■リスクオフの動きから、株安・円買いに
先週(3月15日~)までは、米国の長期金利の動向に注目が集まっていましたが、英アストロゼネカ製のワクチンが一時、使用停止になったほか、ドイツがロックダウン(=都市封鎖)の期間を延長。フランスでは変異株が猛威を振るっていることなどもあり、リスクオフの動きから「株下落→円買い」という流れになってきています。
(出所:TradingView)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 4時間足)
今後も、欧州の動向は注視しておく必要があります。
■IMMで、投機筋が円売り越しに転換
ところで、今回は、ポジション動向を見ることの重要性について触れてみたいと思います。
私がポジション動向を分析するにあたって活用している、米国のIMM(国際通貨先物市場)における投機筋のポジション動向の推移を見てみると、非常におもしろいことがわかります。直近のデータは、3月16日(火)時点のものです。
【参考コンテンツ】
●シカゴIMM通貨先物ポジションの推移
まず、円に関してですが、投機筋の円に対する米ドルのネット(差し引き)ポジションは、半年以上、ずっとショート(米ドル売り・円買い)で推移していましたが、この1カ月ほどで急速に縮小してきました。
そして、3月16日(火)時点では、ポジションが一気に米ドルロング(買い)へと逆転しているのがわかります。
【参考記事】
●米ドル/円、チャートからは天井の可能性。ただし、IMMや長期金利の動向は注意!(2月5日、今井雅人)
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
■ユーロ・英ポンド・豪ドルの動きは?
次にユーロです。ユーロもここ半年以上、投機筋の米ドルに対するネットポジションが、ロング(ユーロ買い・米ドル売り)の方に傾いていました。それが、この1カ月で、かなり減ってきています。
ただ、まだピークの半分程度は、ユーロロング・米ドルショートのポジションが、残っている状態になっています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
また、英ポンドを見ると、投機筋の米ドルに対する英ポンドのネットポジションは、ロング(英ポンド買い・米ドル売り)のまま、あまり水準が変化していない状態となっています。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
そして、豪ドルを見ると、若干ではありますが、この1カ月で投機筋の米ドルに対する豪ドルのネットポジションが、ロング(豪ドル買い・米ドル売り)に傾いていることがわかります。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
■IMMの動きと整合性のあった米ドル/円・クロス円
これらは、それぞれ、投機筋の米ドルに対するポジションですが、IMMでは、たとえば、円を売ってユーロを買うことで、ユーロ/円のロングポジションを合成する、というような使い方もしているので、そうしたことも考慮に入れて考えると、次のようなことが推測されます。
・ 直近では、投機筋は、米ドル/円、もしくは英ポンド/円、豪ドル/円などのロングポジションを積み上げてきた
・ ユーロに関しては、あまりユーロ/円の買いが積み上がっている感じではなく、むしろ、ユーロ/米ドルのロングポジションの調整売りが出てきた可能性がある
こんな感じでしょうか。
その後の動きを見ますと、円ショート、つまり、米ドル/円・クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)のロングポジションが積み上がった3月16日(火)あたりをピークに、米ドル/円もクロス円も下落をしていることがわかります。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
■クロス円の押し目買いは、少し控えたい
もちろん、相場を動かすには材料が必要なのですが、その材料にどれぐらい市場が反応するかについては、そのときのポジション動向がどうなっているのかが、非常に大きく影響してくることが多い、というのが私の経験則で、やはり、今回もそういう状況になっているのだと思います。
長期的に見れば、豪/ドル円などの買いは有効、との見方は変えていませんが、たとえば、英ポンド/円などのチャートは下に抜けてしまっていますし、クロス円の押し目買いは、少し控えた方がいいかな、と個人的には考えています。
【参考記事】
●豪ドル/円、月足チャートで見た長期目標は90円辺りか。少し気長に考え、買いを維持!(3月18日、今井雅人)
(出所:TradingView)
■ユーロ/米ドル、1.16ドル辺りまでの下落にも期待
なお、私自身は、ユーロ/米ドルのショート(売り)ポジションで、ずっと頑張っています。
欧州の景気回復が、米国よりも遅くなる可能性を考えると、ユーロ/米ドルは1.18ドル台前半を下に抜けてくれば、1.16ドル辺りまでの下落があるのではないかと期待しています。
【参考記事】
●FOMC、日銀会合後の為替はどうなる? ユーロ/米ドルは戻り売りのレンジトレードで!(3月23日、バカラ村)
(出所:TradingView)
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