■米長期金利の上昇が米ドル買い戻しにつながる
米大統領選挙の混乱など、政治的な不安要素に加え、コロナ防疫の失敗が目立ち、米ドル自体が、従来のリスク回避資産からリスク資産へと化した、といった見方の広がりも米ドル売りを加速。米ドルの地位沈下が心配された。
長い目で見れば、このような心配は無用だと思うが、目先、米ドルにとってネガティブな要素として認識されても仕方がないと思う。
ゆえに、CFTC(米商品先物取引委員会)統計の米ドル売りポジション(投機筋)は、今年(2020年)の夏に、一時過去最大まで膨らんでいた。
夏以降縮小してきたものの、ポジション総数は、なお高い水準を維持してきたから、前述の理由や思惑で米ドルは売られすぎの状況が推測される。
こういった「売られすぎ」に対する修正がすでに始まっているのであれば、「リスクオンの米ドル安」は、やはり長くは続かない。
大きなシグナルは、ほかならぬ米長期金利(米10年物国債利回り)の下落一服、また、切り返しの展開だ。
米10年物国債利回りは、3月に一時0.318%を記録、8月も0.505%まで迫ったが、安値更新を回避した。その後、緩やかな切り返しを維持し、今週(11月9日~)、一時0.977%まで急騰してきた。
(出所:TradingView)
米長期金利の低下が、ドル・キャリートレード(米ドルを売ってほかの資産に充てる)の地合いを醸成し、米ドル安をもたらした経緯を重視すれば、長期金利の上昇は、必然的に米ドル売りポジションの買い戻しにつながる。
したがって、米長期金利の下げ一服や切り返しは、大きなシグナルと化し、これ以上の米ドル安の進行が容易ではないことを示唆している。
■米ドル/円もクロス円も上値トライの余地あり
つい最近までの、為替市場における現象を忘れてはいけない。すなわち、米ドル全体と米ドル/円の連動性である。
米ドル全面安があったからこそ、米ドル/円の下値打診、また、「リスクオンの円高」という現象をもたらしたのだから、米ドル安の地合いが変化してきた以上、米ドル/円の底打ちも強く認識されやすい。
したがって、米ドル/円もクロス円も持ち直しやすく、上値トライの余地ありと見ていいだろう。
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クロス円の上値余地に関して、鍵を握るのが、やはり米ドル全体の値動きだ。
ドルインデックスの下げ止まりがあっても、たちまちベア(下落)基調を修正できるとは限らず、また、目先のそのようなサインを点灯していないから、米ドル全体は、しばらく安値圏での保ち合いに留まると推測される。
(出所:TradingView)
となると、米ドルの急騰による外貨安・円高の進行という懸念も薄く、再度、円安の方向へ振れやすい地合いができたと見る。
■米ドル/円は106~107円にトライできるかどうかが見どころ
もちろん、米ドル/円の値動きも肝心だ。
結論から申し上げると、11月9日(月)の大陽線が重要なサインを点灯。3月高値を起点とした大型反落波(調整波)はすでに終了し、米ドル/円が、米ドル全体の切り返しをリードしていく可能性は目先、大きくなっている。
この意味では、従来のメインシナリオの再検証にもなるから、これから米ドル/円が106~107円というメインレジスタンスゾーンをトライできるかどうかは見どころだ。
(出所:TradingView)
詳細は、また次回。市況はいかに。
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