたいところです。
【参考コンテンツ】
●エミン・ユルマズの「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」
■市場の不安心理を一層高めるとの懸念も…
さて、本来であれば、明日、3月17日(火)から18日(水)の日程で予定されていた通常開催のFOMCで、3月3日(火)に実施された0.5%の緊急利下げに続き、大幅な追加利下げが実施されると予想されていました。
しかし、FRBはそれを待たず緊急利下げを実施。米国の政策金利はリーマンショック後に導入した実質ゼロ金利政策を、約4年ぶりに再開したことになります。
これを受けて、週明け月曜日となる本日、3月16日(月)の為替市場は、米ドル全面安でスタート。米ドル/円は先週末終値の108円付近から窓を開けて107円前後で取引が始まり、その後は一時、105円台まで下げ幅を拡大させる場面がありました(※)。
(※週明け月曜日の取引開始時刻はFX会社によって異なるため、取引開始直後の為替レートは各FX会社によって異なります。下のザイFX!の為替チャートは、午前7時から取引が始まるセントラル短資FXからデータの提供を受けて作成されています)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 30分足)
【参考記事】
●月曜日の窓埋めトレードを狙ってひと儲け! 午前3時からトレードすればニ度オイシイ…!?
FRBが3月3日(火)に実施した0.5%の緊急利下げ後も、株式市場では下落が続き、先週(3月9日~)、世界的に株価が雪崩のように崩れたのは冒頭でもお伝えしたとおりです。
金融市場に端を発したリーマンショックのときとは異なり、今回のパニック局面では金融政策や財政政策は効かず、危機の収束にはまだ時間がかかるとの見方も非常に多く聞かれています。
それを裏付けるかのように、3月16日(月)の米株先物市場は急落。値幅制限に達し、取引が一時停止しました。
前週末比プラスで始まった日経平均もマイナス圏に失速するなど、大規模な金融緩和が市場の不安心理を一段と高めているのではないかと推測されるような面も見受けられます。
(出所:Bloomberg)
■資金管理とポジション管理には十分注意を!
FRBは本日から、ECB(欧州中央銀行)、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])、BOC(カナダ銀行[カナダの中央銀行])、SNB(スイス国立銀行[スイスの中央銀行])、日銀と協調して、市場に流動性を供給するための米ドルのスワップオペを開始することも公表しています。
また、日銀は3月18日(水)~19日(木)に開催予定だった金融政策決定会合を急遽、本日16日(月)正午から開催すると発表しており、そこでは市場の安定確保に向けた政策が議論される模様だと伝わっています。さらに、安倍首相は16日(月)夜に、G7(先進7カ国)が電話会議を行う予定であることを明らかにしています。
このような対応が金融市場に対して功を奏するのかはわかりませんが、この先も株式市場を中心に金融市場全体のボラティリティが高い状態が続き、為替市場でも各通貨ペアで荒っぽい動きが続く可能性は高そうです。
ここ最近の値動きの大きさを受けて、主要FX会社の中にはスプレッドの原則固定表記を一時的に中止するところも出てきています。
値動きがあることで、トレード機会が増えるのは事実ですが、ちょっとした材料で米ドル/円でも1円や2円はかんたんに動いてしまう状況にあるだけに、資金管理やポジション管理には細心の注意を払って取引に臨むようにしたいですね。
(ザイFX!編集部・堀之内智/取材協力 ザイFX!編集部・庄司正高)
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