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志摩力男の「マーケットの常識を疑え!」

米大統領選挙後のマーケットの動きを予想。
カギとなる財政支出は、上院選の結果次第か

2020年10月14日(水)16:43公開 (2020年10月14日(水)16:43更新)
志摩力男

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■注目される米国の追加経済対策の行方

 このところのマーケットは、米国で追加経済対策が行われるかどうか、そこが焦点でした。

 しかし、10月13日(火)、ペロシ下院議長は、共和党側の修正案を明確に否定し、株は若干下落、米ドルは上昇(ユーロ/米ドルは下落)し、貴金属マーケットは急落しました。

NYダウ 15分足
NYダウ 15分足チャート

(出所:TradingView

ユーロ/米ドル 30分足
ユーロ/米ドル 30分足チャート

(出所:TradingView

NY金先物 30分足
NY金先物 30分足チャート

(出所:TradingView

驚くのは、株式市場以上に、米ドルや金といった市場の反応が大きかったことです。

 かつての経済学の常識であれば、大きな財政支出があると、景気が刺激され、金利が上昇します。その意味で、財政拡大=米ドル高、金下落でした。

 今は逆になっています。追加の経済対策があると、米ドル安になり、金も上昇することが期待されています

 この変化は、どうしてなのか?

現下のマーケットでは、財政支出こそが信用拡大につながっているからでしょう。

■さらに財政が支出されるかどうか、そこがカギ

金融政策は、限界に来ています。

 これ以上、金融緩和しても経済は刺激されず、マネーは増えません。コロナ禍という特殊な状況も、関係あるとは思います。

さらに財政が支出されるかどうか、そこがカギになっています。

■株高、米ドル安、金上昇は信用拡大がもたらしたのだろう

 その点がわかると、いろいろなことがクリアになってきます。

 なぜ、実体経済が悪いのに株式市場は強いのか――。財政マネーをバックとした信用拡大が、株式市場を支えているのでしょう。

【参考記事】
株価上昇=経済政策が正しいと言えるのか? 迫る大統領選、人種問題がトランプの逆風に!(6月10日、志摩力男)
現実とマーケットの違いに猛烈な違和感。米マイナス金利導入なら米ドル大暴落も…(5月13日、志摩力男)

 ユーロ/米ドルが、なぜ上昇(米ドルが下落)したのか? それも信用拡大によってもたらされたのでしょう。

【参考記事】
現在のユーロ/米ドルは割安! 2020年後半ユーロがどこまで上昇するか…注目!(8月5日、志摩力男)
米ドル安となる環境が完璧に整いつつある! 大統領再選には、対中国強硬姿勢しかない(7月29日、志摩力男)
ユーロ/米ドルの上昇は、今後も続く! 歴史的な「欧州復興基金」の実現が下支え(7月22日、志摩力男)
米ドルは状況が落ち着けば下落していく…。ゼロ金利は5年ぐらい続くのではないか?(7月8日、志摩力男)
対GDP比17.9%! 巨額の米財政支出で溢れたマネーが次は米ドル相場を押し下げる?(6月24日、志摩力男)

 金上昇も、部分的には財政支出の影響と言えます。

【参考記事】
IMMでロングだからこそ、ユーロ/米ドルはロングでOK! 金調整時もほとんど下落せず(8月19日、志摩力男)
金が崩れたなら、ユーロ/米ドルも調整か。目先は1.15~1.20ドル程度のレンジ相場へ(8月12日、志摩力男)

だからこそ、財政拡大を政策に掲げるバイデン氏が「意外にも」、今のところ市場に嫌われてはいないのでしょう。

■「トリプルブルー」の実現で期待される道筋とは?

 下院は、すでに民主党が過半数の議席を占めています。

 11月3日(火)の大統領選、上院選をともに民主党が抑えて「トリプルブルー」になると、財政支出が拡大し、過剰なマネーが株式市場をさらに押し上げ、米ドルを下落させる、そうした道筋が期待されているのだと思います。

【参考記事】
注目はブレグジット交渉! FTAの協議合意なら英ポンド/米ドルは1.34ドル台到達か(10月13日、バカラ村)
勝負は米大統領選挙! 無理する場面ではないが、米ドル/円の106円台は売りか(10月12日、西原宏一&大橋ひろこ)
米大統領選で「増税」掲げるバイデン氏が当選しても、中長期では株価にポジティブか(10月8日、志摩力男)
米大統領選、トリプルブルーなら増税を掲げるバイデン氏勝利でも株高・円安に!(10月8日、西原宏一)

FRB(米連邦準備制度理事会)の政策より、米政府が財政支出を続けるのかどうか、そこがポイントになっています。

■財政支出の状況は、上院選の結果次第か

 では、そうであるならば、財政支出の拡大が実現しなかった場合、どうなるのでしょうか。

 今は、コロナ禍で実体経済は大変な状態です。こうした状況下では、財政を支出して経済を支えることは、まったく正しいことで、正当化されます。

 しかし、財政支出には、いずれ限界がきます。

 ワクチンが開発され、コロナが落ち着いたとしたら、経済は正常化することになりますが、過剰な財政支出が抑制され、信用収縮から株式市場のバブル的な部分は修正を迫られることになるでしょう。

 また、為替市場でも、財政緊縮=米ドル上昇(ユーロ/米ドル下落)ということになるかもしれません。

 「トリプルブルー」でバイデン政権の財政拡大政策が実現し、バブル継続という思惑もありますが、共和党が頑張って上院を死守した場合、民主党の財政政策の多くは実現が難しくなります。

大統領選挙後のマーケットがどうなるのか、それは上院の結果も踏まえて考えたほうが良さそうです。

 実は、本当の勝負どころは「上院」なのでしょう。

■米大統領、上院、下院の組み合わせとマーケットの動き

 大統領、上院、下院の組み合わせと、予想されるマーケットの動きを以下の表にしてみました。

 実際のマーケットは、どのように動いていくのでしょうか。

大統領、上院、下院の組み合わせと、予想されるマーケットの動きの表

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