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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

香港に衝撃!中国政府が国家安全法制定へ。
なぜ中国は今、動いた? リスクオフになる?

2020年05月27日(水)16:44公開 (2020年05月27日(水)16:44更新)
志摩力男

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■急展開の香港情勢。米国も激しく反発

香港情勢が急展開しています。

 今、中国で開催中の全人代(全国人民代表大会)において、香港の「国家安全法」を制定しようとしているからです。

 香港政府ではなく、中国政府が香港の重要な法律を制定するということになれば、「一国二制度」は完全に形骸化することになります。

 香港市民は当然抵抗しますし、米国も激しく反発、トランプ大統領は「強力に対処する」と発言しています。

【参考記事】
株は過剰流動性相場、為替はもみ合い。今の為替は「待ちの段階」(5月26日、バカラ村)
米中対立で株価調整へ。ドル/円は、赤字に転落したソフトバンクGの売りに注目!(5月25日、西原宏一&大橋ひろこ)

トランプ米大統領&習近平中国国家主席写真

中国の全人代で制定されようとしている香港の「国家安全法」に対し、トランプ大統領は「強力に対処する」と発言した。写真は2019年6月の大阪G20サミット時のもの (C)Visual China Group/Getty Images

■「国家安全法」の重要なポイントは?

 そもそもこの「国家安全法」とは何か。

 これは香港特別行政区基本法に基づくもので、基本法23条には以下のように書いてあります。

「香港特別行政区は反逆、国家分裂、反乱扇動、中央人民政府転覆、国家機密窃取のいかなる行為をも禁止し、外国の政治的組織または団体の香港特別区における政治活動を禁止し、香港特別行政区の政治的組織または団体の、外国の政治的組織または団体との関係樹立を禁止する法案を自ら制定しなければならない」

 独立国家であれば当然のように見える制度ですが、外国の政治組織の活動を禁止した場合、香港は中国政府の完全なコントロール下に置かれることになり、香港の高度な自治は死ぬことになります。

 重要なポイントは「自ら制定しなければならない」と書いてある点なのですが、香港政庁の上位組織である全人代が制定しても、主権が中国にある以上、問題ないというのが中国政府の立場です。

 つまり、「一国二制度」を力づくで変えようとしているわけです。

 これに対し、米国は何ができるのか?

 昨年(2019年)、米国は「香港人権・民主主義法」を制定しました。

 香港の民主主義が形骸化するのであれば、それを前提に認めている香港に対する優遇措置を見直すことができます。

■中国政府がこのタイミングで動いた2つの理由

 しかし、なぜ中国は、今このタイミングで動いてきたのか。考えられる理由は以下の2つです。

(1)新型コロナウイルスに関し、中国の責任を問う賠償請求等が欧米諸国から起こっており、その問題から関心をそらせようとしている。

 これはよくある中国が使う手段です。手品師が左手に注目させておいて、右手で種を仕掛けるのと同じです。

(2)大統領選挙が近づき、トランプ政権は株価が落ちるような行動には出られない。大統領は激しく「口撃」するだろうが、口先だけで、結局は米中関係を決定的に悪化させるような行動をとらないと見切られている。

 5月20日(水)、米国は重要なレポートを発表しました。“United States Strategic Approach to The People`s Republic of China”(米国の中国に対する戦略的アプローチ)と題するものです

 一部メディアでも話題になっており、「新冷戦」と評する報道もあります。

 しかし、読んでみると、ここには驚くようなことは何も書いてありません

 2018年10月、ハドソン研究所にて行われ、世界を驚愕させたペンス副大統領による「政権の対中戦略」スピーチの驚きはなく、むしろ後退しています。

 つまり中国は、米国の姿勢の「軟化」を感じ取っているのです。

【ペンス副大統領の演説に関する参考記事】
米中貿易戦争は収まるどころか深刻化…!? 下値余地拡大の豪ドルには戻り売りで臨む!(西原宏一、2018年10月18日)

■中国は失うことのできない重要な市場

2019年は米中対立の1年であり、制裁関税を巡って激しく対立しました。

 しかし、時折リスクオフに動く局面はありましたが、結果的には1年を通して株価は上昇、極端な円高は避けられました。

 口先は激しいが、致命的なところは避け、結局は株価維持が最も大切という、トランプ政権の「喧嘩しているふり」戦略です。

 多くの関税は確かに引き上げられましたが、携帯電話やパソコンに対する関税は、最終的に回避されました。

 アップルは相変わらず中国にある鴻海の工場で製造され、テスラは中国に新しい工場を建設しました。

 中国は事実上、世界最大の市場です。欧州の高級ブランドに関しては、売上の5割近くがすでに中国です。

グローバル企業にとって、中国は失うことのできない重要な市場であり、資本の論理により、中国との決定的な対立は回避されることになるのでしょう。

■香港情勢緊迫化による本格的なリスクオフはなさそう

 よって結論から言うと、戦っている香港の方々には大変申し訳ないですが、香港情勢がいくら緊迫化しても、それが理由で本格的なリスクオフマーケットになることはおそらくないということです。

 日本の緊急事態宣言も解除されました。

【参考記事】
日本は緊急事態を海外に合わせて解除!? 巨額の政府支出で危険な通貨は?(5月7日、志摩力男)

 まだ新型コロナの感染が拡大している地域はたくさんありますが、欧米は徐々にロックダウンが解除される方向です。

新型コロナ感染の第2波が明らかになるまでは(第2波が来ない可能性も高い)、リスクオン状況が続くのではないかと思います。


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