■豪ドル/米ドルは過去10年の高値から半値まで落ち込む
FRBがCP市場への流動性供給策を導入するも、米ドル需給の逼迫はなかなか解消せず。加えて、3月19日(木)に、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])は臨時の理事会を開催して、3月3日(火)に続き、さらに0.25%の利下げを決行。RBAは、同時にQE(量的緩和策)も開始しています。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
これは、豪ドル/米ドルにとって、米ドル側、そして、豪ドル側の両面から下落を誘引する材料となります。
米ドル需要の高まりによる米ドル買いと、RBAの緩和による豪ドル売りで、豪ドル/米ドルは強く売られることになります。
3月19日(木)の豪ドル/米ドルは一時、0.5510ドルの安値まで急落。
ただ、その後、豪ドル/米ドルは一転して急反発しています。
この反発の要因ですが、まず、3月19日(木)のRBAの利下げとQEは織り込み済みであったこと。加えて、RBAのロウ総裁が介入について言及したことがきっかけとなっています。
RBAの介入は、金額的にはパワフルなものを連想させないのですが、暴落していた豪ドルマーケットにとってカウンターとなり、十分な効果があった模様。
(出所:Bloomberg)
ただ、豪ドル/米ドルの買い戻しのもっとも重要な要因となったのは、そのレベル。
年初から下落を続けていた豪ドル/米ドルに対し、私も含め、多くのマーケット参加者が注目していたレベルがあります。それは……0.5500ドル。以下は、豪ドル/米ドルの月足チャートです。
(出所:Bloomberg)
過去10年の豪ドル/米ドルの高値は、2011年7月に付けた1.1081ドル。その半値(50%押し)は、0.5541ドルです。
つまり0.5541ドルというのは、過去10年で豪ドル/米ドルの価値が半分になった節目ということになるのです。
当然、マーケット参加者の多くは、このレベルを意識しており、3月19日(木)にRBAが0.25%の利下げを決めた時、彼らが「バイ・ザ・ファクト(ウワサで売って、事実で買い戻す)」で豪ドル/米ドルを買い戻すのは相場の教科書どおりではありますが、豪ドル/米ドルが、ほぼ半値のレベルまで価値が下がっていたことが、単なる「バイ・ザ・ファクト」だけでなく、彼らの買い戻しが急激になった要因です。
(出所:Bloomberg)
■豪ドルの売り材料はすべて織り込み済み、中期で反発へ
振り返ってみれば、年初からの豪ドル/米ドルの売り材料のひとつであった豪州の大規模な森林火災も、公式に鎮火が宣言されています。
【参考記事】
●森林火災危惧も、豪州株は最高値更新。豪ドルは底堅い! 対円は80円へ反発開始(1月16日、西原宏一)
森林火災鎮火を公式宣言、240日余の災難 豪州NSW州
オーストラリア東部ニューサウスウェールズ(NSW)州の消防当局は7日までに、同州で240日間以上続いていた森林火災の鎮火を公式に宣言した。
出所:CNN
これは、豪ドルにとって買い材料。
豪ドルにとっての売り材料をマーケットがすでに織り込んでしまっていること、加えて、過去10年で価値が半分に落ち込んだことから、豪ドル/米ドルは反発余地が拡大しているといえます。
こうした背景から、先週(3月16日~)後半から今週(3月23日~)の豪ドル/米ドルは、一転して急騰しており、3月25日(水)には、一時0.6074ドルまで上昇しています。
先週(3月16日~)、19日(木)の豪ドル/米ドルの安値が0.5510ドルですので、わずか5営業日で500pips強暴騰していることになります。
(出所:Bloomberg)
さすがにこの反発は急激すぎるため、本稿執筆時点では0.5900ドルレベルまで反落していますが、前述のような背景のもと、豪ドル/米ドルは中期で反発しはじめていると考えています。
過去10年の高値から半値にまで落ち込んだ豪ドル/米ドルは、悪材料出尽くしでボトムアウト。上値余地が急拡大している豪ドル/米ドルの行方に注目です。
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