■「シマさん、米国はクリントンを選択した。日本は終わった」
1992年11月の話です。
シンガポールへの出張の帰り、知り合いに会うために、東南アジアのある国に立ち寄りました。
美味しいローカルの料理を堪能し、何軒か連れ回されました。むせ返すように暑いアジアの夜、お酒にあまり強くない僕は、そっと席を外しました。
そこに彼もやってきました。匂いのきついトイレ、二人並んで用を足していると、突然、彼は言いました。
「シマさん、米国はクリントンを選択した。日本は終わった」
何を言い出すのか。いくら彼が現地財閥のボンボンとはいえ、まだ20代の若造です。どういう知見があって、そんなことがわかるのか――。
「米国はこれから中国にビッグシフトする、日本の時代は終わった」
1990年に日本株は大暴落しましたが、多くの人は不景気が来るとはまだ想像もしていませんでした。「ちょっと調子悪いけど、まあ、株もすぐ戻るだろう」、そんな感じでした。
■1993年から1995年は超円高となった
若きクリントン大統領がどのような政策を打ち出してくるのか、まだはっきりわかっていませんでした。
“It’s the economy, stupid(大事なのは経済なんだ、ばーか)”、という言葉がひとり歩きしていましたが、経済政策に力は入れるのだろうなと、漠然と思っていただけです。
選挙後の市場の反応も、あまりありませんでした。「小さな政府」の共和党に対し、民主党は「大きな政府」なのだから、米ドルは強くなるという見方もありました。
ところが、1993年2月、ロイド・ベンツェン米財務長官が“I would like to see a stronger Yen(もう少し円高になるところが見たい)”と発言し、状況は一変しました。
120円割れから、夏には100円近辺まで円高が進み、その後、1995年には80円を割り込む超円高となったのです。
今となっては、彼の言ったとおりの展開です。

(出所:TradingView)
■米大統領が共和党のとき、米ドル/円は落ち着いている
クリントン政権に翻弄された過去の経緯もあり、日本では民主党より共和党が好まれる傾向があります。
共和党は鷹揚なところがありますが、民主党は理想論の政党です。正論を押し通すので、軋轢を呼びます。
プラザ合意後のレーガン政権を除き、米大統領が共和党のときは、米ドル/円相場は落ち着いている印象があります。
共和党のブッシュ(子)大統領の8年間(2001年~2008年)、最後にリーマンショックがあったので少し円高となりましたが、基本的に100円~135円と35円レンジでした。リーマンショックを入れても45円レンジです。

(出所:TradingView)
■米大統領が民主党のとき、米ドル/円はレンジが広い
その前任のクリントン大統領の8年間(1993年~2000年)は79.85円~147.67円と、レンジが67.82円もありました。

(出所:TradingView)
そして、オバマ大統領の8年間(2009年~2016年)は75.35円~125.85円と50.50円レンジでした。

(出所:TradingView)
クリントン、オバマ、両民主党政権の時は、最初に円高が進み、その後、円安となりました。
円高になった理由はそれぞれ違いますが、日本政府と民主党との意思疎通に欠けていた部分もあるのではないかと思います。
為替レートは、必ず相手のある話なので、お互いの政権の関係性が反映される部分はあります。
【参考記事】
●リーマン・ショックにアベノミクス相場! プレイバック、平成30年間の米ドル/円相場
■大統領交代で円高なら、米ドル/円は100円割れかも
現在のトランプ政権と安倍前首相は、他国もうらやむ蜜月関係を築きました。
トランプ政権下(米大統領に当選した2016年11月~2020年10月下旬現在)では、米ドル/円は、最初こそ強烈な「トランプラリー」がありましたが、その後はほとんど動きませんでした。基本的に100円~115円程度の15円レンジでした。

(出所:TradingView)
まもなく、大統領選挙を迎えます。
トランプ大統領が再選されるか、それともバイデン新大統領となるのか、わかりませんが、仮にバイデン新大統領となった場合、「安倍-トランプ」の蜜月関係は終了、波乱含みとなります。
【参考記事】
●菅新首相誕生! 官房長官時代に米ドル/円相場を支えた「為替管理」とは…?(9月16日、志摩力男)
今現在、市場ではバイデン新大統領で米ドル安、株高、金利上昇という「バイデンラリー」が喧伝されています。
【参考記事】
●米ドル下落、株価上昇、金利上昇という「バイデントレード」に必要な条件とは?(10月21日、志摩力男)
「株高」はちょっと怪しいのではとは思いますが、米ドル安は十分あり得るところです。
米ドル/円は、あまりにも長い期間もみ合いました。エネルギーが溜まっています。
仮に大統領交代で円高になったとしたら、米ドル/円は100円を割り込み、少し大きな動きになるのではないかと思います。

(出所:TradingView)
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