■市場の「いいとこ取り」が進化!?
米大統領選挙の進展に一喜一憂しながら、米国株は大幅な切り返しを果たし、日経平均も一時2018年以来の高値を更新、終値でバブル崩壊後の最高値を上回った。

(出所:TradingView)

(出所:TradingView)
株高とセットのように、米ドル安が進み、ドルインデックスは再度93の節目を割りこんで、2020年9月安値の91.78に迫る勢いを示している。

(出所:TradingView)
もっとも、事前予想では、米大統領選は接戦、また法廷判定に持ち込まれるというシナリオが、株式市場にとって一番ネガティブのはずだった。
しかし、ふたを開けてみれば、選挙情勢自体はそのとおりの展開になっているものの、株式市場は大幅な上昇を遂げ、大半の予想を嘲笑うかのような展開だ。
筆者もそのような予測をしていた1人であり、間違いを認めなければならないが、市場の「いいとこ取り」がここまで「進化」してきたとは思わなかった。
なにしろ、米大統領選の混沌がビットコイン買いの理由として解釈される一方、「ねじれ議会」の継続でハイテク企業への規制の恐れが低下することが株高の根拠として持ち出されたのだ。

(リアルタイムチャート&レートはこちら→仮想通貨リアルタイムチャート:ビットコイン/円 日足)
リスクオンといいながら円が買われ、また、それを無視する形で日経平均は上昇してきた。
……などなど、金融市場は自らのトレンドを正当化するために、ファンダメンタルズの要素を「いい加減」に材料として利用しすぎたかと思われる。
■ユーロなど諸外貨の予想以上の強さがクロス円を下支え
ところで、株高と米ドル安のセットだけは従来のパターンであり、ドルインデックスの大幅反落は説明されやすいかと思う。
米ドル/円の104円の節目割れは規定路線とも言え、テクニカル上の視点から言えば、このまま3月安値まで大したサポートゾーンが存在しないから、3月安値の割り込みが回避できても、目先一段下値トライの可能性が大きい。

(出所:TradingView)
肝心なのはクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の動向だ。最近、米ドル/円とドルインデックスの値動きは連動する傾向が強く、米大統領選開票以来、その関連性は一段と強まったように見える。

(出所:TradingView)
したがって、米ドル全体の下落でユーロなど諸外貨が想定以上に強く、また、持ち直しを果たしているから、これがクロス円の下支えになっているのも事実である。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
一方通行の株高が、選挙の不透明性を無視する形でこのまま一本調子に進むかどうかはわからない。
株高の基調が維持されても、「いいとこ取り」すぎた足元の株高は、だいぶ楽観的な見方を反映しており、また、これからの不確実性をあまりにも無視しているように見えるから、上昇モメンタムの低下などは十分想定される。
換言すれば、米ドル安基調の維持があっても、このまま一本調子にさらに下落していくには、新たな材料が必要であるということ。米大統領選は「無風通過」とはほど遠い状況なので、今の流れがこのまま続くか、過信は禁物である。
ドルインデックスは9月安値を割り込めば、このまま2018年安値88半ばまで下落する可能性があるものの、9月安値を安易に割り込めるかどうかは、目先なお注目ポイントである。

(出所:TradingView)
■欧州のコロナ第二波の本格化がユーロ上昇の足かせに?
相応するように、ユーロ/米ドルの2020年年初来高値更新があれば、2018年高値1.25ドルの大台を打診する余地が拓けるものの、素直に高値更新をできるかどうかは定かではない。

(出所:TradingView)
真冬の到来を控え、英国を含め、欧州のコロナ第二波の本格化も鮮明になってきた。
英仏独のロックダウンがすでに再発動され、感染者や死亡者の上昇が春の第一波を超えているだけに、米ドルの対極としてユーロや英ポンドがそのまま買われていくとは思わない。
状況が比較的安定していると言われる豪州でも、資源大国として多くの品目が中国の輸入禁止措置に遭い、景気回復が打撃を受ける情勢なので、豪ドルの堅調が続くかどうかは疑問視される。
いずれかの外貨が米ドル売りの受け皿として大きく買われなければ、米ドル安も進まないが、米ドルの対極としては、やはりユーロの重要性が一番大きい。
その意味では、これから円が買われても、ドルインデックスがさらに安値更新していくとは限らない。
なぜなら、ユーロ/米ドルの2020年年初来高値更新がなければ、ドルインデックスの年初来安値更新も回避される見通しで、円の上昇余地があったとしても、それがそのまま米ドル全体安につながるとは限らないからだ。
■「クロス円のショートに妙味あり」は健在
もっとも、前回のコラムで指摘したように、クロス円のショートに妙味ありという見方はなお放棄していない。
【参考記事】
●リスクオフの兆しだが「危」は「機」なり。これからクロス円のショートに妙味あり!(2020年10月30日、陳満咲杜)
米大統領選の進展状況自体はシナリオどおりになった。一方、株式の反応や米ドル全体の値動きは見通しが外れたため、主要クロス円は外貨高の影響で、目先総じて堅調に見える。しかし、上値打診するには力不足だとみる。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
前述のように、米ドル/円の104円節目割れを受け、目先、米ドル/円の下振れ余地が拡大し、また、下値トライが一番想定されやすい。ある意味では米ドル/円はこれまで「出遅れ」ていたわけだ。
9月安値で測る場合、3月安値よりドルインデックスは3%(約290pips)も安くなっていた。にもかかわらず、米ドル/円は大きく反落してきたとはいえ、執筆中の現時点で3月安値より2円以上(200pips以上)高い位置にある。このように、米ドル/円は「出遅れ」てきたわけだから、今からその分を埋めてくる可能性を無視できない。

(出所:TradingView)
そうなると、やはりクロス円は米ドル/円に「合わせる」形で頭の重さが確認され、また、米ドル/円に「追随」して反落してくることが想定される。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
主要外貨の上昇が続き、また、クロス円における外貨高・円安の調子が強まれば、米ドル/円の下値打診を制限する形で出遅れた円の上昇を阻止するシナリオもあり得るが、現時点で米ドル/円の下値リスクに照らして考えると、やはり「出遅れた」分、目先、円の一段上昇、また、クロス円の反落がより有力視される。
■歴史に残る米大統領選、最後まで油断禁物!
最後に、今回の米大統領選は歴史に残るものだから、最後まで紆余曲折のある展開が想定される。
ゆえに、目先、株高で安堵を覚える市場参加者が多いと思うが、油断しすぎない方が良いかと思う。
この意味でも、これから一本調子の展開にならない可能性も念頭におき、引き続きクロス円の動向に注目していきたい。市況はいかに。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)