NYダウ、約1カ月で38%も下落!!
「コロナショック」との呼び方がすでに定着している、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に端を発した金融市場のパニック的な動き。外国為替市場も大きく動いていますが、それ以上にボラティリティが高く、大きな注目を集めているのが株式市場です。
特に、米国の代表的な株価指数であるNYダウ(ダウ平均株価)は、猛烈な下げに見舞われました。前日からの上げ幅や下げ幅が終値ベースで1000ドルを超える日も珍しくない動きを続けながら、2020年2月12日(水)の取引時間中につけた2万9568.57ドルを史上最高値に、3月23日(月)には終値ベースで1万8000ドル台まで下落。2016年11月以来の安値水準をつけ、史上最高値からの下落率は一時、38%を超えました。
(出所:Trading View)
2016年11月といえば、トランプ氏が大統領選挙に勝利し、米大統領になることが決まったときです。トランプ米大統領は就任以降、株高を自身の功績と積極的にアピールしてきましたが、NYダウはトランプ大統領の誕生が判明したあとの約3年3カ月で積み上げてきた上昇幅を、わずか1カ月ほどで帳消しにする下落に直面しています。
本記事公開時点では、今のところ3月23日(月)の1万8213.65ドルが目先の安値になったような形となり、そこから一時、下げ幅の33.52%戻しとなる2万2000ドル台まで反発して、終値ベースで2万ドルの大台を回復しています。しかしながら、史上最高値からの下落率は、一般的に弱気相場入りとされる20%を大きく上回った状態が続いています。
過去には今回以上の下落に見舞われたときも
今回の下落はどれほどすごいのか。以下は、1928年10月(※)以降のNYダウを終値ベースで見たときの、前日からの下落幅トップ5を一覧にしたものですが、90年以上の長い歴史の中で、今年、2020年3月の動きがトップ5を独占しています。これを見ると、やはりタダゴトではないのがわかります。
(※NYダウの公表開始は1896年5月26日(火)ですが、本記事では指数の構成銘柄数が現在と同じ30銘柄となり、構成銘柄の一部が入れ替えられたときも指数の連続性が維持できる算出方法が用いられるようになった、1928年10月1日(月)以降のデータを使用しています)
※Bloombergから取得した1928年10月1日(月)~2020年3月25日(水)のデータをもとにザイFX!が作成
しかしながら、終値ベースで、前日からどれだけの割合で下落したかを示す「下落率」を見ると、下落幅で歴代1位となった2020年3月16日(月)の3000ドル近い暴落よりも、1987年10月19日(月)のブラックマンデーや、世界恐慌(大恐慌)の引き金になったとされている1929年10月28日(月)の方が、「率」ではもっと下落しています。その当時のマーケットを襲ったショックは、今回以上に大きかったと推測されます。
※Bloombergから取得した1928年10月1日(月)~2020年3月25日(水)のデータをもとにザイFX!が作成
また、100年に一度の金融危機と言われた2008年のリーマン・ショックのときも含め、過去の大幅な下落局面では、直近高値から底打ちまでに要した期間や底打ちまでの下落率は、足元で起こっているそれらを上回っています。
※日中の取引時間中につけた価格を含む
※Bloombergから取得した1928年10月1日(月)~2020年3月25日(水)のデータをもとにザイFX!が作成
CFDなら上昇も下落もトレードチャンスに!
だからといって、今のNYダウの下落は過去に比べてまだ甘いから、いったんは戻しているけどまた下落が始まって、底打ちまでの下落率もまだまだ大きくなりそう…なんて、単純な予想をしているわけではありません。
しかし、ここ数日の反発が本格的な戻りの足がかりになるのか、それとも、一時的な動きにすぎないのかなど、今後の動きを予想したりするうえで、過去の大きな下落局面の動きを辿ってみることは、何かと参考になるはずです。
そして、相場観が固まれば、GMOクリック証券、サクソバンク証券、IG証券などで、買いからも売りからも取引をスタートできるCFDを使って、NYダウを取引してみても、良いのではないでしょうか。
CFDなら、上昇局面と下落局面の両方がトレードチャンスになるというメリットがありますし、NYダウだけでなく、同じように大きく動いている原油や金(=ゴールド)なども取引できますから、よく理解してリスクを抑えた取引ができれば、トレードチャンスも広がりそうです。仮に取引しなくても、世界の金融商品の価格をウォッチしておけば、FXにも役立つはずです。
【参考コンテンツ】
●NYダウや金にも直接投資できるCFD取引会社を徹底比較!
