■相場の転換点で理由がきちんと語られ始めたら後の祭り
ナスダックに続き、S&P500の過去最高値更新で、次はNYダウの番だという雰囲気が濃厚になってきた。
不思議なのは、ここまで来たら米国株に弱気の見方が激減し、日経平均も「割安」であるともてはやされ、有力経済紙も株高の正当性を論じる文章を軒並み発表していることだ。
市場次第、という言葉は最も適切な理由だ。市場参加者から評論家まで、結局、マーケットのパフォーマンス次第、立場や見方はいくらでも変えられるから、理屈が論理整然と並べられた時、それは必然的に後解釈ということにほかならない。
換言すれば、トレンドの始まりや相場の転換点において、その理由は往々にしてきちんと語られないものだ。逆にきちんと語られ始めたらもう後の祭りだと悟るべきだ。
筆者は一貫して、コロナショックによる株急落が一世一代の買い場と主張してきたが、3月後半や4月あたりでは、単に戯言のように聞こえたことも間違いなかったようだ。しかし、だからこそ自分の見方により自信を深めたと言える。
なにしろ、一世一代のチャンスだから、そのロジックが万人に受け入れられ、全員参加型のブームになるはずもない。猫も杓子も乗る相場はバブルの末期や相場が頂点に達した前後と決まっている。
■米ドル安に理屈が付けられ始めたから、底打ちの段階
さて、こういった話を踏まえて、今の為替市場にて応用できるものがあるとするならば、それはやはり、米ドルの見通しというほかあるまい。
3月高値からの米ドルの反落が鮮明、またスピードも速かったから、今は米ドル崩壊の言葉がまたマーケットセンチメントを支配するようになってきたようだ。
しかし、結論から申し上げると、今の米ドル全体の状況は3月における株の状況と同じく、典型的な「売られすぎ」と言える。また、いろいろと理屈が付けられ、先安観が強いからこそ、もう底打ちしたか、間もなく底打ちを図る段階にきていると思う。
(出所:TradingView)
そもそも「米ドル崩壊」という言葉は、為替市場においてなじみ深い。
戦後為替市場の事実上のスタートはニクソンショックの1971年。その時から大きな流れはずっと米ドル安だったから、2008年リーマンショック直前までの米ドル全体の凄まじい下落から考えると、「米ドル崩壊」という言葉、単純な意味合いにおいては間違いないと思う。
さらに、金(ゴールド)の史上最高値更新につれ、金との比較で米ドル価値の毀損もかなり衝撃的である。金に対する米ドルの価値は、1971年当時を100とすれば、現在約1.9程度にしかならず、50年間で50分の1にもなったから、これは崩壊と呼ぶほかあるまい。
しかし、視点を変えれば、このような言い方は大袈裟な…
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