■米大統領選前の米国株は底堅いのがコンセンサスだが…
次に、3月19日(木)にリスクオフからリスクオンに変貌したマーケットのトレンドに変化があるのかをチェックしてみます。
RBAが利下げを決断した日(3月19日)から、マーケットは大きく変貌しました。
3月19日(木)以降のリスクオンの流れの中で、もっとも注目を集めたのがナスダック総合指数の急騰。
9月2日(水)の高値である1万2074ポイントまで、一気に暴騰しています。安値である6631ドルから考えれば、驚きの82%もの急騰を見せたことになります。
(出所:TradingView)
次の重要イベントは、11月3日(火)の米大統領選挙。
マーケットのコンセンサスは、米大統領選挙まで2カ月を切ってきたこの時期に米国株が大崩れすることは考えにくく、底堅く推移するというものです。
ところが、今月(9月)に入って、そのナスダック総合指数が急落しています。
ここでは取引の詳細は割愛しますが、「ソフトバンクグループが、米ハイテク株に関するデリバティブ(金融派生商品)に巨額の投資をしていた」との報道がナスダック総合指数の利益確定の売りを誘引した形となり、一時10%も急落しました。
(出所:TradingView)
■ECBのチーフエコノミストの発言で、ユーロは反落
為替市場に目を移すと、ナスダック総合指数の下落に歩調を合わせる形で、一転して「米ドル高・円高」のリスクオフが進行。
そのリスクオフのきっかけになったのが、ユーロ/米ドル。
ユーロ/米ドルは、極めて重要なレジスタンスである1.2000ドルを上抜けず、もみ合っていましたが、今月(9月)1日(火)、ついに1.2000ドルのバリアが決壊し、一時1.2014ドルまで急騰しています。
【参考記事】
●110円へと反発を始めた米ドル/円に注目! バフェット氏の日本の商社株取得も追い風か(9月3日、西原宏一)
ただ、その高値に到達した瞬間から一気に反落して、ユーロ/米ドルは値を下げる展開。
そのきっかけとなったのが、ECB(欧州中央銀行)のチーフエコノミストの口先介入とも取れる下記のコメントです。
欧州中央銀行(ECB)政策委員会メンバーでチーフエコノミストのフィリップ・レーン理事は、為替レートを金融政策の目標にしてはいないが、「ユーロ・ドルのレートは重要」だと、オンラインで行われたパネル討論会で語った。
出所:Bloomberg
このコメントをきっかけに、ユーロ/米ドルは1.2014ドルを高値に反落。
(出所:TradingView)
そして、ユーロ/米ドルに歩調をあわせ、英ポンド/米ドルも1.3500ドルの強烈なレジスタンスを超えられず反落しています。
英ポンド/米ドルの1.3500ドルレベルは、昨年(2019年)12月13日の英国総選挙でボリス・ジョンソン首相が大勝したことで急騰するも、「セル・ザ・ファクト」で一転して反落したレベルであり、その後、「英ポンド」が急落したことが記憶に新しいところ。
(出所:TradingView)
このコラムで今年(2020年)のリーディングカレンシーであるとしている、豪ドルも、対米ドルで節目の0.7500ドルを超えられず反落しています。
(出所:TradingView)
以下の表のように、9月1日(火)から4日(金)までの主要通貨の騰落率を見ると、一転してリスクオフの展開となっています。
今月(9月)は、まだ始まったばかりで、この後の米国株、特にナスダック総合指数の動向をチェックしたいところですが、先ほど紹介した9月1日(火)のECBのチーフエコノミストのコメントをきっかけに「株高・米ドル安」の流れが変わってしまい、ゲームチェンジとなる可能性があるため、要注意です。
■ECB理事会と米国株の動向が、今後のカギを握る
筆者が注目していた英ポンド/円は、一時的に140円を超えたのですが、本稿執筆時点では、137.85円レベルへと反落しており、逆流しています。
(出所:TradingView)
本稿執筆時点では、本日(9月10日)のECB理事会とラガルド総裁のコメントを確認したいところですが、前述のように、英ポンド/円も急落しており、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)全体の上値も重くなっている状態ですから、9月1日(火)が、今年(2020年)2番目のゲームチェンジの日となる可能性が高まります。
そうなれば「米大統領選前に米国株は崩れない」というマーケットのコンセンサスと逆行することになるのですが、米大統領選挙前のコンセンサスは、当てにならないというのは4年前の米大統領選挙で実証済み。
【参考記事】
●米大統領選挙は予想外のトランプ氏勝利!リスクオフで米ドル/円急落も意外な動き…
4年前の米大統領選挙を控えてのコンセンサスは、ヒラリーさんの圧倒的勝利であり、仮にトランプさんが勝利したとすれば、マーケットに大きな負荷がかかり、株安、円高になるというものでした。しかし、結果はすべて逆でした。
9月1日(火)から、トレンドが変わった可能性がある米国株とクロス円相場。
その行方については、ECB理事会とナスダック総合指数の動向が鍵を握っています。下値余地が拡大しつつある、ナスダック総合指数と英ポンド/円の動向に注目です。
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