そこで、今回は過去のNYダウの大きな下落局面を当時の背景とあわせてご紹介しながら、今のNYダウがその当時と同じような動きとなった場合はどのようになるのかを、イメージしてみたいと思います。
使用するのは、基本無料で誰でも自由に使うことができる、高機能チャートツールの「TradingView」(トレーディングビュー)です。
実は、TradingViewならNYダウの日足チャートを、20世紀初頭というものすごく大昔まで遡ってチェックすることができます。
業界トップクラスの大手ネット証券の公式サイトに掲載されているNYダウのチャートを見ても、10年しか遡ることができません。それも月足になってしまい、日足ではありません。10年しか遡れないということは、すでに2008年のリーマン・ショックのときの動きもチェックできないことになります。昔のNYダウの動きを見ようとしたときに、TradingViewのように日足で約1世紀(!)も遡れてしまうというツールは意外とあまりないのです。
90年以上の日足チャートを見るとなると、さすがに1つの画面にすべての値動きを収めることはできませんが、TradingView は今回のように大昔の値動きのこともチェックするときは、非常に重宝します。
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(出所:Trading View)
ちなみに、TradingViewのチャートに表示できるのは、TradingView社がNYダウの価格データを元に組成した、「DJI」という名称のCFDの価格です。なので、厳密には本家本元のNYダウではないのですが、ザイFX!が調べた限りでは、本家NYダウと同じ値動きになっています。
世界恐慌に匹敵なら大底は3100ドル!?
まずは、世界恐慌(大恐慌)の引き金になったとされる、1929年10月28日(月)の大暴落を含んだ、1929年8月から同年12月末までの動きを掲載した日足チャートを見てみましょう。この期間のTradingViewのチャートはローソク足ではなく、バーチャートで表示されます。
(出所:Trading View)
1929年10月28日(月)は終値ベースで前日から40.58ドル下落し、下落率は歴代2位となる13.47%を記録。さらに、翌29日(火)の下落率も歴代4位の11.73%となり、半日ほどで市場が閉鎖した「悲劇の火曜日」として歴史に刻まれています。
ただ、それで下げが終わったわけではなく、いったんは戻したものの、そこからもう一段下落して、1929年11月13日(水)の取引時間中につけた195.35ドルが目先の安値になりました。当時の史上最高値となる9月3日(火)の386.10ドルから、11月13日(水)の日中安値195.35ドルまでの下落率は49.40%と、50営業日で株価がほぼ、半値水準まで下落したかたちになります。
そこからは反発局面となり、1930年4月16日(水)の取引時間中に下げ幅の53.42%戻しとなる、297.75ドルまで上昇しました。
しかしながら、このときの株安は、これで終わりではありませんでした。10月の大暴落をきっかけに世界的に経済破綻が伝播していくと、NYダウは再び下落に転じ、1931年10月5日(月)に10.7%という、歴代5位の下落率も挟みながら、1932年7月8日(金)の取引時間中に40.56ドルで大底をつけます。1929年9月の高値から約2年10カ月(718営業日)かけて、最終的に89.49%という猛烈な下落率を記録したのです。
(出所:Trading View)
ちなみに、1932年7月8日(金)に40.56ドルで大底をつけたNYダウが、1929年9月の高値水準(386.10ドル)を上回って史上最高値を更新したのは1954年11月24日(水)。25年近くの歳月を費やしています。
あくまで参考ですが、単純にこのときの動きや最終的な下落率を今のNYダウに当てはめると、短期的には3月下旬に1万5300ドル台前半まで下落。8月下旬に2万ドル手前まで戻したあと、2022年12月に3100ドル近辺まで下げて大底をつけ、再び史上最高値を更新するのは2045年というイメージです。
(出所:Trading View)
さすがに世界恐慌(大恐慌)という強烈な言葉がつけられただけあって、当時の株価の下落はすさまじいものだったわけです。
ブラックマンデー並みならまもなく反転へ!?
