■日銀は、いつまで日本的不明瞭さを続けるのか…
この数カ月、日銀は「点検」と称し、これまでの政策の見直しを行ってきましたが、3月19日(金)に、「より効果的で持続的な金融緩和について」と題して政策が発表されました。
その中で、これまで±0.20%と考えられていた長期金利の変動幅を±0.25%と明確化しました。

3月19日(金)、日銀はこれまで±0.20%と考えられていた長期金利の変動幅を±0.25%と明確化した。写真は日銀の黒田総裁 (C)Bloomberg/Getty Images
0.20%が0.25%になったので、海外勢は当然、「変動幅が広がった、つまり少し高い金利を容認した」と考えます。しかし、黒田総裁は会見で「変わってない」と言います。何が何だかわからないと、海外のトレーダーから何件か問い合わせがきました。
それはそうでしょう。意味不明です。いつまでこんな日本的不明瞭さを続けるのでしょうか。
問い合わせてきた海外のトレーダーには、「これまでは、あいまいに大体0.20%だったのが、明確に0.25%と上限を決めた」と説明しましたが、これまでどおりの政策を続けたい黒田総裁と、銀行に配慮して、市場の活力を取り戻し、正常化に近づけたい雨宮副総裁の微妙な路線対立があることも、同時に説明しておきました。
長期金利の変動幅が広がったことで「金利上昇を容認?」と、当初は誤解した市場ですが、新たに導入された「連続指値オペ制度」が金利上昇時のみに適用されるということで、「金利低下は容認するが、上昇は認められない」日銀のスタンスが理解され、それが現在の円安にもつながっている模様です。
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■製造業PMIを比較すると、日本経済の弱さが顕著に
最近、円安が進んでいます。テクニカル的に、米ドル/円は大きな三角もち合いを上抜けしてきました。
【参考記事】
●新年度入りに向け、米ドル/円は大幅上昇の可能性! 米長期金利は2%超えもあるか(3月10日、志摩力男)

(出所:IG証券)
テクニカル面での円安は、理解できます。また、同時に、(株価上昇とは裏腹に)ファンダメンタルズ面においても、日本経済の弱さが顕著になってきました。
それは、各国の製造業PMI(購買担当者景気指数)を比較するとわかります。

(出所:TRADINGECONOMICS)

(出所:TRADINGECONOMICS)

(出所:TRADINGECONOMICS)
米国は60近い状況ですし、ドイツは66という過去最高レベルですが、日本は50をやっと越えたところです。日本の製造業PMIが立ち遅れているのは、競争力低下が顕在化しているから、なのかもしれません。
■ここ数年、外貨準備に占める円のシェアが高まっている
意外と知られていないんですけど…各国の外貨準備に占める日本円のシェアが、この数年高まっています。

(出所:IMF)
2015年の3.75%から、最近では6%近くまで上昇しています。世界全体の外貨準備の総額は、約12.25兆ドルです。1%の変化で1225億ドルになります。
2015年と比較して、2020年第3四半期は2.17%増加しているということは、大体2600億ドル(約29兆円)ほど円の準備が増えていることになります。それだけ、他国が日本円を買ったということです。
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■外貨準備による円買いがないなら、米ドル/円に上昇余地
では、背景には何があるのでしょうか?
米ドルのシェアは、2015年と比較して5%ほど減っています。トランプ政権になり、米国への信頼度を低下させた各国は、米ドル準備を減らしました。その受け皿のひとつが日本だったのでしょう。また、それだけ日本円が割安だと考えられたのだと思います。
これまで、米ドル/円の頭が抑えられてきたのは、こうした各国の外貨準備の日本円へのシフトがあることがわかります。

(出所:IG証券)
これ以上、円のリザーブ(準備)が増えることはあるのでしょうか? 6%というのは、ひとつの限界だと思います。また、バイデン政権に交代したことで、各国が米国への信頼を取り戻す可能性はあります。
外貨準備による円買いが、これ以上出ないのであれば、米ドル/円には上昇余地が出てきそうです。

(出所:IG証券)
各国が円の外貨準備を増やした理由のひとつには、いつの日か日本が復活し、円が上昇するという思いもあったのかもしれませんが、今、日本は、その期待を裏切ろうとしているのかもしれません。
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