そして、以下は1日の下落率が歴代1位の22.61%を記録した、1987年10月19日(月)の「ブラックマンデー(暗黒の金曜日)」を含む、1987年8月から11月までの日足チャートです。
(出所:Trading View)
一般的にブラックマンデーは、1985年のプラザ合意後に進んだ米ドル安によるインフレ上昇を止めるために、米国の金利が引き上げられるとの見方が強まったこと、イラン・イラク戦争の影響による原油市場の不安定化など、さまざまな要因が絡みあって発生したと言われています。また、今でいうアルゴリズム取引が普及し始めたころで、価格が下落すると、それに追随するプログラムの売り注文が膨らむといった連鎖的な動きによって、さらなる下落が引き起こされたことも影響したと考えられています。
こうした株安を誘発しそうなリスク要因がいくつか存在していた中で、株価は1897年8月25日(火)の取引時間中につけた2746.70ドルを高値にジリジリと下げはじめ、10月に入って下げが加速したあと、10月19日(月)のブラックマンデーがクライマックス的な暴落になっていたことが、チャートを見るとわかります。ちなみに、同じ1987年10月19日(月)のS&P500先物指数の下落率は29%と、NYダウの下落率22.61%を上回っていたそうです。
世界恐慌のときとは異なり、このときはブラックマンデーの翌日、10月20日(火)の取引時間中につけた1616.20ドルが大底となり、しばらく乱高下を続けたあとに上昇相場へ向かいます。1987年8月25日(水)の直近高値2746.70ドルから、10月20日(火)安値1616.20ドルまでの下落率は、41.16%に達しています。かかった期間は40営業日でした。
そして、大底をつけた1年10カ月後の1989年8月下旬に、株価は下落前の水準を取り戻しました。
(出所:Trading View)
これも、あくまで参考ですが、この当時の下落率やその後の動きを今のNYダウに当てはめると、4月中旬に1万7400ドル付近で大底を打ち、そこから上昇トレンドを続けて2022年2月中旬に史上最高値を塗り替えるというイメージです。
(出所:Trading View)
リーマン・ショックと同じなら大底は2021年7月!?
最後に、リーマン・ショックのときも振り返ります。2008年9月のリーマン・ショックは、その名が表すとおり、米投資銀行のリーマン・ブラザーズが破たんしたことをきっかけに、世界規模の金融危機へと発展した出来事でした。
しかし、リーマン・ブラザーズ破たんの原因となったサブプライムローン問題は、すでに2007年8月の「パリバ・ショック」で表面化していました。そして、2008年3月に米投資銀行ベアー・スターンズの経営危機でこの問題が再燃し、さらにリーマン・ブラザーズの破たんで世界規模の信用収縮が起き、連鎖的な金融危機へとつながっていきます。
(出所:Trading View)
2008年9月15日(月)のリーマン・ブラザーズ破たんは、最終的な引き金となっただけで、NYダウはパリバ・ショック後となる2007年10月11日(木)の取引時間中につけた1万4198.10ドルを高値に下落基調へ転じ、2009年3月6日(金)の取引時間中につけた6469.95ドルが底値となるまでに、何度かのもみ合い期間を挟みながらも、下げが続いていたことがわかります。
結局、2007年10月11日(木)高値の1万4198.10ドルから、2009年3月6日(金)安値6469.95ドルまでの約1年5カ月(353営業日)で、下落率は54.43%に達し、株価が下落幅をすべて取り戻したのは、大底から3年11カ月後の2013年2月になりました。
(出所:Trading View)
こちらもあくまで参考ですが、この当時の下落率やその後の動きを今のNYダウに当てはめると、2021年7月あたりに1万3400ドル台で底打ちとなり、2025年6月に下げ幅を取り戻して史上最高値を塗り替えるイメージです。
(出所:Trading View)
リスクをコントロールできればチャンスかも
このように、過去にNYダウがなにかしらの危機で大きな下落局面を迎えたときを振り返ってみると、下落を引き起こした背景はもちろんのこと、底打ちまでの下落率やそれに要した期間、そして、株価が元の水準を回復するまでにかかった期間などは、一様ではないことがわかります。
今回のコロナショックは、ウイルスという、これまでにないテーマが引き金になって引き起こされたものですから、過去の下落局面とはかんたんに比較もできません。
主要国の相次ぐ金融緩和や財政出動などによって、ようやく目先は下げ止まりを期待できそうな動きになったと感じられなくもありませんが、欧米を中心にヒトやモノの移動が制限され、経済活動が停止している状況ですから、景気への悪影響は避けられず、弱気な見通しが続く可能性もありそうです。
一方、経済活動を犠牲にすることで、それほど長い期間を要さず、新型コロナウイルスの感染拡大が収束に向かえば、非常に大規模な金融緩和や財政出動を行ったり、行いつつあるわけですから、景気回復への期待が一気に高まり、株価が本格的に反発に向かうことも考えられます。
以下は、1988年以降のNYダウの月足チャートです。過去30年ほどで株価が10倍以上になったことも驚きではあるものの、ここ最近の下落が際立って強烈なのがわかります。
(出所:Trading View)
ここから先、どのような結末になるのかは、誰もわかりませんが、これだけ大きく動いているわけですから、リスクをしっかりとコントロールできれば、トレーダーにとってはチャンスの場面とも言えそうです。
冒頭でもお伝えしたとおり、GMOクリック証券、サクソバンク証券、IG証券などを使えば、CFDでNYダウを買いからも売りからも取引することができます。今後もボラティリティの高い相場が続く可能性は高そうですから、今のうちにCFD口座の開設を検討してみるのも良いのではないでしょうか。
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(ザイFX!編集部・堀之内智)
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